2021年Mリーグ1部スーパーリーグのクラブ紹介とボラセパマレーシアJP的順位予想 その3

JDT-クダ・ダルル・アマン戦で開幕した今季のMリーグ。昨日の1部スーパーリーグ開幕戦に続き、2部も本日3月6日に開幕します。勝手な今季の1部順位予想は今回が3回目で9位から12位までです。なお1位から4位まではこちら、5位から8位まではこちらです。

ボラセパマレーシアJP的順位予想 9位UITM FC

2020年シーズン成績:リーグ7位 – 5勝2分4敗 得点17失点15

昨季1部スーパーリーグの最大の話題の一つがUITM FCの躍進でした。2019年シーズンは2部プレミアリーグ5位ながら1部のPKNS FCがスランゴールFCと合併消滅し、1部のクラブ数が11となったことから、言わば「棚ぼた」で1部に昇格しました。Mリーグ1部のクラブとしては初の大学が運営するクラブとなりましたが、それでも開幕前は文字通り数合わせ扱いでした。

3月半ばに新型コロナウィルスの影響でリーグが中断するまでは1勝1分2敗と周囲の予想通りの成績でしたが、元マレーシアU23代表監督でもあるフランク・ベルンハルト監督は、大学生と外国籍選手と少ないプロ選手とをうまく融合させ、リーグ再開後は*4勝1分2敗と息を吹き返しました。一時は並み居るプロクラブを押さえてリーグ4位まで上り詰めましたが、さらに上位進出が見えた残り2節を1分1敗とし7位でシーズンを終えました。

しかし今季は主将となったDFヴィクター・ニレノルド(フランス)を除く外国籍選手4名が退団、その中にはチームの司令塔ラビ・アタヤ(レバノン-クダ・ダルル・アマンに移籍)もおり、昨季のような戦いぶりを期待するのは難しそうです。今季は同じレバノン出身のFWアブー・バクル・アル=ミル(レバノン1部ブルジュFCより移籍)、ガーナ出身のFWナナ・ポク(カタール2部アル・マーキヤSCより移籍)、昨季はパハンでプレーした守備的MFアダム・リード(フィリピン)、そしてGKドミニク・ピチャック(クロアチア1部NKメジュムリェより移籍)が加入していますが、マレーシア人選手では目立った補強はありません。

<ボラセパマレーシア的注目選手>
ドミニク・ピチャ
ストライカー、ミッドフィルダー、センターバックといったところが外国籍選手の定番ポジションですが、何故か今季はMリーグ1部で2クラブが外国籍GKを獲得しています。クアラルンプール・ユナイテッドのケヴィン・レイ・メンドーザ(フィリピン)とUITM FCのドミニク・ピチャックです。195cmの長身はMリーグでは屈指の長身ですが、貴重な外国籍選手枠をゴールキーパーに割くだけの価値があるかどうかに注目してみたいです。

ディルガ・スルディ
ディルガ選手はこのブログでも何度か取り上げましたが、大半のMリーグの選手とは違いクラブのアカデミーを経ずにプロ入りした異色の選手です。昨季はPDRM FCでプレーし、クラブは2部降格となったものの、ディルガ選手はUITM FCと契約し1部残留を果たしています。若い選手を育成する手腕が評価されるベルンハルト監督のもの、スーパーサブからレギュラーを目指して欲しいです。
*UITM FCの昨季リーグ最終戦となったサバFCとの試合はその後のマレーシアカップ開催までの日程が詰まっており、ボルネオ島にあるサバ州からマレー半島へ移動するサバFCが、当時、投稿者に義務付けられていた14日間の検査隔離期間を試合前に確保できないことから、UITM FCの不戦勝となっています。

ボラセパマレーシアJP的順位予想 10位マラッカ・ユナイテッドFC

2020年シーズン成績:リーグ9位 – 4勝2分5敗 得点13失点16

昨季は給料未払いで勝点3剥奪処分を受けたマラッカ・ユナイテッド。今季開幕前にも昨季在籍した外国籍選手から未払い給料が支払われていないことをFIFAに提訴されるなどバタバタの状態で開幕を迎えました。運営の不手際によるピッチ外の問題で選手のやる気が削がれながら、昨季の成績不振を指摘されたザイナル・アビディン・ハサン監督はたまったものではないでしょうが、今季も同様の問題が起こる可能性があり、その辺りも込みで順位を予想しました。

