「未払い給料はたったの2ヶ月半」-サラワクU会長の発言が波紋
昨日のこのブログでも取り上げたMリーグ2部プレミアリーグのサラワク・ユナイテッドFCで起きている給料の未払い問題について、クラブを運営するサラワク州サッカー協会のポサ・マジャイス会長の発言が波紋を呼んでいます。
「未払い給料はたった2ヶ月半である。(Mリーグには)未払い給料がもっと長期に渡っているクラブがあるにも関わらず、(たった2ヶ月半で)皆が大騒ぎしている。」
「未払い給料問題で騒ぎたててサラワク・ユナイテッドFCの評判を貶めようとしているのであれば、それは卑劣な方法だ。」
クラブにとっては好ましくない理由で注目を集めていることに対して不服なポサ・マジャイス会長はこのような発言をしていますが、これをマレーシア語紙ブリタハリアンが取り上げるとソーシャルメディア上ではこの発言を非難するコメントで溢れ返りました。
「旧態依然のマレーシアのサッカークラブオーナーの発言だ。」「自分が実際に2ヶ月半の間給料なしで生活してみろ。」といったものから、「こんな人物が理事を務めることを許しているFAM(マレーシアサッカー協会)や、この人物が会長であることを認めている(Mリーグを運営する)MFLも同じような人間が運営しているんだろう。」といったものまで、様々な非難がポサ・マジャイス会長だけでなく、FAMやMFLにまで向けられる事態になっています。
今年5月に同様の数ヶ月分の未払い給料問題が明らかになった際には「未払いではなく遅配だ」と強気な主張をしたポサ・マジャイス会長は、今回は未払いであることを認めた上で、今月末のマレーシアカップグループステージ再開までには未払い分を完済すると述べています。
しかしその一方で、2ヶ月半分の未払い給料が払われなければFIFAに訴え出るとしていた外国籍選手に関しては、既に未払い分の内の1ヶ月分を支払ったことを明らかにした上で、残りの1ヶ月半分の未払いではFIFAに訴え出ることはしないだろうと述べるなど、強気な姿勢は変わっていないようです。
「無観客試合開催により入場料収入がなくなるなど、新型コロナがクラブ運営に与えている影響が大きいことに対する選手の理解を求めたい。」と述べながらも「昔から自分のことを知っている選手はこの状況を理解してくれている。」と暗に外国籍選手を避難するような発言も忘れないなど、ポサ・マジャイス会長がどこまで強気な発言を続けられるのかが見ものです。
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10月29日に再開するマレーシアカップグループステージではここまでMリーグ1部スーパーリーグのペナンFCとスリ・パハンFCを連続で撃破し、グループ首位に立つサプライズを見せているサラワク・ユナイテッドFCですが、この給料未払い問題が再開後の選手のパフォーマンスに影響を及ぼさないことを祈りたいです。
1部と2部の17クラブに来季のクラブライセンス交付も2クラブには条件付き
Mリーグを運営するMFLは、クラブライセンス交付に関する審査を担当する第一審機関FIBが1部スーパーリーグと2部プレミアリーグの17クラブに対して、来季2022年シーズンのMリーグに出場するための国内クラブライセンスを交付したことを発表しています。
FIBが10月20日から21日にかけて行なった最終審査を通過し、国内クラブライセンスが交付されたのは今季Mリーグ1部スーパーリーグでプレーしたJDT、クダ・ダルル・アマンFC、ペナンFC、トレンガヌFC、スランゴールFC、KLシティFC、PJシティFC、マラッカ・ユナイテッドFC、サバFC、スリ・パハンFC、ペラFC、UITM FCの12クラブ全てと2部プレミアリーグでプレーしたヌグリスンビランFC、クチンシティFC、ケランタンFC、ケランタン・ユナイテッドFCとPDRM FCの5クラブです。
ただしマラッカ・ユナイテッドFCについては、9月30日とされていた従業員積立基金EPF(国民年金)と国内歳入庁IRB(国税庁)への納付期限を守らなかったことから1万5000リンギ(およそ41万円)の罰金と戒告処分が課され、11月20日までに罰金の支払いおよびEPFとIRBへの納付証明書類の提出することが来季の国内クラブライセンス交付の条件とされているということです。また申請条件を満たさなかったマラッカ・ユナイテッドFCと申請そのものを行わなかったスリ・パハンFCを除く今季Mリーグ1部の10クラブにはアジアサッカー連盟AFCクラブライセンスも合わせて交付されています。
