アジア杯2027予選マレーシア代表対ベトナム代表-試合前会見
マレーシア代表クラモフスキー監督:過去の結果にとらわれず新しい挑戦として試合に臨みたい
本日午後9時にブキ・ジャリル国立競技場でキックオフとなるアジア杯2027年大会予選のF組第2節マレーシア代表対ベトナム代表の試合を前に、両チームの監督とキャプテンが出席して前日会見が行われています。
なおマレーシア代表はベトナム代表には分が悪く、2014年の東南アジア選手権(当時の名称はスズキカップ)の準決勝がハノイで行われた際に4−2と勝利した試合以降は、7度対戦して1分6敗という記録が残っています。
会見でマレーシア代表のピーター・クラモフスキー監督は、5月19日から行ってきた代表合宿で選手が練習に取り組む姿勢を評価し、さらに自分が浸透させようしているサッカーに対する考えを選手が十分に理解していると述べています。
「選手たちは調子が良く、収集しているさまざまな体力指標も向上している。これら全てを選手たちが明日(6月10日)の試合のパフォーマンスに生かしてくれることを期待している」と述べたクラモフスキー監督はさらに「過去の対戦結果を憂慮する必要はない。今回の対戦は選手、監督以下のスタッフにとって新たな挑戦であり、まさにその機会が目の前にあるのだ。」と代表監督就任2戦目となるベトナム代表戦への決意を表明しています。
一方同席したキャプテンのDFマシュー・ディヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジムFC)は、2023年9月以来の代表復帰となったグエン・コン・フオン(ベトナム2部ビンフオックFC)と、2024年東南アジア選手権三菱電機カップ優勝の立役者でもあるブラジル出身の帰化選手グエン・スアン・ソンことラファエルソンのいずれもJリーグでプレー経験があるFWが欠場であるものの、決して楽な試合になるとは予想していないと述べています。
またクラモフスキー監督就任後のマレーシア代表については、個人のパフォーマンスの良し悪し以上に選手全員がチームとして機能することの重要性に主眼を置いているのがこれまでの代表監督との違いだと説明した上で、相手が何をしてくるかではなく、自分たちに何ができるかに焦点を当てて試合に臨みたいとも話しています。
クラモフスキー監督の自身の根拠は、今年に入ってから7名が代表入りしたマレーシアにルーツを持つ帰化選手(ヘリテイジ帰化選手)の存在と、今季2024/25シーズンが終了していることによる3週間を超える長期の代表合宿が実現したことにあります。FW3名、MF1名、DF3名と各ポジションに加わったヘリテイジ帰化選手の加入は、代表チームの選手層を厚くしただけでなく、高い身体能力や国外のレベルの高いリーグでプレーすることで身につけた強度などマレーシア人選手のみのチーム編成では欠けている部分を補って余りある補強となっています。
2025年に入ってからマレーシア代表入りが発表されたマレーシアにルーツを持つ帰化選手(ヘリテイジ帰化選手)は以下の通りです。
氏名 | 年齢 | ポジション | 出身 | 代表戦初出場 |
エクトル・へヴェル | 29 | AMF | オランダ | 2025年3月 |
ガブリエル・パルメロ | 23 | SB | スペイン | 2025年6月 |
ファクンド・ガルセス | 25 | CB | アルゼンチン | 出場なし |
ロドリゴ・オルガド | 29 | FW | アルゼンチン | 出場なし |
イマノル・マチュカ | 25 | WG | アルゼンチン | 出場なし |
ジョアン・フィゲレイド | 29 | FW | ブラジル | 出場なし |
ジョン・イラザバル | 28 | CB | スペイン | 出場なし |
今回のアジア杯2027年大会予選F組では、第1節でマレーシア代表はネパール代表を2−0で、ベトナム代表はラオス代表を5-0でそれぞれ破っており、得失点差でベトナム代表が1位、マレーシア代表が2位につけています。この予選では1位のチームのみがサウジアラビアで行われる本戦に出場できるため、6月10日の試合に勝ったチームはアジア杯出場に近づきます。
ベトナム代表キム監督:大量の帰化選手加入で情報不足を認めるも試合には自信
ベトナム代表のキム・サンシク監督は大量の帰化選手が加わったマレーシア代表の戦力分析に苦慮していると述べています。マレーシア代表はマレーシア人選手に加え、マレーシアにルーツを持つ帰化選手(ヘリテイジ帰化選手)とマレーシア国内で5年以上プレーしてマレーシア国籍を得た帰化選手で構成されており、キム監督は総勢18名の帰化選手の中には今回のベトナム代表戦が代表デビューとなる5名もいることから、戦力分析が不十分で、情報自体が不足していると述べています。
その一方でベトナム代表もこの試合に向けての準備は十分できていると話し、良いパフォーマンスを見せられるだろうと自信を見せています。
またベトナム代表のキャプテン、ド・ドゥイ・マン(ハノイFC)は、ベトナム代表対マレーシア代表のこれまでの対戦成績はベトナム代表有利ではあるものの、帰化選手の存在により、今回の試合は厳しいものになると予想しています。
