6月10日のニュース<br>・アジア杯2027予選マレーシア代表対ベトナム代表-試合前会見<br>・マレーシア代表クラモフスキー監督:過去の結果にとらわれず新しい挑戦として試合に臨みたい<br>・ベトナム代表キム監督:大量の帰化選手加入で情報不足を認めるも試合には自信<br>・スランゴールFCの東山コーチがインドネシアU19女子代表監督就任

アジア杯2027予選マレーシア代表対ベトナム代表-試合前会見

マレーシア代表クラモフスキー監督:過去の結果にとらわれず新しい挑戦として試合に臨みたい

本日午後9時にブキ・ジャリル国立競技場でキックオフとなるアジア杯2027年大会予選のF組第2節マレーシア代表対ベトナム代表の試合を前に、両チームの監督とキャプテンが出席して前日会見が行われています。

なおマレーシア代表はベトナム代表には分が悪く、2014年の東南アジア選手権(当時の名称はスズキカップ)の準決勝がハノイで行われた際に4−2と勝利した試合以降は、7度対戦して1分6敗という記録が残っています。

会見でマレーシア代表のピーター・クラモフスキー監督は、5月19日から行ってきた代表合宿で選手が練習に取り組む姿勢を評価し、さらに自分が浸透させようしているサッカーに対する考えを選手が十分に理解していると述べています。

「選手たちは調子が良く、収集しているさまざまな体力指標も向上している。これら全てを選手たちが明日(6月10日)の試合のパフォーマンスに生かしてくれることを期待している」と述べたクラモフスキー監督はさらに「過去の対戦結果を憂慮する必要はない。今回の対戦は選手、監督以下のスタッフにとって新たな挑戦であり、まさにその機会が目の前にあるのだ。」と代表監督就任2戦目となるベトナム代表戦への決意を表明しています。

一方同席したキャプテンのDFマシュー・ディヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジムFC)は、2023年9月以来の代表復帰となったグエン・コン・フオン(ベトナム2部ビンフオックFC)と、2024年東南アジア選手権三菱電機カップ優勝の立役者でもあるブラジル出身の帰化選手グエン・スアン・ソンことラファエルソンのいずれもJリーグでプレー経験があるFWが欠場であるものの、決して楽な試合になるとは予想していないと述べています。

またクラモフスキー監督就任後のマレーシア代表については、個人のパフォーマンスの良し悪し以上に選手全員がチームとして機能することの重要性に主眼を置いているのがこれまでの代表監督との違いだと説明した上で、相手が何をしてくるかではなく、自分たちに何ができるかに焦点を当てて試合に臨みたいとも話しています。


クラモフスキー監督の自身の根拠は、今年に入ってから7名が代表入りしたマレーシアにルーツを持つ帰化選手(ヘリテイジ帰化選手)の存在と、今季2024/25シーズンが終了していることによる3週間を超える長期の代表合宿が実現したことにあります。FW3名、MF1名、DF3名と各ポジションに加わったヘリテイジ帰化選手の加入は、代表チームの選手層を厚くしただけでなく、高い身体能力や国外のレベルの高いリーグでプレーすることで身につけた強度などマレーシア人選手のみのチーム編成では欠けている部分を補って余りある補強となっています。

2025年に入ってからマレーシア代表入りが発表されたマレーシアにルーツを持つ帰化選手(ヘリテイジ帰化選手)は以下の通りです。

氏名年齢ポジション出身代表戦初出場
エクトル・へヴェル29AMFオランダ2025年3月
ガブリエル・パルメロ23SBスペイン2025年6月
ファクンド・ガルセス25CBアルゼンチン出場なし
ロドリゴ・オルガド29FWアルゼンチン出場なし
イマノル・マチュカ25WGアルゼンチン出場なし
ジョアン・フィゲレイド29FWブラジル出場なし
ジョン・イラザバル28CBスペイン出場なし

今回のアジア杯2027年大会予選F組では、第1節でマレーシア代表はネパール代表を2−0で、ベトナム代表はラオス代表を5-0でそれぞれ破っており、得失点差でベトナム代表が1位、マレーシア代表が2位につけています。この予選では1位のチームのみがサウジアラビアで行われる本戦に出場できるため、6月10日の試合に勝ったチームはアジア杯出場に近づきます。

ベトナム代表キム監督:大量の帰化選手加入で情報不足を認めるも試合には自信

ベトナム代表のキム・サンシク監督は大量の帰化選手が加わったマレーシア代表の戦力分析に苦慮していると述べています。マレーシア代表はマレーシア人選手に加え、マレーシアにルーツを持つ帰化選手(ヘリテイジ帰化選手)とマレーシア国内で5年以上プレーしてマレーシア国籍を得た帰化選手で構成されており、キム監督は総勢18名の帰化選手の中には今回のベトナム代表戦が代表デビューとなる5名もいることから、戦力分析が不十分で、情報自体が不足していると述べています。

その一方でベトナム代表もこの試合に向けての準備は十分できていると話し、良いパフォーマンスを見せられるだろうと自信を見せています。

またベトナム代表のキャプテン、ド・ドゥイ・マン(ハノイFC)は、ベトナム代表対マレーシア代表のこれまでの対戦成績はベトナム代表有利ではあるものの、帰化選手の存在により、今回の試合は厳しいものになると予想しています。

「マレーシア代表には多くの国外でプレーする選手がおり、しかもとても素晴らしい選手たちだ。明日(6月10日)の試合は厳しいものになるだろうが、我々も目標があり、強い決意で臨むつもりだ。」と述べたド・ドゥイ・マンは、2週間前のマンチェスター・ユナイテッド対アセアンオールスターズ戦以来となるブキ・ジャリル国立競技場での試合について、自身が初めてブキ・ジャリル国立競技場で試合を行った2018年の東南アジア選手権決勝(ベトナム代表が最終的に3−2でマレーシア代表を破って優勝)のような試合にはならないだろう、とも述べています。

「2027年アジア杯に出場するためには、我々にはこの試合が最も重要であり、最も困難な試合になる可能性がある。攻守ともにチームとして機能することができれば、実力を発揮でき、勝点も得られるだろう」とド・ドゥイ・マン選手は話しています。

スランゴールFCの東山コーチがインドネシアU19女子代表監督就任

インドネシアサッカー協会(PSSI)は、スランゴールFCユースチームのコーチを務める東山晃氏が、インドネシアU19女子代表の監督に就任することを発表しています。

現在35歳の東山氏は北陸大学からサムットプラカーン・ユナイテッドへ加入してプロ選手としての道を歩み始めるとタイ、カンボジア、モンゴル、ニュージーランドなどでの現役生活を経て2018年に現役を引退すると、モンゴルやタイのクラブでの指導者をへて、2020年にマレーシア2部プレミアリーグに昇格を果たしたクチンFA(現クチンシティFC)で監督に就任しました。

クチンFAでは昇格初年度のチームをコロナ禍の影響で試合数が半減したシーズンながらリーグ4位に導き、この年のナショナルフットボールアウォーズでも最優秀監督賞の候補にあがりました。そしてその手腕が評価された東山氏は、翌2021年シーズンには同じプレミアリーグで2020年シーズンに8位だったクランタン・ユナイテッド(現クランタン・ダルル・ナイムFC)の監督に就任します。このシーズンのクランタン・ユナイテッドは東山氏とともにクチンFAから移籍した谷川由来選手の他、元日本代表の本山雅志選手、前岩手グルージャの深井脩平選手も加入し、メディアも「サムライ集団」などと評するなど注目を集めました。

しかし2021年シーズン開幕から11試合を5勝1分5敗の4位で前半戦を折り返すと、クラブはここで、「タイなど外国で若い選手の指導の経験があり、若手選手の指導に適任だ」という謎の理由から、東山氏をテクニカル・ディレクターに配置転換する発表を行い、U21やU19チームの指導を任されます。クラブはシーズン残りの9試合を3勝1分5敗として、最終成績も東山監督「更迭」前の4位から7位へと下がってしまいました。

翌年2022シーズンまで在籍したクランタンから、2023年には東山氏はスランゴールFCのユースコーチに就任します。スランゴールFCには今季2024/25シーズン途中から喜熨斗勝史監督、そして大宮などでプレーしたディビッドソン・純・マーカス氏がコーチに就任するなど、今後は「日本路線」で行くのかと思っていましたが、そうはなりませんでした。

PSSIによる発表の中で東山氏は「インドネシアには大きな可能性があり、自分が監督就任を決めたのもそれが理由の一つで、是非とも挑戦してみたいと思った。」と話しています。ちなみにPSSIの発表した東山氏の経歴では、タイやモンゴル、ニュージーランドでの指導経験については触れられていますが、マレーシアで指導した5年間についてはなぜか一言も触れられていません。(苦笑)

