卒業生獲得のクラブから国立エリートアカデミーへの金銭補償なし
マレーシア語紙ブリタハリアンは「JDTやスランゴールFCは幸せ者だ」という見出しの記事を掲載しています。
国立のエリートサッカーアカデミーであるモクタル・ダハリアカデミーAMDの第2期卒業生40名の内、主力選手12名がMリーグ1部チャンピオンのジョホール・ダルル・タジムJDTとやはり1部のスランゴールFCと契約した話は、先日このブログでも取り上げました。
ブリタハリアンによれば、マレーシア政府青年スポーツ省とFAMが共同で運営する国家サッカー選手養成プログラムNFDPの中核となるモクタル・ダハリ・アカデミーAMDの卒業生を獲得するクラブは、AMDに対して選手獲得への金銭補償を支払う必要がないということで、同紙は国内でもトップクラスの才能がある17歳の選手をタダで入手できることから「幸せ者」という表現を使っています。
青年スポーツ省傘下の行政組織でAMDを監督する国立スポーツ評議会NSCは、今年2020年よりAMDから選手を獲得希望するクラブに対して補償を求める予定でいましたが、かつてAMDの責任者を務め、バイエルンミュンヘンのユースチームでのコーチ経験もあるたリム・ティオンキム氏をはじめ多方面から反対意見が続出しました。具体的にはAMDでトレーニングする選手たちとNSCの間に契約関係がないことなどから、NSCが監督することをのみ根拠としてAMD卒業選手の「価格」をNSCが設定することの正当性が問われた結果、この補償を求める計画が頓挫した経緯があります。
Mリーグ自身の給料未払い問題が明るみに
今季のMリーグは第4節以降は全試合が無観客試合となりましたが、Mリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLは、Mリーグ1部の全試合でテレビ中継すると同時にYoutubeの公式チャンネルを通じて無料でストリーム配信も行い、国内の多くのサッカーファンがその恩恵を受けることができました。
中継された試合はいずれもマレーシア語あるいは英語による実況解説を行うコメンテーターが配置されていましたが、このコメンテーターに対しMFLが給料を支払っていないことが明らかになりました。
英字紙ニューストレイトタイムズは9名のコメンテーターが昨年からすでに給料を全額支払われておらず、今年に至っては全く給料を受け取っていないと報じています。
今季中継されたのはMリーグ1部の121試合と1回戦終了後に中止が決まったマレーシアカップの7試合の合計128試合ということです。
Mリーグ中継のコメンテーターには1試合あたり550リンギから800リンギ(およそ1万4000円から2万500円)が払われるということですが、MFLのアブドル・ガニ・ハサンCEOは昨年は一部のみが支払われ、今年は給料が未払いとなっていることを認めた上で、現在は未払い分の支払いを行う準備を進めているとしています。
ケランタンFCは主力が流出
Mリーグ2部のケランタンFC(来季より、今季まではケランタンFA)の主力選手が流出です。
スポーツ専門サイトのスタジアムアストロによると、ケランタンFCは各選手に補償不要となる契約破棄用の書式を配布し、希望する選手が自由に契約を破棄できるようにした結果、MFニック・アキフ・シャヒラン・ニック・マット、FWナズリン・ナウィ、DFシャールル・ニザム・ロス・ハスニ、そしてMFダニアル・アシュラフ・アブドラの5選手がこれを提出して、退団したということです。
今回退団した選手は、今季やはり退団したユスリ・チェ・ラー監督の不在がこの5選手が退団を選んだ大きな理由であるとスタジアムアストロは報じています。
ナズリン選手は「新たに提示された契約内容はこれまでのものとは大きく異なっており、その内容に同意できないので放出を希望した。」と語り、新オーナーの元、クラブの目指す方向が明らかでないことを退団の理由に挙げています。
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退団した5選手の中でも21歳のニック・アキフの補償なし放出には正直驚きました。地元ケランタン州出身でU19、U23と年代別代表でもプレーし、今季も全試合に出場、ケランタンFCでは将来が期待されている選手の一人だと思っていましたが、それをこうも簡単に放出するとは…。
以前このブログでも100万リンギ(およそ2520万円)の契約解除違約金がニック・アキフに設定されていることを紹介しましたが、それが無くなればMリーグの多くのクラブが獲得に動くことは明らかですが、現在はMリーグ1部のトレンガヌFCとの契約が間近という噂です。