戦力的には元代表の主将でもあったMFサフィク・ラヒムがJDTに移籍したものの、マレーシア人選手では主力選手レベルの補強はありません。外国籍選手については、昨季の新型コロナウィルスによるリーグ中断期間に給料未払いを理由にナタポン・ワイルド(タイ)が退団し、リーグ再開後は外国籍選手4名で戦ったことを考えると、開幕から5名の枠全てが埋まっているのは良い点と言えるでしょう。昨季在籍したMFロメル・モラレス(クアラルンプール・ユナイテッドへ移籍)、チーム得点王のFWウチェ・アグバ(2部サラワク・ユナイテッドへ移籍)が退団し、FWソニー・ノルデ(ハイチ)とDFチャン・ソグォン(韓国)は残留、そしてこの2名にFWアレックス・ドス・サントス・ゴンサウヴェス(インドネシア1部プルシカボ1973より移籍)、FWステファン・ニコリッチ (クロアチア1部FKスティエスカ・ニクシッチより移籍)、フィリピン代表MFマヌエル・オット(フィリピン1部ユナイテッドシティFCより移籍)が加わり攻撃陣に厚みがましています。

マレーシア人選手では代表復帰を目指すGKカイルル・ファミ・チェ・マット、DFワン・アミルル・アフィク、MFサイフル・リズアン、シャミ・ヤハヤらが主力となる一方、控えの選手との実力差が大きく、選手層の薄さが不安要素です。

<ボラセパマレーシアJP的的注目選手
カイルル・ファミ・チェ・マット
オフシーズン中は代表復帰を目指す近道としてのJDT移籍が噂されたカイルル選手でしたが、マラッカ・ユナイテッドに残留しています。GKとしては小兵ですが、2010年の東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ優勝時の正GKだったカイルル選手は代表No. 1GKのファリザル・マーリアスよりも若く、まだまだ老け込む歳ではないので4月の代表合宿に向けて開幕から活躍して欲しいです。

ボラセパマレーシアJP的順位予想 11位サバFC

2020年シーズン成績:リーグ10位 – 2勝3分6敗 得点12失点24

上でも述べたように最終戦のUITM FC戦が不戦敗となり不完全燃焼で昨季を終えたサバFC。民営化となりサバFCとなるも昨季終了後に成績不振で契約解除となったクルニアワン・ドゥイ・ユリアント監督と再び契約するなど迷走しました。

クラブレベルでの監督経験がなかったクルニアワン監督にとっては1年での解雇は納得がいかなかったはずですが、再びチャンスを得たインドネシアのレジェンドは意気込んで今季に臨むはずでした。しかもかつてサバでプレーし得点王も獲得しているレジェンド、スコット・オルレンショーがテクニカルディレクターに就任し、クラブとして環境は整ったかに見えましたが、ここで再び問題が発生します。サバはDFパク・タエスーを残し、4名の外国籍選手を入れ替えましたが、その4名がリーグ開幕に間に合わない事態が発生しています。

クルニアワン監督自身が獲得した高速ウィングのサディル・ラムダニ(インドネシア1部バヤンガラFCより移籍)、ガボン出身MFレヴィ・マディンダ(トルコ2部ギレンスポルより移籍)、リベリア出身のFWサム・ジョンソン(アメリカ1部レアル・ソルトレイクより移籍)、マケドニア出身のDFリスト・ミトレヴィスキ(アルメニア1部アラシュケルトFCより移籍)のうち3名は既に検疫隔離期間中である一方、残る1人はいまだに入国ができていないということです。どの3選手が検疫隔離期間中かは明らかにされていませんが、いずれにしても今季のチーム開幕戦には間に合わないということです。

<ボラセパマレーシア的注目選手>
ボビー・ゴンザレス
37歳のゴンザレス選手は昨季はペナンFCでプレーし、8年ぶりに地元のクラブと契約しています。2013年シーズンには2部プレミアリーグながら22試合で21ゴールを挙げるなどリーグ屈指のストライカーでしたが、近年は出場機会も減り、昨季は先発したのは4試合で決めたゴール数は1ですが、地元に帰り最後に一花を咲かせたいというところでしょうか。


アムリ・ヤハヤ
また40歳になるアムリ・ヤハヤは2部サラワク・ユナイテッドからの移籍です。スランゴールのレジェンドプレーヤーでもあるアムリ選手は、2019年シーズン終了後に当時監督だったB・サティアナタン監督との確執からサラワク・ユナイテッドへ移籍しましたが、今季からそのサティアナタン氏がサラワク・ユナイテッドのテクニカルディレクターに就任したことで、今度はサバFCへ移籍しました。昨季はチームの主将としてリーグ全11試合に先発し10試合はフル出場、2ゴールを決めるなど年齢を感じさせない活躍をしたアムリ選手は2年ぶりの1部スーパーリーグでも同じような活躍ができるかが見ものです。