発表の中で東山氏は、自身のさまざまな国での指導経験から異なる文化下での指導に慣れていると話し、その国のサッカーにこれまでも敬意を表してきたと述べ、選手だけでなく自分人も指導者として常に学び続け、成長し続けるために全力を尽くすことをモットーとしているとも述べています。体力や技術の重要性とともにサッカーに対しての情熱を持ってプレーできるかも重視したいとも話している東山氏は、将来のW杯出場を目指す女子代表の望月悟監督とも同じ考えを持っていると話し、代表強化のために強固な基礎を作ることと目標としたいと話しています。なお東山氏の最初の仕事は、既にベトナムのホーチミンで開幕している東南アジアサッカー連盟(AFF)U19女子選手権となりそうです。


かつてはベトナム代表監督のパク・ハンソ、インドネシア代表監督のシン・テヨン、そしてマレーシア代表監督のキム・パンゴン韓国出身の指導者が席巻していた東南アジアのサッカーですが、近年は日本出身指導者が激増し、ざっと調べてみただけでも以下の9カ国14名がいます。てかアセアン10カ国の中でサッカー協会・代表関連で日本人指導者がいないのマレーシアだけのようです…。

・ベトナム:元日本代表の越田剛史氏がベトナムサッカー協会(VFF)のテクニカルディレクター(TD)、沖山雅彦氏がVFFの女子サッカー統括・育成女子代表監督
・タイ:元Jリーグ鹿島の石井正忠氏が男子代表監督、元女子日本代表監督の池田太氏が女子代表監督
・ミャンマー:元日本代表の黒崎久志氏がU22代表の監督、末岡龍二氏が同じU22代表のコーチ
・カンボジア:Jリーグ清水監督で、ブータンやネパールの代表監督も務めた行德浩二氏が代表監督、市川重明氏がTD
・フィリピン:土田哲也氏がフィリピンサッカー協会(PFF)のTD
・シンガポール:元Jリーグ大宮監督の小倉勉氏が代表監督
・ブルネイ:埴田淳氏がU23代表の監督
・インドネシア:元日本女子代表コーチの望月悟氏が女子代表監督、東山晃氏がU19女子代表監督
・ラオス:元女子日本代表の豊田奈夕葉氏が女子代表監督

6月9日のニュース<br>・帰化選手大量招集のマレーシア代表に近隣諸国から疑惑の声が上がる<br>・オランダ出身の帰化選手エクトル・へヴェルがジョホールへ加入<br>・帰化選手のイマノル・マチュカは第一子誕生よりもマレーシア代表を優先<br>・ジョホールがプレミアリーグ監督経験者のシスコ・ムニョス氏の監督就任を発表<br>・新規参入のブルネイDPMM FCにマレーシア代表MFが加入

帰化選手大量招集のマレーシア代表に近隣諸国から疑惑の声が上がる。

6月10日のアジア杯2027年大会予選の2戦目となるベトナム代表戦を控えて、ブラジルやアルゼンチン、スペイン、オランダ出身のマレーシアにルーツを持つ帰化選手を次々と招集しているマレーシア代表に周辺国から疑惑の目が向けられています。

2025年に入ってからマレーシア代表入りが発表されたマレーシアにルーツを持つ帰化選手は以下の通りです。

氏名年齢ポジション出身代表戦初出場
エクトル・へヴェル29AMFオランダ2025年3月
ガブリエル・パルメロ23SBスペイン2025年6月
ファクンド・ガルセス25CBアルゼンチン出場なし
ロドリゴ・オルガド29FWアルゼンチン出場なし
イマノル・マチュカ25WGアルゼンチン出場なし
ジョアン・フィゲレイド29FWブラジル出場なし
ジョン・イラザバル28CBスペイン出場なし

今回の対戦国であるベトナムや、タイ、インドネシアなど周辺国のサッカーファンからは、ブラジルやアルゼンチン、スペインにマレーシアにルーツを持つ選手がいるなど信じられないという声が多く上がっています。

東南アジアでは、かつては同じポルトガルの植民地だったブラジル出身の選手を自国にルーツを持つ選手と偽って代表入りさせるため、東ティモールサッカー協会が主導して出生証明や洗礼証明を偽造して12名のブラジル人選手をアジア杯予選やW杯予選に出場させた事件もあり、SNS上ではFIFAにマレーシアサッカー協会(FAM)を対象とした正式な調査を求める意見なども見られます。


帰化選手については、マレーシア国内でもそのルーツが最初から明かされなかったことから、メディア関係者を中心に、各選手がどのようなルーツを持つのかを明らかにすべきという意見が出る一方で、このご時世にリスクを冒してまでFAMが偽の帰化選手などを代表入りさせるはずがないという意見もあり、マレーシア国内でも皆が納得しているわけではありません。ここ数日になって、ガルセス選手にはマレーシア出身の祖母がいるだとか、へヴェル選手の祖父はマラッカ出身だとかという報道が出始めましたが、こういった報道で「疑惑」が収まるのかどうかは不明です。

オランダ出身の帰化選手エクトル・へヴェルがジョホールへ加入

6月10日にアジア杯2027年大会予選ベトナム代表戦に向けて、次々と帰化選手の加入が発表されているマレーシア代表。今年に入ってすでに6名のマレーシアにルーツを持つ外国出身の帰化選手が代表に招集されていますが、いち早く今年3月のアジア杯2027年大会予選ネパール戦でデビューしたのがオランダ出身のAMFエクトル・へヴェルでした。この試合では先制ゴールを決めるなど、ネパール代表戦勝利に貢献したへヴェル選手はポルトガル2部ポルティモネンセSC所属でしたが、この度、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)入りすることが明らかになっています。

6月10日に行われるアジア杯予選第2戦のベトナム代表戦でも先発が予想されるへヴェルは、5月29日、そして6月3日に行われたカーボベルデ代表との国際親善試合には出場しませんでした。


これが発表になった後にXにも投稿しましたが、この移籍の話を聞いて思い出したのが2022年にベルギー1部のKASオイペンとの契約満了後にJDTに加入したスペイン生まれのジョルディ・アマトのことでした。スペインのカタルーニャ州出身のアマト選手は、地元のRCDエスパニョールのユースからBチームを経てトップチームまで昇格すると、その後は同じスペインのラージョ・バジェカーノ、英国2部のスウォンジー・シティAFC、スペインのレアル・ベティス、そしてKASオイペンを経て、2022年6月にJDT入りしています。スペインの年代別代表でもプレー経験があったアマト選手ですが、JDT入りに先立つ2022年5月にインドネシア国籍取得希望を表明しました。母方の祖母は現在のインドネシア南スラウェシ州マカッサル出身でかつて存在した王家の血を引く「王子」として、同年11月にインドネシア国籍を取得したアマト選手でしたが、その時にインドネシアサポーターからは、JDTで試合に出やすくなるために東南アジア選手枠を使うためのインドネシア国制取得なのではという非難と、インドネシア代表に貢献するのであれば、レベルの低いマレーシアではなくヨーロッパのリーグに残るべきという声でした。

アマト選手のインドネシア国籍取得反対には1万5000を超えるオンライン署名が集まり、国会議員の一部からも国籍取得手続きを慎重に行うべきといった意見も出ましたが、同年12月には東南アジア選手権「三菱電機カップ」のカンボジア代表戦に先発してインドネシア代表デビューを果たしています。しかし2022年3試合、2023年8試合、2024年はケガの影響もあり8試合と出場していた代表戦も、2026年W杯予選の日本戦以降はベンチ外や出場機会なしが4試合続いています。マレーシアでプレーを続けたことでレベルダウンしたのか、はたまたパトリック・クライファート監督就任に現れているようにかつての宗主国オランダ出身選手が増えたチーム状況に合わなくなったのか、その理由は不明です。

ちなみにアマト選手は2024/25シーズンを最後にJDTを退団するとされており、リーグ2連覇中のプルシブ・バンドンやバリ・ユナイテッドなどインドネシア1部の複数のクラブが獲得に動いているという情報もあります。

帰化選手のイマノル・マチュカは第一子誕生よりもマレーシア代表を優先

6月10日のベトナム代表戦に向けた合宿を行っているマレーシア代表に初めて合流したイマノル・マチュカ(アルゼンチン1部CAベレス・サルスフィエルド)は、今週生まれたばかりの第一子の顔を見ることなく代表合宿入りしていると、英字紙スターが報じています。