またここ数日、給料未払い問題が報道されている今季2部プレミアリーグの準優勝チームでもあるサラワク・ユナイテッドFCについては国内歳入庁IRBへの見納付分支払いとその納付証明書類提出を11月20日までにFIBに提出することを求めた他、来季2022年シーズンを全うするのに十分な運営資金があることを証明するための追加書類の提出も求め、これらの書類が用意できない場合には下部リーグへの降格やクラブライセンスを交付取り止めなどの処分の可能性もあるとしています。
また来季2022年シーズンに向けての事前対策として、MFLは来季のクラブライセンスが交付されたMリーグ各クラブに対して今年12月15日の時点で給料の未払いや従業員積立基金や内国歳入庁へ未納がないことを証明する宣誓書の提出を義務付けるとする一方で、宣誓書が提出されながら今季終了時点で給料未払いなどが発覚したクラブにはトランスファーウィンドウ期間中の新たな選手獲得禁止処分を科すとしています。
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サラワク・ユナイテッドFCの2度に渡る給料未払い問題や、主力が大量退団したペラFCの給料未払い問題、さらに今季開幕時にはクダ・ダルル・アマンFCで、シーズン半ばにはサバFCでそれぞれ給料未払い問題が発覚し、また開幕前には昨季の給料未払いが解決していなかったマラッカ・ユナイテッドFCが勝点剥奪処分を受けるなど、「厳格な審査をパス」してクラブライセンスの交付を受けたチームでこれだけ給料未払い問題が起こると、クラブだけでなくクラブを審査するMFLやFIBに問題があるのではないかという気がします。
今年の東京パラリンピックではマレーシア人の砲丸投げ選手が「遅刻」を理由に金メダル獲得の機会を逃したことは国内でも大きく報道されましたが、プロサッカークラブとして関係者全ての生活に関わるクラブライセンス交付でも書類の提出期限を守れないクラブがあるのを見ると、金メダルを逃したあの騒動も所詮は他人事と思ってんだろうなぁ。
サラワク・ユナイテッドの給料未払い問題が長引けばクチンシティFCが1部昇格の機会も
サラワクとサバのサッカーを中心に報じるサイトのサラワククロックスは、サラワク・ユナイテッドFCが給料未払い問題の解決を長引かせた場合、今季Mリーグ2部プレミアリーグで準優勝によって獲得した来季の1部昇格権が取り消される可能性について言及しています。
上の記事でも取り上げたように、Mリーグのクラブライセンスを交付する第一審機関FIBは、来季2022年シーズン用クラブライセンス交付についての審査の最終結果を発表し、今季Mリーグでプレーした全てのクラブに来季2022年シーズンの国内クラブライセンスが交付されました。
この審査にはクラブの経営状況などを示す書類の提出も義務付けられており、サラワク・ユナイテッドFCは条件付きでの交付となっている一方で、MFLはさらなる書類の提出を求めており、これにより給料未払い問題の解決に手間取った場合、あるいはMFLが提出内容に問題があると判断した場合には、来季のクラブライセンスが交付されず、Mリーグではサラワク・ユナイテッドFCがプレーできないことが考えられるとサラワククロックスは指摘し、サラワク・ユナイテッドFCが獲得した1部昇格権が今季の2部プレミアリーグで5位だったクチンシティFCに与えられる可能性があるとしています。
プレミアリーグでは5位だったクチンシティFCですが、3位のトレンガヌFC II、4位のJDT IIがいずれも1部スーパーリーグでプレーするトレンガヌFCとJDTのセカンドチームであり、Mリーグの規定ではトップチームとセカンドチームが同じリーグに在籍することはできないため、サラワク・ユナイテッドFCに次ぐ昇格権の順位は5位のクチンシティFCにあります。このためMリーグを運営するMFLはサラワク・ユナイテッドFCが万が一、クラブライセンスの交付を受けられなかった場合には1部スーパーリーグの12チーム編成を維持するために、クチンシティFCを昇格させる可能性があるとサラワククロックスは説明しています。