ボラセパマレーシアJP的順位予想 12位PJシティFC

2020年シーズン成績:リーグ7位 – 3勝5分3敗 得点17失点16

MリーグではJDTとともに州サッカー協会から運営資金などの支援を受けていない民営化クラブですが、その分運営も厳しいのか、今季の1部スーパーリーグで唯一、外国籍選手がいないクラブです。また、前身はMIFAマレーシアインド系サッカー協会ということもあり、チームにインド系マレーシア人選手が多いことも特徴です。

今季から監督となったこちらもインド系マレーシア人のP・マニアム監督は2017年にはスランゴールでも監督と務めたこともある他、近年はマレーシアサッカー協会FAMで年代別代表の監督となり、直近ではU16代表監督なども務めました。

外国籍選手がいない中、FWカイリル・ムヒミーン(スランゴールFCから移籍)、DF S・スブラマニアム(クアラルンプール・ユナイテッドから移籍)のベテラン勢、主将となるK・グルサミーやK・プラバカラン(いずれもスランゴールFCから移籍)などを補強したものの、他のクラブと比べると戦力差は大きく、今季は苦しい戦いを強いられそうです。

<ボラセパマレーシア的注目選手>
ダレン・ロック
トレンガヌFCから移籍したFWダレン・ロックは、イギリス生まれながら父親がマレーシア人であることから、マレーシア人選手として登録されています。昨季はトレンガヌFCでの出番は無く、セカンドチームのトレンガヌFC IIでもやはり出場機会が限られていましたが、外国籍選手がいないPJシティでは主力として出場機会も増えそうです。かつてはJDTで将来を期待されたロック選手が活躍できれば、チームのニックネームであるフェニックス「不死鳥」のように今季1部残留が見えてきます。

2021年Mリーグ1部スーパーリーグのクラブ紹介とボラセパマレーシアJP的順位予想 その2

内容は2-0のスコア以上の圧勝でJDTがクダ・ダルル・アマンを一蹴して開幕した今季のMリーグ。勝手に今季の順位予想をしてみました。今回は5位から8位までの予想です。なお1位から4位まではこちらです。

ボラセパマレーシアJP的順位予想 5位トレンガヌFC

2020年シーズン成績:リーグ3位 – 6勝1分4敗 得点24 失点14

監督3年目を迎えるナフジ・ザイン監督は、シーズン途中で就任した2019年の7位から昨季は3位とチームの順位を上げています。となると今季はさらに上位も、となるかと言えばそこはいくつか不安要素があります。その一つは外国籍選手5名全員の顔ぶれが変わったこと。昨季は同じ1部のサバでプレーしたMFペトラス・シテムビ以外は、Mリーグ1年目となる4名が行動制限令MCOで短縮されたプレシーズンの間にマレーシア人選手とうまく融合できているかどうかがスタートダッシュの鍵となります。

マレーシア人選手の補強はファイザル・ハリム(1部スリ・パハンより移籍)、ニック・アキフ・シャヒラン(2部ケランタンより移籍)、アスナン・アフマド(2部UKMより移籍)など、経将来性のある選手に加え経験のある選手などバランス良く獲得しており、外国籍選手の出来が、今季の成績に直結しそうです。

リーグで経験を積めば、来季あるいは2年後辺りにプレークしそうなニック・アキフらマレーシア人選手がいますが、チームの方針として選手の顔ぶれを若手に切り替えつつある今季は昨季ほどの成績は望めないのではという予想です。

<ボラセパマレーシアJP的注目選手>
デヴィッド・ダ・シルヴァ
Kリーグ浦項スティーラーズでもプレーしたブラジル出身のダ・シルヴァは、昨季11試合で9ゴールを挙げたドミニク・ダ・シルヴァ(KLユナイテッドへ移籍)を解雇してまで獲得したストライカーです。浦項から移籍したインドネシア1部プルシブバンドンでは16試合で15ゴールを挙げています。今季加入した攻撃的MFマカン・コナテも同じプルシブバンドンでプレーしており、このホットラインが機能すれば上位進出があるかもしれません。

ボラセパマレーシアJP的順位予想 6位ペラFC

2020年シーズン成績:リーグ4位 – 5勝3分3敗 得点21失点19

2017年にメフメト・ドゥラコヴィッチ監督が就任以来、5位、2位、5位、4位と安定した成績を残してきたペラFCは、エースのシャーレル・フィクリがスランゴールへ移籍したものの、昨季からプレーするブラジルトリオが残留し、その内の1人のギリェルメ・デ・パウラが帰化選手となりマレーシア人選手として登録されることから、外国籍選手枠も増えるなど、戦力ダウンを補強とチーム力で補えるだろうと考え、当初は今季の順位予想では3位にしていました。しかしこのブログでも取り上げた通り開幕直前にドゥラコヴィッチ監督が突如契約解除を申し出たことで、監督を中心としたチーム力に疑問符がついたことから予想順位を3つ下げてみました。