夫人の出産には立ち会わず、30時間かけてアルゼンチンからマレーシアへ移動したマチュカ選手は、SNSで長男の誕生を明らかにしています。

ブラジルのフォルタレーザECからCAベレス・サルスフィエルドへローン移籍中のマチュカ選手は、ベトナム代表戦に向けて初めて招集されたマレーシアにルーツを持つ5名の帰化選手のうちの1人で、25歳のウィングの選手です。

マレーシア代表のピーター・クラモフスキー監督は、6月6日にこのマチュカ選手を含めた代表合宿の第3段階となる最終メンバー30名を発表。シャミル・クティ(JDT)、ジクリ・カリリ(スランゴールFC)、ハキミ・アジム(クアラルンプールシティFC)が外れた一方で、セレッソ大阪での入団披露が行われた日本から戻ったディオン・クールズがメンバー入りしています。

アジア杯2027年大会予選は各組の1位のみが本戦に出場でき、予選F組では初戦でラオスに5−0と勝利したベトナムが首位、ネパールに2−0で勝利したマレーシアが勝点で並んでいるものの、得失差で2位につけています。マレーシアは2014年の東南アジア選手権での勝利を最後に、現在は1引き分けを挟んでベトナムに7連敗中ということもあり、恥も外聞もなく帰化選手を集めて今回の試合での勝利を目指しています。

2025年6月マレーシア代表合宿最終メンバー
GK:シーハン・ハズミ(JDT)、シーク・イズハン(スランゴールFC)、アズリ・ガニ(KLシティFC)、ハジク・ナズリ(ペラFC)
DF:ラヴェル・コービン=オング、ジュニオール・エルドストル、マシュー・ディヴィーズ、シャールル・サアド(以上JDT)、ハリス・ハイカル、クエンティン・チェン(以上スランゴールFC)、ダニエル・ティン(サバFC)、ウバイドラー・シャムスル(トレンガヌFC)、ディオン・クールズ(J1セレッソ大阪)、 ファクンド・ガルセス(スペイン1部デポルティーボ・アラベス)、ガブリエル・パルメロ(スペイン4部CDテネリフェB)、ジョン・イラザバル(アゼルバイジャン1部サバFK)
MF:アフィク・ファザイル、ナズミ・ファイズ(いずれもJDT)、ノーア・ライネ(スランゴールFC)、スチュアート・ウィルキン(サバFC)、エンドリック・ドス・サントス(ベトナム1部ホーチミンシティ)、エクトル・へヴェル(ポルトガル2部ポルティモネンセSC)
FW:アリフ・アイマン、ロメル・モラレス(以上JDT)、ファイサル・ハリム(スランゴールFC)、 サファウィ・ラシド(トレンガヌFC)、パウロ・ジョズエ(KLシティFC)、イマノル・マチュカ(アルゼンチン1部CAベレス・サルスフィエルド)、ジョアン・フィゲレイド(トルコ1部イスタンブール・バシャクシェヒルFK)、ロドリゴ・オルガド(コロンビア1部アメリカ・デ・カリ)

ジョホールがプレミアリーグ監督経験者のシスコ・ムニョス氏の監督就任を発表

マレーシアスーパーリーグ11連覇中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、8月に開幕予定の2025/26シーズンに向けてシスコ・ムニョス新監督の就任をクラブ公式SNSを通じて発表しています。

スペイン出身のムニョス監督は45歳で、現役時代は2003/4シーズンにスペイン1部リーグとUEFAカップに優勝を果たしたバレンシアやレアル・ベティス、レバンテUDなどでプレーした後、現役終盤にプレーしたジョージア1部のディナモ・トビリシで2020/21シーズンにコーチから監督に昇格して8勝3敗の成績を収めると、シーズン途中に英国2部のワトフォードFCの監督に転身します。開幕から低迷していたワトフォードFCは、ムニョス監督就任後は快進撃を始めます、チームは途中5連勝なども記録、ムニョス監督自身も月間最優秀監督を獲得するなどしてこのシーズンを2位で終えたワドフォードFCを降格から1シーズンでプレミアリーグへ昇格させます。

しかし2021/22シーズンのプレミアリーグでは開幕から7試合で15位と低迷すると、ムニョス監督は更迭され、その後はウエスカSD(スペイン2部)、アノルトシス・ファマグスタ(キプロス1部)を経て、今度はシェフィールド・ウエンズデーの監督として2023/24シーズンに英国2部に復帰します。しかしチームが開幕からの10試合でわずか2勝と苦しむとあっさり解雇となり、その後はスロバキア1部のFC DAC 1904ドゥナイスカー・ストレダで、監督2シーズン目を迎えた昨年11月末に開幕15試合で6勝4分5敗の成績で更迭されています。


リーグ11連覇中、特に過去3シーズンは連続で国内三冠達成と国内では圧倒的な強さを誇るJDTですが、オーナーのジョホール州摂政、トゥンク・イスマイル殿下があくなき勝利を目指すチームの監督は安泰ではありません。11連覇の最初となる2014年シーズン優勝をもたらしたボヤン・ホダック監督(現インドネシア1部ブルシブ・バンドン監督)は1年で交代、以降は2度監督を務めたエクトル・ビドリオ監督を含めてのべ10名が監督を務めています。リーグ11連勝なので、この全ての監督が国内リーグでは優勝を果たしていますが、常連となっているACLでの成績がグループステージ止まりやノックアウトステージ1回戦止まりでは次のシーズンまで首がつながらないのが、JDTの厳しいところです。

新規参入のブルネイDPMM FCにマレーシア代表MFが加入

2025/26シーズンからマレーシアスーパーリーグに参入するブルネイDPMM FCは、マレーシア代表MFのセルヒオ・アグエロの加入を公式サイトで発表しています。

31歳のアグエロ選手はアルゼンチン出身で、マレーシアリーグで5年以上プレーしたこ後、マレーシア国籍を取得して2022年にマレーシア代表入りすると、2024年12月の東南アジア選手権「三菱電機カップ」シンガポール代表戦まで15試合に出場して3ゴール2アシストの成績を残しています。また5月28日に行われたマンチェスター・ユナイテッド対アセアンオールスターズ戦にマレーシア代表として出場して1-0の勝利に貢献、試合後にはマンUのルベン・アモリム監督から最も高い評価を受けています。

今季はリーグ8位に終わったスリ・パハンFCでプレーし、」25試合に出場し5ゴール3アシストを記録しています。なおスリ・パハンFCは、今季終了後に経営上の問題から来季のスーパーリーグ参加が不透明だったこともあり、多くの主力選手の放出しましたが、アグエロ選手もその1人で、当初は今季最下位だったクランタン・ダルル・ナイムFCへの移籍なども噂されていました。

ブルネイを拠点とするDPMM FCは、自国のブルネイ人選手と所属するマレーシア人選手について、スーパーリーグではマレーシア人選手と同じ扱いとすることが認められており、今季はペナンFCで22試合に出場したDFファイルズ・ザカリア、ペラFCで26試合に出場したDFトミー・マワトの加入を発表している他、かつてマレーシアリーグでもプレー経験のあるフィリピン代表CBアマニ・アギナルドをタイ1部ラヨーンFCから、インドネシア代表CFラマダン・サナンタをインドネシア1部プルシスソロからそれぞれ獲得、またアイスランド代表DFダミール・ムミノビッチ、北マケドニア代表GKクリスティヤン・ナウモフスキの残留なども発表しています。

6月5日のニュース<br>・ディオン・クールズがC大阪に加入-マレーシア人選手として初めて J1でプレーへ<br>・マレーシア代表にアルゼンチン出身2名、ブラジル出身1名、スペイン出身1名の計4名の帰化選手が合流<br>・ジョホールが早くも来季に向けてスペイン出身DFを獲得

ディオン・クールズがC大阪に加入-マレーシア人選手として初めて J1でプレーへ

​発表が時間の問題とされていたマレーシア代表DFのディオン・クールズのセレッソ大阪入りが正式に発表されています。これによりクールズ選手はマレーシア人選手としては初めてJ1の舞台でプレーすることになります。

父親がベルギー人、母親がサラワク州クチンの出身であるクールズ選手はセレッソ大阪への加入が発表された6月4日が誕生日でこの日29歳になりました。ベルギーではU21代表などの年代別代表などでもプレーした後、ベルギー1部のクラブ・ブルッヘ、デンマーク1部のFCミッティラン、ベルギー1部のSVズルテ・ワレヘム、チェコ1部FKヤブロネツなどでプレーし、2012年にマレーシアのパスポートを取得して代表入りし、同年6月3日のW杯2022アジア予選のアラブ首長国連邦戦で代表デビューしています。さらに2022/23シーズン途中にタイ1部のブリーラム・ユナイテッドに移籍すると、当時の石井正忠監督(現タイ代表監督)のもとでもプレーし、このシーズンからブリーラム・ユナイテッドの3季連続の国内三冠獲得、さらには今季のアセアンクラブ選手権優勝にやACLエリートでのベスト8進出にも貢献しています。