「マレーシア代表には多くの国外でプレーする選手がおり、しかもとても素晴らしい選手たちだ。明日(6月10日)の試合は厳しいものになるだろうが、我々も目標があり、強い決意で臨むつもりだ。」と述べたド・ドゥイ・マンは、2週間前のマンチェスター・ユナイテッド対アセアンオールスターズ戦以来となるブキ・ジャリル国立競技場での試合について、自身が初めてブキ・ジャリル国立競技場で試合を行った2018年の東南アジア選手権決勝(ベトナム代表が最終的に3−2でマレーシア代表を破って優勝)のような試合にはならないだろう、とも述べています。
「2027年アジア杯に出場するためには、我々にはこの試合が最も重要であり、最も困難な試合になる可能性がある。攻守ともにチームとして機能することができれば、実力を発揮でき、勝点も得られるだろう」とド・ドゥイ・マン選手は話しています。
スランゴールFCの東山コーチがインドネシアU19女子代表監督就任
インドネシアサッカー協会(PSSI)は、スランゴールFCユースチームのコーチを務める東山晃氏が、インドネシアU19女子代表の監督に就任することを発表しています。
現在35歳の東山氏は北陸大学からサムットプラカーン・ユナイテッドへ加入してプロ選手としての道を歩み始めるとタイ、カンボジア、モンゴル、ニュージーランドなどでの現役生活を経て2018年に現役を引退すると、モンゴルやタイのクラブでの指導者をへて、2020年にマレーシア2部プレミアリーグに昇格を果たしたクチンFA(現クチンシティFC)で監督に就任しました。
クチンFAでは昇格初年度のチームをコロナ禍の影響で試合数が半減したシーズンながらリーグ4位に導き、この年のナショナルフットボールアウォーズでも最優秀監督賞の候補にあがりました。そしてその手腕が評価された東山氏は、翌2021年シーズンには同じプレミアリーグで2020年シーズンに8位だったクランタン・ユナイテッド(現クランタン・ダルル・ナイムFC)の監督に就任します。このシーズンのクランタン・ユナイテッドは東山氏とともにクチンFAから移籍した谷川由来選手の他、元日本代表の本山雅志選手、前岩手グルージャの深井脩平選手も加入し、メディアも「サムライ集団」などと評するなど注目を集めました。
しかし2021年シーズン開幕から11試合を5勝1分5敗の4位で前半戦を折り返すと、クラブはここで、「タイなど外国で若い選手の指導の経験があり、若手選手の指導に適任だ」という謎の理由から、東山氏をテクニカル・ディレクターに配置転換する発表を行い、U21やU19チームの指導を任されます。クラブはシーズン残りの9試合を3勝1分5敗として、最終成績も東山監督「更迭」前の4位から7位へと下がってしまいました。
翌年2022シーズンまで在籍したクランタンから、2023年には東山氏はスランゴールFCのユースコーチに就任します。スランゴールFCには今季2024/25シーズン途中から喜熨斗勝史監督、そして大宮などでプレーしたディビッドソン・純・マーカス氏がコーチに就任するなど、今後は「日本路線」で行くのかと思っていましたが、そうはなりませんでした。
PSSIによる発表の中で東山氏は「インドネシアには大きな可能性があり、自分が監督就任を決めたのもそれが理由の一つで、是非とも挑戦してみたいと思った。」と話しています。ちなみにPSSIの発表した東山氏の経歴では、タイやモンゴル、ニュージーランドでの指導経験については触れられていますが、マレーシアで指導した5年間についてはなぜか一言も触れられていません。(苦笑)
発表の中で東山氏は、自身のさまざまな国での指導経験から異なる文化下での指導に慣れていると話し、その国のサッカーにこれまでも敬意を表してきたと述べ、選手だけでなく自分人も指導者として常に学び続け、成長し続けるために全力を尽くすことをモットーとしているとも述べています。体力や技術の重要性とともにサッカーに対しての情熱を持ってプレーできるかも重視したいとも話している東山氏は、将来のW杯出場を目指す女子代表の望月悟監督とも同じ考えを持っていると話し、代表強化のために強固な基礎を作ることと目標としたいと話しています。なお東山氏の最初の仕事は、既にベトナムのホーチミンで開幕している東南アジアサッカー連盟(AFF)U19女子選手権となりそうです。
かつてはベトナム代表監督のパク・ハンソ、インドネシア代表監督のシン・テヨン、そしてマレーシア代表監督のキム・パンゴン韓国出身の指導者が席巻していた東南アジアのサッカーですが、近年は日本出身指導者が激増し、ざっと調べてみただけでも以下の9カ国14名がいます。てかアセアン10カ国の中でサッカー協会・代表関連で日本人指導者がいないのマレーシアだけのようです…。
・ベトナム:元日本代表の越田剛史氏がベトナムサッカー協会(VFF)のテクニカルディレクター(TD)、沖山雅彦氏がVFFの女子サッカー統括・育成女子代表監督
・タイ:元Jリーグ鹿島の石井正忠氏が男子代表監督、元女子日本代表監督の池田太氏が女子代表監督
・ミャンマー:元日本代表の黒崎久志氏がU22代表の監督、末岡龍二氏が同じU22代表のコーチ
・カンボジア:Jリーグ清水監督で、ブータンやネパールの代表監督も務めた行德浩二氏が代表監督、市川重明氏がTD
・フィリピン:土田哲也氏がフィリピンサッカー協会(PFF)のTD
・シンガポール:元Jリーグ大宮監督の小倉勉氏が代表監督
・ブルネイ:埴田淳氏がU23代表の監督
・インドネシア:元日本女子代表コーチの望月悟氏が女子代表監督、東山晃氏がU19女子代表監督
・ラオス:元女子日本代表の豊田奈夕葉氏が女子代表監督