2023マレーシアFAカップ1回戦結果とハイライト映像(1)-パハンとペナンが2回戦へ進出も物議を醸し出しそうな場面も

2023マレーシアFAカップの1回戦が行われ、組み合わせ抽選の結果、不運にも1回戦からの出場となったスーパーリーグの4チームが対戦し、スリ・パハンとペナンが2回戦に進出しています。
 マレーシアFAカップは日本の天皇杯に当たる大会で、1部スーパーリーグ以外のクラブも参加する大会ですが、コロナ前は5部に当たるM5リーグのクラブも出場していましたが、コロナ後は規模が大幅に縮小され、今年はスーパーリーグの14チームと3部に当たるM3リーグ14チームから選ばれた6チームの計20チームが出場しています。
 今月25日には1回戦の残り2試合が行われ、2回戦に当たるベスト16が決定します。

2023年3月8日@ペラスタジアム(ペラ州イポー)
観衆:4,219人
ペラFC 1-2 スリ・パハンFC
⚽️ペラ:クリスチャン・オビオゾール(34分)
⚽️パハン:マリク・アリフ(82分)、ステファノ・ブルンド(90+4分PK)
🟨ペラ:ハフィザル・モハマド、ファディル・イドリス、ハジック・プアド
🟨パハン:エゼキエル・アグエロ
🟥ペラ:ファディル・イドリス(🟨x2)
MOM:バキウディン・シャムスディン(スリ・パハンFC)

 スーパーリーグクラブ同士の対戦となったこの試合は、リーグ戦ではここまで0勝2分1敗で11位のペラFCが、1勝2分0敗で5位のスリ・パハンFCをホームに迎えました。試合は開始直後からホームのペラが積極的にボールを前に運び、それが功を奏しました。ファフィジ・イクマルがドリブルでゴール前に持ち込んだボールを受けたクリスチャン・オビオゾールがシュート!これが決まって34分にペラが先制し、前半はこのまま1ー0で終了しました。
 後半に入っても互角の戦いが続きましたが、67分にこの試合2枚目のイエローをもらったペラのファディル・イドリスが退場となってしまいました。リーグ戦も含めここまでの4試合で3枚目となる退場者を出したペラでしたが、GKブライアン・シーを中心にパハンの猛攻に耐える一方で、守備一辺倒にならずに追加点を狙いました。
 しかし81分にコーナーキックからマリク・アリフが同点ゴールを決めると、終了間際の90+4分にはペラのナスロル・アムリがペナルティエリア内でバキウディン・シャムスディンにファウルを犯しPKを与えてしまいました。これをステファノ・ブルンドが決めてパハンが逆転勝利で2回戦進出を決めています。

*****

 この試合はハイライト映像で見たのですが、いくつか疑問が残る場面がありました。ハイライト映像で言うと7分40秒、試合時間でいうと87分のペラゴール前のシーンで、パハンのマリク・アリフは明らかにボールに遅れてスライディングタックルしているのですが、試合の記録を見るとマリク選手にはイエローが出ていません。
 さらに疑惑の場面は決勝点となったPKの場面です。ハイライト映像では、上記のプレーの映像の後、いきなり決勝点となったPKの場面になっており、このPKを与えることになったペラのナスロル・アムリがペナルティエリア内でバキウディン・シャムスディンにファウルを犯した場面が映っていません。これまでスーパーリーグを統括するマレーシアンフットボールリーグMFLのハイライト映像は数多く見てきましたが、PKを与えた場面がカットされているハイライト映像を見た記憶が私にはありません。さらにSNS上では、このPKを与えた場面についてファウルではないというコメントも見られ、それをサポーターが自らの目で確かめることもできず、これは主審による「誤審」を隠す目的で映像がカットされているのでは、という疑惑も膨らみます。
 審判の「質」は毎シーズン話題になるものの、MFLとマレーシアサッカー協会はこの問題に真摯に向き合うことが最善の策だと思うのですが、それを隠すような姿勢は疑惑を増幅させる以外の何者でもありません。

2023年3月8日@ダルル・アマンスタジアム(クダ州アロー・スター)
観衆:13,768人
クダ・ダルル・アマンFC 2-2 ペナンFC(PK 3-4)
⚽️クダ:マヌエル・オット(9分、90分)
⚽️ペナン:ジオヴァネ・ゴメス(22分)、スーニー・サアド(68分)
🟨クダ:ウィリアン・リラ、アミールベク・ジュラバエフ、リー・タック、マヌエル・オット
🟨ペナン:なし
MOM:シャフィク・アフィフィ(ペナンFC)