マレーシア代表では、これまで31試合に出場してキャプテンも務めるなど、こちらでも主力選手として主にセンターバックやサイドバック・ウイングバックとして出場し、通算4ゴールを挙げています。

クールズ選手がJ1で成功すれば、J1クラブからマレーシア人選手への注目も集まる可能性もあり、是非とも素晴らしいパフォーマンスを期待したいところです。なおクールズ選手は6月10日のアジア杯2027年大会予選のベトナム代表戦にも出場が予想されることから、J1デビューは6月14日のFC東京戦が有力とされています。


マレーシア人選手はこれまで3名がJリーグで、1名が JFLでのプレーを経験しています。新しいところではいずれも昨シーズン、J3のY.S.C.C.横浜でプレーしたFWルクマン・ハキム(ベルギー1部KVコルトレイクからローン移籍)や、同じJ3のFC大阪にスランゴールFCから5ヶ月間のローン移籍したムハンマド・カリル、そして2019年に当時J2のファジアーノ岡山に加入し、J3のアスルクラロ沼津を経て2023年に退団したFWハディ・ファイヤッド(PDRM FC)がいます。

しかし、2016年AFC U16選手権(現U17アジア杯)で得点王となった経験もあるルクマン選手は、リーグ戦とカップ戦合わせて9試合に出場(出場時間134分)、ムハンマド選手は出場0で退団しています。また19歳でマレーシアU23代表に選ばれるなど将来を嘱望されたハディ選手は、所属していたジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のオーナーでジョホール州皇太子(当時)のトゥンク・イスマイル殿下の反対を押し切り、JDTとの契約を解除してまで移籍した岡山でしたが、結局出場機会はなく、そこから出場機会を求めてローン移籍した沼津での練習中に右膝前十字靭帯断裂の重傷を負い、そのリハビリなどで結局、沼津での3試合(出場時間43分)のみでマレーシアに戻っています。

2013年には当時JFLのFC琉球に、マレーシアU22代表のワン・ザック・ハイカルとナジルル・ナイムが加入しています。2012年ロンドンオリンピック予選で日本に0−2と敗れたマレーシアでしたが、この両選手がスカウトの目に留まったと言われています。2013年3月に両選手は2年契約を提示されましたが、ワン・ザック選手は2試合(試合出場81分)、ナジルル選手は出場なしでともにマレーシアに戻っています。JDTからのオファーを蹴ったこともあるワン・ザック選手は昨季はペラFCでプレーし、ナジルル選手は今季は出場記録がありません。(記録はTransfarmarktを参照しています。)

マレーシア代表にアルゼンチン出身2名、ブラジル出身1名、スペイン出身1名の計4名の帰化選手が合流

6月10日のベトナム代表戦を前にマレーシア代表の補強が加速しています。

昨日のこのブログでも新戦力候補について取り上げましたが、マレーシアサッカー協会(FAM)は6月4日に正式に4名の帰化選手の代表合宿合流を発表しています。実際にはこの4選手は既に合宿に参加しています。この4選手は既にFIFAとAFCの承認を受けており、いずれも6月10日に行われるアジア杯2027年大会予選ベトナム代表戦に出場が可能だということです。

今年3月のアジア予選ネパール代表戦でデビューしたMFエクトル・へヴェル(ポルトガル2部ポルティモネンセ)、5月29日に行われた国際新全試合カーボベルデ代表戦でデビューしたSBガブリエル・パルメロ(スペイン4部CDテネリフェB)に続き、この合宿では今季ラ・リーガで15位に終わったディポルティーボ・アラベスでプレーするアルゼンチン出身の25歳、ファクンド・ガルセスがマレーシア代表候補となったことをマレーシアサッカー協会(FAM)が既に発表しています。身長189cmのガルセス選手はアルゼンチン2部のCAコロンから今年1月にディポルティーボ・アラベスに移籍し、今季のラ・リーガでは20試合にベンチ入りし、7試合に先発、3試合に途中出場しています。

6月4日に新たにマレーシア代表入りが公式発表されたのは、アルゼンチン出身のFWロドリゴ・オルガド(29歳、コロンビア1部アメリカ・デ・カリ)とFWイマノル・マチュカ(25歳、アルゼンチン1部CAべレス・サルスフィエルド)、スペイン出身のDFジョン・イラザバル(28歳、アゼルバイジャン1部サバフFK)、そしてブラジル出身のFWジョアン・フィゲイレード(29歳、トルコ1部イスタンブール・バシャクシェヒルFK)の4選手です。

オルガド選手は今季ここまで15試合に出場して7ゴール1アシストの成績を残している一方、ブラジルのフォルタレーザECからローン移籍中のマチュカ選手は出場2試合となっています。またFWのフィゲイレード選手は2023年2月からプレーするトルコ1部リーグで90試合で18ゴール2アシストを記録、イラザバル選手は、リーグ5位のサバフFKの今季リーグ戦とカップ戦を合わせた39試合中37試合で先発を果たしています。

なおこれまで噂に上がっていたギリシャ1部パンセライコスSCで今季19ゴールを挙げて得点王に輝いたスペイン出身のFWヘフテ・ベタンコール(31歳、ギリシャ1部パンセライコスSC)については、マレーシア代表入りの発表はありませんでした。

ジョホールが早くも来季に向けてスペイン出身DFを獲得

代表強化のニュースに隠れて王者ジョホールもひっそりと補強

マレーシアスーパーリーグの2025/26シーズンは8月に開幕しますが、3シーズン連続国内三冠を達成した王者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が新戦力として、スペイン出身のCBアントニオ・グラウデルの加入を発表しています。来季に向けての契約第1号となった29歳のグラウデル選手は、バルサやビジャレアル、エスパニョールなどのユースを経て、CFフエンラブラダ、SDエイバル、アルバセテ・バロンピエ、カディスCFなどでのプレー経験があります。

グラウデル選手の加入は、クラブの公式SNSで発表されていますが、その投稿映像中でに身につけたユニフォームの背番号が5だったことが、マレーシアのサッカーファンをざわつかせています。今季のJDTの背番号5を担っていたのはインドネシア代表で同じスペイン出身のCBジョルディ・アマトでしたが、多くの外国籍選手を放出することを明らかにしているJDTは現時点ではアマト選手の去就が発表しておらず、このまま退団となる可能性が取り沙汰されています。


6月4日のニュース<br>・カーボベルデ代表との2戦目は0-3の完敗<br>・ベトナム代表戦に向けて準備着々-今季のラ・リーガで10試合出場のアルゼンチン出身CBがマレーシア代表入り

カーボベルデ代表との2戦目は0-3の完敗

6月3日にマレーシア代表対カーボベルデ代表の2試合目が非公開で行われ、初戦ではFIFAランキング131位のマレーシア代表と引き分けていた同72位のカーボベルデ代表が主力選手の活躍で3−0と快勝しています。

セリエAのエラス・ヴェローナでプレーする24歳のFWダイロン・リブラメントが35分と48分にゴールを決めた他、マッカビ・ネタニヤFC(イスラエル1部)でプレーするFWヘリベルト・タバレスが55分にゴールを決めています。

5月29日に行われた同じカードでは、カーボベルデ代表が先制するも、途中出場のパウロ・ジョズエ(クアラルンプールシティFC)がゴールを決めて、引き分けていました。

この試合は6月10日のアジア杯2027年大会予選のベトナム代表戦に臨むマレーシア代表の最後の実戦機会でした。

ベトナム代表戦に向けて準備着々-今季のラ・リーガで10試合出場のアルゼンチン出身CBがマレーシア代表入り

しかし地球の裏側からよく見つけてくるよなぁ。

6月10日のアジア杯2027年大会予選ベトナム代表戦に向けてスペイン1部ラ・リーガで今季10試合に出場したCBがマレーシア代表入りを果たしています。今季ラ・リーガで15位に終わったディポルティーボ・アラベスでプレーするアルゼンチン出身の25歳、ファクンド・ガルセスがマレーシア代表候補となったことをマレーシアサッカー協会(FAM)が発表しています。身長189cmのガルセス選手はアルゼンチン2部のCAコロンから今年1月にディポルティーボ・アラベスに移籍し、今季のラ・リーガでは20試合にベンチ入りし、7試合に先発、3試合に途中出場しています。