<ボラセパマレーシア的注目選手>
ギリェルメ・デ・パウラ
帰化選手となり、6月に再開されるW杯アジア二次予選では代表への招集も可能となったデ・パウラ選手。マレーシア人選手にはない高さを持つFWとして魅力はあるものの、タン・チェンホー監督が求めるストライカーの役割をリーグで発揮することが求められます。

ハフィズル・ハキム
膝の手術からの回復が遅れ、昨季は前半を棒に振ったハフィズル・ハキムは、背番号1を失ったもののプレシーズンマッチでは先発もしており、正GK復帰が近そうです。年齢的にも経験的にも代表GKを狙える位置にいる選手で、こちらも健在ぶりをタン監督に見せる必要があります。

ボラセパマレーシアJP的順位予想 7位スリ・パハンFC

2020年シーズン成績:リーグ8位 – 4勝2分5敗 得点18失点18

新型コロナウィルスによる中断期間中に主力選手のモハマドゥ・スマレが給料未払いを理由に突然チームを離れるなどのトラブルもあり、年間を通して良いところがなかった昨季のスリ・パハンはリーグ9位となった2016年以来の低い成績に終わりました。

監督のドラー・サレーがチームマネージャーに就任し、新監督には主将としてW杯22度出場しているアメリカ出身のトーマス・ドゥーリー氏を招聘しました。ドイツでのプレー経験が長く、スリ・パハンの施設はドイツ6部チーム並だと発言するなど「来てみたら話が違った」感のある発言もありましたが、フィリピン代表監督として東南アジアでの監督経験もあることから、人選としてはとても興味深いです。またドラー・サレーがチームマネージャーとして残ったことで、マレーシア人選手と新監督の意思の疎通の助けになれば、今季のスリ・パハンは意外に化けるかもしれません。

昨季までトレンガヌFCの主将を務め今季は攻撃的MFとして期待されるリー・タック(英国)の前にはFWイェウヘン・ボハシュヴィリ(ウクライナ)とかつてPJシティでもプレーしたFWペドロ・エンリケ・オリヴェリア(東ティモール/ブラジル)を、その後ろには今季3年目となるDFエラルド・グロン(フランス)と、グロンとチームメートでもあったことがあるDFママドゥ・ワグ(フランス)の大型DF2枚を配置し、そこにマレーシア人選手が絡んでくる布陣となりそうです。しかしそのマレーシア人選手もファイザル・ハリム(トレンガヌFCへ移籍)、ニック・シャリフ(スランゴールFCへ移籍)と期待の選手が移籍し、少々寂しいメンバーになっています。

<ボラセパマレーシアJP的注目選手>
ノー・アザム・アジー
リー・タックの加入でより守備的なMFとして起用される可能性もありますが、タック選手が前掛かり気味になっても、代わりに司令塔としてその後ろを任せられるMFなので、タック選手の持ち味を生かし、代表でも司令とを務める自身の新境地を開けるかも知れません。

ボラセパマレーシアJP的順位予想 8位ペナンFC

2020年シーズン成績:*2部プレミアリーグ1位 – 8勝2分1敗 得点24失点8

昨季2部プレミアリーグでは圧倒的な力で優勝したペナンFCは、FWカサグランデ、攻撃的MFエンドリック、長身のセンターバックDラファエル・ヴィトールとチームの格となるセンターラインが残留し、1部昇格に合わせてタジキスタン出身のFWシェリディン・ボボエフとインドネシア出身で母親が日本人の守備的MFリュウジ・ウトモを新たに獲得しています。

またこのチームは昨季ゴールを守ったGKサミュエル・サマーヴィルに対してPDRMでスーパーセーブを連発したブライアン・シーが挑む正GK争いにも注目です。

今季昇格組ながら、後述するPJシティFCやサバFCなどよりも力は上だと思いますので、1年で2部へ降格ということはなさそうです。

<ボラセパマレーシア的注目選手>
カサグランデ、エンドリック
昨季は2部で得点はリーグ1位、失点はリーグ最少と強さを見せたペナンの中心は、11試合で9ゴールを決めたカサグランデと同じく8ゴールを決めたエンドリックです。リーグ得点数1位と2位の2人はペナンに移籍する前は、いずれも1部のマラッカ・ユナイテッドやスランゴールでプレーしたものの目立った実績を残しておらず、いわば1部への再チャレンジとなる2人の活躍に注目したいです。