 1回戦のもう一試合もスーパーリーグで2勝0分1敗で4位のクダ・ダルル・アマンFCが0勝2分1敗で9位のペナンFCを迎えての対戦でしたが、こちらはPK戦にまでもつれ込んでいます。
 今季開幕からマンズール・アズウィラ監督がAFCプロライセンス取得のためのコース受講中で不在ということで、ペナンはこの日もチョン・イーファット監督代行が指揮を取りました。
 試合は、ナフジ・ザイン監督とともにトレンガヌから移籍したキャプテンのマヌエル・オットのゴールでクダが早々と先制しましたが、ペナンもジオヴァネ・ゴメスのゴールで追いつき、前半は1ー1で折り返しました。
 後半に入ると67分にはクダDFラインの裏に抜け出したスーニー・サアドの放ったシュートが決まり、再びペナンがリード奪いますが、90分にはペナンの中途半端なクリアミスを奪ったマヌエル・オットのシュートがこの試合2点目のゴールとなり、土壇場でクダが同点に追いつきます。
 そして延長を経ても決着がつかなかったこの試合はPK戦となりましたが、ここまで好セーブを連発していたペナンGKシャフィク・ハフィフィが、クダの3人目リー・タックと5人目ボヤン・シーゲルのPKを止めてペナンが4-3でPK戦を制し チームの2回戦進出に貢献しています。

*****

 実はこちらも色々と物議を醸しそうなシーンがある試合でした。この試合結果を報じた新聞記事では、マヌエル・オットの同点ゴールの前の82分には、クダがペナルティエリアの外で得たフリーキックを得、これをマヌエル・イダルゴが直接、ゴールするもオフサイドの判定で認められなかったようですが、その場面はMFLのハイライト映像からカットされており、サポーターが見ることはできなくなっています。また、PK戦の場面では、ペナンの最初のキッカーとなったミャンマー出身のDFゾー・ミン・トゥンがPKを決めた後に3本の指を立てる仕草を見せましたが、こちらも物議を醸し出しそうです。(ハイライト映像では10分10秒付近)
 一昨年の5月のFIFAワールドカップアジア2次予選の日本対ミャンマー戦で、ミャンマー代表GKのピエ・リヤン・アウンが国歌斉唱の際に同じ仕草をして報じられたことを覚えているかもしれませんが、この3本指はミャンマー国軍によるクーデターの結果成立した政府への抗議の意思表示です。ミャンマーではクーデター後も1000人を超える命が国軍に奪われているという報道もあります。しかし、試合中にこの仕草をしたことで、ゾー・ミン・トゥン選手には「侮辱的な言動や仕草」あるいは「非スポーツマン的行為」により懲戒処分が課せられる可能性が出ています。現在はスランゴールでプレーするやはりミャンマー出身のハイン・テット・アウンが、2021年にスランゴールのセカンドチームでプレーしていた際、ゴールを決めた後にやはりこの三本指の仕草を見せたことがあり、その際には厳重注意に加えて1試合の出場停止処分を受けました。こういった前例もあり、ここまでリーグ戦3試合とこのFAカップの1試合全てに先発フル出場しているゾー・ミン・トゥン選手にも同様の処分が科される可能性があり、ペナンにとっては主力選手を失うという痛手となりそうです。

3月10日のニュース
10月開催のムルデカ大会にパレスチナ・レバノン・インドの出場が決定
マレーシア政府が各州のスタジアムのゼオンゾイシア芝への張り替え費用を負担
U20女子アジアカップ予選出場メンバーが発表に

10月開催のムルデカ大会にパレスチナ・レバノン・インドの出場が決定

マラヤ連邦(当時)の英国からの独立を記念して1957年に第1回が開催されたムルデカ大会(ムルデカとはマレーシア語で「独立」)は、アジア最古の招待大会の一つですが、近年はマレーシア代表の弱体化などもあり久しく開催されていませんでした。それが今年10年ぶりに開催されることが決定し、パレスチナ、レバノン、インドの3カ国の出場が決定したと英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。