FAMはガルセス選手が既に代表合宿に参加している他、6月10日のベトナム代表戦の登録メンバーにも入っており出場可能であることも明らかにしています。アルゼンチンのサンタフェ出身のガルセス選手がどのようにマレーシアとの繋がりを持っているのかに対し、アルゼンチンのメディアのradigol.comは、ガルセス選手がマレーシア出身の祖母を持つと報じているということです。


隣国インドネシアに負けじと、マレーシアもその血を引くヘリテージ帰化選手を代表入りさせています。今年3月のアジア杯2027年大会予選ネパール代表戦では、オランダ出身で、オランダ年代別代表でもプレー経験を持つMFエクトル・へヴェル(ポルトガル2部ポルティモネンセ)が代表デビューし、先週5月29日に行われたFIFAランキング72位のカーボベルデ代表戦では、スペイン生まれの23歳、SBガブリエル・パルメロ(スペイン4部CDテネリフェB)がやはりデビューを果たしています。

またアルゼンチン出身のFWロドリゴ・オルガド(29歳、コロンビア1部アメリカ・デ・カリ)とFWイマノル・マチュカ(25歳、アルゼンチン1部CAべレス・サルスフィエルド)、スペイン出身のFWヘフテ・ベタンコール(31歳、ギリシャ1部パンセライコスSC)とDFジョン・イラザバル(28歳、アゼルバイジャン1部サバフFK)の4選手もベトナム代表戦に向けてマレーシア代表入りが伝えられています。オルガド選手は今季ここまで15試合に出場して7ゴール1アシストの成績を残している一方、ブラジルのフォルタレーザECからローン移籍中のマチュカ選手は出場2試合となっています。またFWのペタンコール選手は今季のリーグ戦全30試合に全て先発し、19ゴールを挙げてリーグ得点王に輝き、イラザバル選手は、リーグ5位のサバフFKの今季リーグ戦とカップ戦を合わせた39試合中37試合で先発を果たしています。

2014年12月の東南アジア選手権で勝利して以降、現在まで0勝1分7敗のベトナム代表相手にこの帰化選手たちが躍動すれば、11年ぶりの勝利も夢ではなさそうですが、この大事な試合直前に各選手が合流して、チーム内連携が取れるのかどうかが鍵となりそうです。


マレーシア代表の「大型補強」の記事を読んで最も興味深いのは、オルガド、ペタンコールの両FWです。6月10日に対戦するベトナム代表とは1引き分けを挟んで7連敗中ですが、この間は3得点15失点という記録が残っています。1試合平均で1得点以下では勝てるわけがないのですが、今回はこの強力FW2枚が加わることで、得点力不足の解消も大いに期待できそうです。

その一方で、この両選手が不在だった先日5月29日の試合でマレーシア代表のピーター・クラモフスキー監督は、本来は右ウイングのサファウィ・ラシド(トレンガヌFC)をセンターフォワードとして起用、左右にファイサル・ハリム(スランゴールFC)、アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジムFC)を配置する攻撃陣でしたが、身体能力、技術も勝るカーボベルデのDF陣と対等に戦えたのはアリフ・アイマンだけでした。このマレーシアの至宝と完全にポジションが被り、出場機会を失いつつあるサファウイ・ラシドにとっては、カーボベルデ戦でのセンターフォワード起用は初めてのポジションながら新境地を開拓する機会でした。試合後のインタビューでは、CF起用には問題がなかったと述べたサファウィ選手ですが、スタンドから見る限りでは、インパクトを残すことはできなかった印象でした。しかも交代で入ったパウロ・ジョズエ(クアラルンプールシティFC)が少ないチャンスを生かしてゴールを決めており、おそらくベトナム戦で起用されるであろうオルガド、ペタンコールの両選手がゴールを決めることがあれば、アジア杯の2大会連続出場は近づきますが、ボラセパマレーシアJPがイチオシするサファウイ選手の代表チームでの居場所がなくなってしまいそうです。

5月29日のニュース<br>・マレーシア対カーボベルデ戦前日会見<br>・マンUはアセアンオールスターズに惜敗<br>・マンUはアセアンオールスターズに惜敗

マレーシア対カーボベルデ戦前日会見

左からライアン・メンデス選手、ペドロ・ブリト監督(以上カーボベルデ代表)、ピーター・クラモフスキー監督、パウロ・ジョズエ選手(以上マレーシア代表)

5月29日にクアラルンプールのKLフットボールスタジアムで行われるマレーシア代表対カーボベルデ代表戦を前に、5月28日に前日会見が行われています。直近のFIFAランキングでは131位のマレーシア代表が同72位のカーボベルデ代表に挑む図式となるこの試合は、6月10日に行われるAFCアジア杯2027年大会3次予選のベトナム代表戦に向けての準備となる重要な試合です。この会見にはマレーシア代表からはピーター・クラモフスキー監督とKLフットボールスタジアムをホームとするクアラルンプールシティFC(KLシティFC)のパウロ・ジョズエ、カーボベルデ代表からはペドロ・ブリト監督、そしてFWライアン・メンデス(トルコ2部コジャエリスポル)が出席しています。

マレーシア代表のクラモフスキー監督は対戦するカーボベルデ代表を「フィジカルに強苦」「スピードが速く」「ダイレクトプレーが特徴の」チームであると分析し、このようなチームと対戦できる機会が得られたことに興奮していると話し、6月10日のベトナム代表戦に向けて、相手が誰でに、試合地がどこでも、またどんなコンデションであっても自分たちのサッカーができるような精神力の強さを身につけ、チームをレベルアップさせる貴重な試合だとしています。

しかしクラモフスキー監督の意思とは別に、今季2024/25シーズンのマレーシアスーパーリーグが終了してから1ヶ月以上経過しており、選手の試合感やフィットネスレベルに懸念の声もあります。また初戦のネパール代表戦と比べて明らかに格上の相手との対戦はクラモフスキー監督の評価にも直結する試合でもあり、少なくともサポーターに希望を持たせるような試合を見せることが望まれます。

マレーシア代表とは初対戦となるカーボベルデ代表の通称ブビスタことブリト監督は、今回の代表メンバーにマレーシアスーパーリーグのスランゴールFCでプレーするアルヴィン・フォルテスがいることから、マレーシア代表選手については様々な情報を得ていると述べる一方で、現在は2026W杯予選D組でカメルーンを抑えて首位を守っているものの、マレーシア代表戦は決して易しい試合にはならないだろうとも話しています。

一方、今回初代表入りとなる若い選手も数名いることを明らかにしたブビスタ監督は、人口が52万人ほどの小国カーボベルデでは、さまざまな試合を行なって多くの経験を選手に積ませることが欠かせないと話し、5月29日、そして非公開で行われる6月3日の試合は選手に経験を積ませることができる貴重な機会となると述べています。

マレーシア代表は5月29日にカーボベルデ代表と対戦したのち、6月3日に同じ相手と今度は非公開試合を行い、6月10日のベトナム代表戦に臨みます。

マンUはアセアンオールスターズに惜敗

ポストシーズンツアーでアジアを訪れている英国1部プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドは5月28日にクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場でアセアンオールスターズと対戦し、0-1で敗れています。

アセアンオールスターズの最初のチャンスは16分でした。来季1部スーパーリーグ昇格を果たしたマラッカFCへの加入が噂されるフィリピン代表のアマニ・アギナルド(タイ1部ラヨーンFC)がシュートを放ちますが、バーの上を超えてきます。一方、マンUモモとイングランド代表のハリー・マグワイアがヘディングシュートを放つも、タイ代表GKパティワット・カマイ(タイ1部バンコク・ユナイテッド)がこれをセーブします。

その直後にはこの試合で最も歓声を浴びることが多かったマンUのGKアンドレ・オナナがフィリピン代表のサンドロ・レイエス(ドイツ4部FCギュータースロー)の近距離からのシュートを防ぎ、スタジアムが大盛り上がりを見せました。

前半を0-0で折り返した試合は、後半に入るとルベン・アモリム監督がキャプテンのブルーノ・フェルナンデス、アレハンドロ・ガルナチョ、アマド・ディアロを投入して先制点を狙います。しかし、アセアンオールスターズはカウンターから、オーストラリア代表エイドリアン・セゲチッチ(オーストラリア1部シドニーFC)から右サイドのマウン・マウン・ルウィンと繋いだボールを落ち着いて流し込んで、71分にリードを奪いました。

このゴールで7万を超える観客は盛り上がり、マンUもギアを上げますが、最後まで粘り強くプレーしたアセアンオールスターズが逃げ切っています。

試合前には先発イレブンと握手を交わしたマレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、試合後もピッチに降りて、自身がファンと公言しているマンチェスター・ユナイテッドを破ったアセアンオールスターズのキャプテンを務めたマレーシア代表のセルヒオ・アグエロ(もちろんマンCのアグエロとは別人物)とともに勝利を祝っていました。ちなみにこのアグエロ選手について、アモリム監督は試合後に最も印象に残った選手に挙げていました。