今年10月に予定されている第41回大会となるムルデカ大会では、直近のFIFAランキング145位のマレーシアと対戦する同93位のパレスチナと同100位のレバノンは、いずれも大会初参加ですが、同109位のインドはこれまで1959年大会と1964年大会では準優勝しており、最近では2001年大会に出場しています。

10年間も開催されていなかったムルデカ大会が復活した理由は、2007年の自国開催を除くと43年ぶりに予選を突破してマレーシアがAFC選手権アジアカップ出場を決めたことにあります。キム・パンゴン代表監督は、来年1月に開催されるアジアカップ前に中東のチームとの対戦を希望しているということで、アジアカップへの準備を目的に復活したのが今回のムルデカ大会というわけです。

マレーシア政府が各州のスタジアムのゼオンゾイシア芝への張り替え費用を負担

マレーシア政府の青年スポーツ省は、マレーシア各州の主要スタジアムのピッチをゼオンゾイシア芝へ張り替えるための予算配分の用意があることを発表しています。

ハンナ・ヨー青年スポーツ相は、ピッチ張り替えを希望する州の青年スポーツ委員会に対して、管理するスタジアムの中から芝張り替えを希望するスタジアムを1つを選び、必要であればピッチの排水設備を改善した上で青年スポーツ省に対して芝張り替えの申請を行うことを求め、その申請を受けた後に予算を配分するとしています。

ヨー青年スポーツ相は、ピッチ張り替え後の維持管理費用はは各州政府が負うものとし、今回のピッチ張り替えはその維持管理が条件となるとも説明し、あくまでもその条件を満たす州にのみ予算を配分するとも話し、あくまでも政府が張替えを強要するものではないとしています。

なお今回の張り替えで使われるゼオンゾイシア芝は、。ゾイシア、ゼオンといずれも高麗芝系品種の芝を掛け合わせて作られたゾイシアゼオン芝は、維持管理に必要な水量が少ない、暖かい土地に育つ芝で、ジョホール・ダルル・タジムのホーム、スルタン・イブラヒムスタジアムで既に使用されている他、現在、まさに張り替えが行われているブキ・ジャリル国立競技場で使用されることになっています。

*****

この青年スポーツ省のピッチ張り替えについては、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)のオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下がクラブ公式Facebookでコメントしています。前述したようにJDTはスルタン・イブラヒムスタジアムでこのゼオンゾイシア芝を使っていますが、その張り替え費用は100万マレーシアリンギ(およそ3000万円)前後、年間の維持管理費用は24万マレーシアリンギ(およそ720万円)だとしています。さらに張り替え費用が政府負担、つまり費用がかからないにもかかわらず、さらにリーグを運営するMFLから放映権料などの数百万マレーシアリンギの分配金があるにもかかわらず、24万マレーシアリンギの維持管理費用の出費を嫌ってピッチ張り替えを行う予定がないスーパーリーグのクラブがあるとし、そういった決断を下すサッカークラブのトップは、マレーシアサッカーに対する愛情からサッカークラブに関わっているのではなく、個人の利益のためにクラブに関わっている人間だと非難しています。

U20女子アジアカップ予選出場メンバーが発表に

3月10日からカンボジアのプノンペンで開催されるAFC U20女子アジアカップ予選に出場するU20女子代表のメンバーがマレーシアサッカー協会FAM公式サイトで発表されています。キャメロン・ン監督率いるU20女子代表は先月2月20日から26名を招集した第一次候補合宿を行っていましたが、そこから最終メンバーとなる23名が選ばれています。26名の中から23名を選ぶことが難しかったと話したン監督は、最終メンバーの選考については複数のポジションを守れる選手を優先したと説明しています。なお、最終メンバーはこちらです。

今回の予選でG組のマレーシアは、開催国のカンボジアの他、ミャンマーと同組になっています。(なおこのG組には当初はパキスタンも入っていましたが、出場を辞退しています。)今回の予選でマレーシアは今日3月10日にカンボジアと、また3月12日にミャンマーとの試合が予定されており、このG組の1位となるとが他の7組の1位とともに、今年6月の2次予選に進出します。また2次予選では1次予選突破の8チーム中、上位4チームが、開催国ウズベキスタン、前回2019年大会王者の日本、同準優勝の韓国、同3位の北朝鮮の4チームに加わり、本戦を戦います。