試合後はブーイングも聞こえましたが、マンUにとっては、5月25日のリーグ最終戦から休む間もなく長時間の移動を強いられ26日の夜にはマレーシア入りし、さらにこの試合の後には香港へ移動して香港代表と対戦するなどポストシーズンツアーというには過酷だったのも事実です。一方のアセアンオールスターも、6月2日から10日かけてのFIFAデイズで2027アジア杯予選が控えており、各国代表の主力はこの試合に出場しておらず、「オールスターズ」というにはやや寂しいメンバー構成でした。

5月28日のニュース<br>・ベトナム戦に臨むマレーシア代表にスペイン出身のパルメロは正式合流もアルゼンチン出身のホルガドの合流は未定<br>・FIFAデイズでマレーシアと対戦するカーボベルデがメンバー36名を発表-スランゴールでプレーするFWも招集<br>・マレーシア代表はCBタンがケガで離脱-ベトナム戦も出場不可に

クアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で行われるマンチェスター・ユナイテッド対アセアンオールスターズ戦を控え、地元のスポーツメディアはこの試合に関する報道一色ですが、同じクアラルンプールでは東南アジア諸国連合(ASEAN)の2025年の議長国がマレーシアであることから、5月26日よりASEAN首脳会議が始まっています。ASEAN首脳会議と言っても、サウジアラビア、クウェート、カタールなどペルシャ湾岸6カ国で作る湾岸協力会議(GCC)や中国首脳との会談なども行われ、会場のクアラルンプール市内はあちこちで交通規制が敷かれており、私も含めて市民はこの期間中は不便な生活を強いられています。

そんなASEAN首脳会議が開催される中、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相がベトナムのファム・ミン・チン首相にサッカーの話題を振ったことが報じられています。マレーシア代表はベトナム代表との試合は現在5連敗中と分が悪いのですが、6月10日にクアラルンプールで開催される2027アジア杯予選、マレーシア代表対ベトナム代表の試合を前に、アンワル首相は今回のマレーシア代表には注意するよう、冗談まじりに警告したということです。「ファン首相には、今回の対戦に向けて我々は本当に全力を尽くして準備しているので、あまり自信過剰にならないように伝えた。ベトナムは非常に強いチームで、マレーシアにとっては今回の試合も厳しい試合になるだろうが、現在のチームは情熱と粘り強さに満ちている。」と自信をのぞかせる発言をしたアンワル首相は、試合に勝った場合はチン首相に電話し、負けたら電話せずそのまま寝るとチン首相に話してメディアの笑いを誘ったということです。

ベトナム戦に臨むマレーシア代表にスペイン出身のパルメロは正式合流もアルゼンチン出身のホルガドの合流は未定

6月10日のAFCアジア杯2027年大会3次予選ベトナム代表戦に向けた合宿中のマレーシア代表には、スペイン生まれのガブリエル・パルメロ選手が参加しています。23歳の左SBのパルメロ選手はスペイン1部のUDラス・パルマスのユースチームやBチームを経て、現在、4部のCDテネリフェBにローン移籍中です。パルメロ選手は今年3月のアジア杯予選ネパール代表戦前の代表合宿にも参加していましたが、このときはまだ帰化手続きが終了しておらず、合宿だけの参加となっていました。

その一方で、コロンビア1部のアメリカ・デ・カリに所属するFWロドリゴ・ホルガドが6月1日に行われる南米サッカー協会(CONMELBOL)が主催するクラブチームによる国際大会、コパ・スダメリカーナのグループステージ、ホームでのラシン・クラブ・デ・モンテビデオ(ウルグアイ)戦の出場メンバーに入っていることが明らかになっています。

マレーシア代表のピーター・クラモフスキー監督がアルゼンチン出身のホルガド選手のマレーシア代表入りを認め、、所属するアメリカ・デ・カリのホルヘ・ダ・シルヴァ監督もクラブに代表招集の知らせが来たことを認めていますが、代表入りに必要な手続きが全て済んでいるかどうかはわからないと述べる一方で、代表に招集される場合にはクラブや監督がそれを止めることはできないとも話しています。

コロンビアでの6月1日の試合に出場した場合、6月3日に非公開で行われるカーボベルデ代表との国際親善試合に出場できるのかどうかが気になります。もしカーボベルデとの試合に間に合わなければ、6月10日のAFCアジアカップ2027年大会3次予選がいきなり代表デビュー本番となりますが、今予選では絶対に負けられないベトナム代表が相手なだけに、クラモフスキー監督も難しい判断を迫られそうです。

FIFAデイズでマレーシアと対戦するカーボベルデがメンバー36名を発表-スランゴールでプレーするFWも招集

今年最初のFIFA国際マッチカレンダー(FIFAデイズ)でマレーシア代表は5月29日にアフリカのカーボベルデ代表と対戦します。この試合に先立ちカーボベルデサッカー連盟は5月29日と非公開で行われる6月3日の両試合のために招集された36名のリストを発表しています。

直近のFIFAランキングでは、6月10日にアジアカップ2027年大会予選で対戦するベトナム代表(109位)よりも上の72位のカーボベルデ代表には、セリエAのエラス・ヴェローナFCでプレーする24歳のFWダイロン・リブラメントや、オランダ1部PECズヴォレでプレーするMFジャミロ・モンテイロらが含まれる一方で、当初はメンバーに含まれていたラ・リガ、ビジャレアルのDFローガン・コスタがメンバー発表後のセビージャ戦で負傷したということで、今回の遠征メンバーから外れました。また2020年1月からカーボベルデ代表の監督を務めるブビスタことペドロ・レイトン・ブリト監督は、スランゴールFCでプレーし、今季チームトップタイの10ゴールを挙げたFWアルヴィン・フォルテス、そして同じ東南アジア組でインドネシア1部PSMマカッサルのCBユラン・フェルナンデスも今回の36名のメンバーに招集しています。

マレーシア代表はCBタンがケガで離脱-ベトナム戦も出場不可に

スポーツ専門サイトのアストロアリーナは、マレーシア代表合宿に参加中のCBドミニク・タンが合宿中に鼠径部を負傷したため、カーボベルデ代表との2試合、そして6月10日のベトナム代表戦も出場を見送ったと報じています。。

サバFCでプレーするタン選手は、2日目のトレーニングの後、戦列を離れなければならなかったと伝えられる一方で、現在はチームのハイパフォーマンス・スポーツ医学部長のクレイグ・ダンカン医師のリハビルプログラムに沿って回復に勤めているということです。

スランゴールはジョホールとの「マレーシアのパトリック・ヴィエラ」の争奪戦に敗れたか

今シーズン文字通り彗星のように現れたスリ・パハンFCのMFイブラヒム・マヌシは、そのプレースタイルや風貌から英国1部のアーセナルFCやフランス代表でも活躍した名選手に因んで「マレーシアのパトリック・ヴィエラ」などとも呼ばれるなど、多くの注目を集めました。今シーズン最終戦となったマレーシアカップ決勝でも、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)を相手に中盤の攻守を豊富な運動量で担い、国内三冠の王者の手を焼かせました。6月10日のAFCアジア杯2027年大会3次予選のベトナム代表戦では代表合宿に呼ばれてないないのは謎ですが、このイブラヒム選手の来季所属先についても謎が深まっています。

マレーシアカップ決勝後にスリ・パハンFCのオーナーで、パハン州王子のトゥンク・アブドル・ラーマン・イブニ・スルタン・ハジ・アフマド・シャー殿下が、来季についてはクラブから手を引くと宣言したころから、多くの選手が放出されることが予想されています。このイブラヒム選手もその1人で、その去就が注目されていますが、当初は中盤の強化を望むスランゴールFC入りが噂されていました。

しかし、ここ数日はその雲行きが怪しくなり、多くの国内若手有力選手と同様にこの23歳のイブラヒム選手も方向転換してJDT入りが濃厚という報道が出始めています。それどころか、一部のメディアはイブラヒム選手はすでに新たな移籍先となるJDTと契約済みであるとも伝えています。

6月10日のベトナム代表戦がクアラルンプールで行われる中、5月18日から始まっている代表合宿が400キロ以上離れたジョホール・バルで行っているのは、兎にも角にもその練習環境が充実しているからに他なりません。そんな環境を提供しているのがJDTで、JDTの充実した練習施設を見れば誰でもそこでプレーしたくなると言われています。さらに選手の待遇も良いことで知られるJDTに誘われたのであれば、今季が初めてフルシーズンの出場となったイブラヒム選手もスランゴールFCではなくJDTを選んでしまったのかも知れません。

5月27日のニュース<br>・マンUと対戦のアセアンオールスターズはインドネシア選手不在で急遽オーストラリアから4選手が参加<br>・東南アジア選手権はスポンサー変更で「三菱電機カップ」から「現代カップ」へ<br>・1921年(大正10年)に創設されたペラFCが運営資金不足を理由に解散<br>・ペラ州サッカー協会がチームを新たに編成して3部リーグに参戦か<br>・クダFCオーナーは給料未払いがライセンス不交付の原因と認める

マンUと対戦のアセアンオールスターズはインドネシア選手不在で急遽オーストラリアから4選手が参加

5月28日に行われるアセアンオールスターズを前に、マンチェスター・ユナイテッドが5月26日にマレーシア入りしています。ルベン・アモリム監督以下32名は、東南アジア各国から選抜された選手たちで構成されたチームと対戦します。

しかし、この試合に出場予定だったタイ代表MFピーラドル・チャムラツァミーとインドネシア代表DFアスナウィ・マンクアラム(いずれもタイ1部ポートFC)の出場辞退が直前に発表されています。ピーラドル選手は夫人の出産に立ち会うため、またアスナウィ選手は現在、バリ島で行われている2026W杯予選に向けたインドネシア代表合宿からの離脱をパトリック・クライファート監督が認めなかったからだと報じられています。また、インドネシア1部リーグ2連覇を果たしたプルシブ・バンドンに所属していた(現在は対談)ムハマド・フェラーリも当初の出場予定が取り消されており、アセアンオールスターズはインドネシア出身選手不在となってしまいました。

その代わりということかどうかは分かりませんが、急遽、DFハリソン・デルブリッジ(韓国1部仁川ユナイテッド)、FWエイドリアン・セゲチッチ(オーストラリア1部シドニーFC)、FWヤヤ・デュクリー(アデレード・ユナイテッド)、DFキーリー・アダムソン(マッカーサーFC)のオーストラリア出身4選手がアセアンオールスターズに合流することが発表されています。


オーストラリアサッカー連盟「フットボール・オーストラリア」は実は東南アジアサッカー連盟に加盟しているので、アセアンオールスターズに加わること自体は間違いではないのですが、ここに来て突然、オーストラリア出身選手が合流するのは数合わせというか、なんというか…。

東南アジア選手権はスポンサー変更で「三菱電機カップ」から「現代カップ」へ

東南アジア王者を決めるASEANチャンピオンシップ(旧AFFチャンピオンシップ)の次回大会(2026年大会)のスポンサーが韓国の現代自動車となることを東南アジアサッカー連盟(AFF)が発表しています。

2022年の第14回大会と2024年第15回大会の過去2大会は三菱電機が、また2008年の第8回大会から2020年の第13回大会まではスズキ自動車がスポンサーとなり、それぞれ「三菱電機カップ」、「スズキカップ」の愛称で親しまれてきました。

1996年に第1回大会が開かれたこの大会は、シンガポールのタイガービールがスポンサーとなり、2004年の第6回大会までは「タイガーカップ」と呼ばれたこともありました。

1921年(大正10年)に創設されたクラブが運営資金不足を理由に解散を発表

その前身が1921年(大正10年)に創設されたペラFCがクラブの解散を正式に発表しています。5月26日の夜に発表された公式声明では、手元に残された資金は外国籍選手の帰国費用を支払った後、選手や監督、コーチを含めたスタッフ全員に分配されるということです。

「全ての選手やスタッフには、ペラFCが来季はどのレベルのリーグにも参加しないことを通告した。これにより選手やスタッフは他のクラブと自由に契約交渉を行うことができる。」といった内容が書かれた声明には、前経営陣による負債800万リンギ(およそ2億7000万円)を抱えてスタートした現在の経営陣は、年間1000万リンギ(およそ3億4000万円)をクラブの運営に投入し、その全てがU18、U21、U23そしてトップチームの選手やスタッフ、そして事務方の職員の給料にのみ使われたこと、そして過去3シーズンで総額4000万リンギ(およそ13億5000万円)が投入されたが、残念ながら現在は手元に現金がほとんど残っていないことが説明されています。

また現経営陣はクラブが所有するトレーニング器具や売れ残っているグッズなどの管理をしている他、スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)からの分配金の支給を待っており、この分配金で未払い給料などについてできる限り支払いたいとしています。

またこの声明の最後では、選手やスタッフへの感謝とともに、受け入れ難い事実ではあるものの、クラブを解散せざるを得ない状況への理解を求めています。


5月22日に第一審機関(FIB)が来季2025/26シーズンの1部スーパーリーグ参加に必要なクラブライセンスが交付されたクラブを発表した際に、このペラFCはライセンス交付が受けられなかったことを発表していましたが、それ以降、ペラFCからは何も声明が発表されていませんでした。一部では下部リーグからの再スタートなども噂されていましたが、今回の声明によって、100年を超える歴史を持つクラブの解散が決定しています。

負債の額が巨大ではあるものの、長い伝統を持つクラブをこのように解散させてしまうのであれば、一部のサポーターが唱えるほどにはサッカーはこの国の文化ではなく、単なる娯楽の一環だったのかと残念な気持ちになります。スズ鉱脈が豊富なペラ州は、それに目をつけた英国が19世紀にマレー半島の植民地化を始めた地域です。英国はそれまでマレー半島にはなかった郵便や鉄道、博物館や動物園などを持ち込みましたが、サッカーもその一つでした。ペラFCの前身となったペラアマチュアサッカー協会(PAFA)は、マレー半島では最古のサッカー協会で、同じマレー半島西海岸側のペナンやスランゴール、ヌグリスンビランがこれに続く形でサッカー協会を設立しています。

国内スポーツ人気No. 1のサッカーは政治的にも利用されてきた歴史があり、1957年のマラヤ連邦独立後は各州の州首相(日本で言えば知事にあたります)が州サッカー協会(州FA)の会長を兼務し、この州FAが運営するプロクラブ(マレーシアサッカーの資料を見ると、FAがついたクラブ名がありますが、これは州サッカー協会、州FAが運営するプロクラブだったためです。)に州政府の予算から資金提供することでチームを強化しました。おらがチームを優勝させた州首相は、選挙の際には州民からは大変な支持が集まりますが、その一方で政権交代が起これば、州サッカー協会の方針が一変し、監督やコーチが総入れ替えとなる、といったことも常態化していました。

そういった状況を変革しようとしたのが2019年にマレーシアサッカー協会が導入した「FAからFCへ」というクラブの民営化方針でした。州政府による資金提供に頼る運営ではなく、クラブ運営会社を設立して企業や個人をオーナーとする運営へと変革させるのがこの民営化方針ですが、協会の会長は州首相、役員も州議会議員が兼務し、クラブは公金頼みで運営していたところにこの変革は急すぎました。資金が足りなければ州予算を回すという無謀な経営が長年続いてきた中では、プロの経営者もいなければ、スポンサー獲得のノウハウすらない上、新型コロナ禍により、各州政府がクラブ運営資金をコロナ対策に回す状況などあり、多くのクラブがこの時期、資金難に陥りました。さらにコロナ禍でリーグ戦は強行するも、試合は無観客試合となったことで、費用はかかるが入場料収入すら入ってこない状況では、多くのクラブが財務状況を悪化させ、それまでも度々起こっていた給料未払い問題が複数のクラブで頻発するようになっていきました。

今回のペラFCの解散は、こういった様々な経緯の結果でもありますが、これを契機に溜まった膿を全て出し切ることができるのか、それともこのままジョホールやスランゴールといった資金に問題のない幾つかのクラブだけが生き残るのか。マレーシアサッカーは転換期に来ています。

ペラ州サッカー協会がチームを新たに編成して3部リーグに参戦か

ペラFCがクラブの解散を発表した5月26日と同じ日の遅い時間には、ペラ州サッカー協会(PAFA)が声明を発表し、PAFAが新たなチームを編成して来季2025/26シーズンの3部のA1セミプロリーグに参戦する計画があることを明らかにしています。

PAFAが公式SNSに行った投稿では、マレーシアの国体にあたるマレーシアゲーム(Sukma)の2024年大会に出場したU21チームのメンバーを中心にチームを編成し、将来のプレジデントカップ(U21チームのリーグ)やユースカップ(U18チームのリーグ)参加なども視野に入れて、ペラFCの再興を目指すものにしていく予定だということです。

「チーム編成はすでに始まっており、アマチュアフットボールリーグ(AFL)が主催するリーグに参戦を予定している。また2026年をめどにプレジデントカップやユースカップにも参戦を考えている。今回のプログラムは、ペラ州のサアラニ・モハマド州首相と州政府の支援(!)によるもので、PAFAが行う州内のサッカー振興を継続的に支援してくれていることにも合わせて感謝の意を表明したい。」とも声明では述べられています。

この声明の最後には「われわれ(PAFA)は奇跡を起こすことは約束できないが、(週内にプロサッカークラブがなくなったという)異常事態を解決しようという決意は持っている。州内のサポーターには協力して、ペラFC再興のための希望を持ってもらいたい。」と結ばれています。


結局は州政府の資金頼りである点や、ペラFCではなく全く実績がない新たなクラブが5部や4部などもある下部リーグを一気に飛び越えて、実質2部リーグにあたる3部A1セミプロリーグに参入を目論んでいる点など、ツッコミどころは満載ですがそこはマレーシア。2022年にやはり資金不足や未払い給料問題などでマラッカ・ユナイテッドが解散した時も、その負債は無視して新たにマラッカFCというクラブを新設して、やはりシラっとA1セミプロリーグに参入した既成事実もあるだけに、今後は困ったら解散して、新たにクラブを作り、問題解決は後回しという手法が流行るかもしれません。

クダFCオーナーは給料未払いがライセンス不交付の原因と認める

前述のペラFC同様、来季20255/26のクラブライセンスの交付を受けられなかったのがクダ・ダルル・アマンFCでした。2006/07と2007/08シーズンに国内クラブとして初めて2季連続の国内三冠を達成した名門の凋落は、ここ数年間に渡り起こっていた給料未払い問題などで明らかでしたが、いざスーパーリーグからその姿が見られなくなるとなると残念でしかありません。

そのクダ・ダルル・アマンFC(クダFC)は、第一審機関(FIB)によるライセンス不交付発表後初めて声明を発表し、クラブライセンス申請書類提出期限までに運営資金に関する規定違反状態を改善できなかったことが、ライセンス不交付の理由であったことを明らかにしています。

クダFCのオーナーの1人で主要株主であるダウド・バカル氏は、未払いとなっている給料問題が未解決であり、現在もその支払い方法について支払い対象者からの了承を得ていないことを明らかにし、これがライセンス交付に至らなかった主要原因の一つであるとして、サポーターやスポンサー、さらには選手やスタッフに謝罪したいと述べてます。

ダウド氏は、現在がクダFCの「冬眠」期間だとして、財務基盤の強化などの財政状況の改善などを行って、クラブ再建に備えたいと述べてます。さらに今回のライセンス不交付がクラブの終焉ではなく、クラブ運営を強化するための機会と考えていると述べたダウド氏は、今後もサポーターの指示を求めるとともにクラブの再興を約束しています。

5月26日のニュース<br>・マンU対アセアンオールスターズの試合にマレーシアから出場する選手5名が発表<br>・国内無敗もACLで結果を出せなかったジョホール監督が退団-後任は英国プレミアリーグ監督経験者か<br>・スーパーリーグ不参加決定のペラとクダでも無条件での下部リーグ受け入れはしない-AFL会長

来月のアジアカップ2027年大会3次予選のベトナム代表戦に向けてマレー半島南端のジョホール州で合宿中のマレーシア代表をアンワル・イブラヒム首相が訪問し、自身のSNSには「全てのマレーシア国民は代表チームに揺るぎない支援を送るだろう」と激励の言葉を添えた投稿を行っています。6月10日にホームのブキ・ジャリル国立競技場で行われるベトナム代表戦は、両チームが属する予選F組の首位攻防戦ですが、対ベトナム代表戦ではマレーシア代表は現在5連敗中、しかもこの5試合では1得点10失点と明らかに分が悪い相手です。この試合に負ければアジアカップ2大会連続出場が遠のくだけに、代表強化に公金1500万リンギ(およそ5億円)を注ぎ込んでいるマレーシア政府のトップとしてアンワル首相も気が気でないかもしれません。

マンU対アセアンオールスターズの試合にマレーシアから出場する選手5名が発表

今週5月28日に行われるマンチェスター・ユナイテッド対アセアンオールスターズ戦にマレーシアから出場する5名の選手が発表になっています。

翌日5月29日には前述のベトナム代表戦に向けてのウォームアップとなる国際親善試合マレーシア代表対カーボベルデ代表戦があるため、当然ながら主力代表選手は出場せず、今回発表になったのは代表合宿参加中のGKハジク・ナズリ(ペラFC)、DFアザム・アズミ(トレンガヌFC)、DFデクラン・ランバート(クアラルンプールシティFC)、DFアディブ・ラオプ(ペナンFC)、そしてアルゼンチン出身の帰化選手MFセルヒオ・アグエロ(スリ・パハンFC)の5名です。この内、ハジク選手は代表合宿参加メンバーで、アザム、アディブ、アグエロの3選手は代表合宿のサブメンバーとなっています。またハジク、アザム、ランバートの3選手はジョホール・ダルル・タジムFCからローン移籍中の選手です。

2009年のプレシーズンツアー以来のマレーシア来訪となるマンチェスター・ユナイテッドは5月21日のUEFAヨーロッパリーグ決勝で同じプレミアリーグのトットナム・ホットスパーズに惜敗したばかりですが、今回のツアーにはブルーノ・フェルナンデス、カゼミーロ、アレハンドロ・ガルナチョ、マタイス・デ・リスト、ラスムス・ホイルンドら主力が帯同すると報じられています。このマンチェスター・ユナイテッドと対戦するアセアン・オールスターズは、東南アジア選手権2024年大会優勝のベトナム代表を率いるキム・サンシク監督が指揮を取流ことが発表されています。

マレーシアからは当初、いずれもマレーシア代表でプレーするDFドミニク・タン、MFスチュアート・ウィルキン(いずれもサバFC)が参加すると発表されましたが、両選手は今オフでの国外移籍が噂されており、最終的には上記の5選手に落ち着いたという経緯があります。他国でも当初は出場が発表されていたベトナム代表のエース、グエン・クアン・ハイが過密日程を理由に出場を辞退している他、タイ代表のニコラス・ミケルソンは所属するデンマーク1部オデンセBKが招集を拒否した結果、出場取りやめとなっています。


この親善試合が5月28日にマレーシア代表のホーム、ブキ・ジャリル国立競技場で行われ、翌日5月29日のマレーシア代表対カーボベルデ代表戦が収容人員1万8000人のKLフットボールスタジアムで行われるのは個人的には釈然としませんが、観客動員力という点ではマンチェスター・ユナイテッドの方が上なのは事実ですので、致し方ありません。なおマンチェスター・ユナイテッド戦の方は一番安い席が50リンギ(およそ1700円)、一番高い席が1500リンギ(およそ5万円)なのに対し、マレーシア代表対カーボベルデ代表戦は一律40リンギ(およそ1400円)となっています。

国内無敗もACLで結果を出せなかったジョホール監督が退団-後任は英国プレミアリーグ監督経験者か

5月23日にジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は公式SNS上で過去3シーズンに渡り監督を務めたエクトル・ビドリオ監督の退任を発表しています。2022年シーズンに監督に就任したベネズエラ出身のビドリオ監督は、途中テクニカル・ディレクターなども務めながら、2022シーズンと2024/25シーズンにはリーグ戦、FAカップ、マレーシアカップの国内三冠を達成しています。しかも監督在籍時には、JDTは国内で無敗と無双し続けました。しかし国外に目を転じると、2022年のACL、そして今季のACLエリートでは、いずれもグループステージを突破しながら、ノックアウトステージ1回戦の壁に跳ね返された結果、今回、その責任を取る形で退任します。英字紙スターは、このビドリオ監督の後任として、スペイン出身で44歳のシスコ・ムニョス氏の名前が上がっていると報じています。

JDTのCEOに就任したやはりスペイン出身のルイス・ガルシア氏とも近いことからも監督就任が有力視されているムニョス氏は、現役時代はバレンシアやレアル・ベティスなどでウィングとして活躍しました。晩年にプレーしたジョージアのディナモ・トビリシで指導者生活を始めたムニョス氏は、2020年に前年のコーチから監督に昇格するとその年のリーグ優勝を果たしました。翌2021年には英国2部のワトフォードで監督に就任するとリーグ2位の成績を残し、クラブを1部プレミアリーグへ昇格させました。しかし、翌年2021/22シーズンのプレミアリーグでは開幕からの7試合を2勝1分4敗として14位に沈むと解任されてしまいました。その後の2021/22シーズンはスペイン2部のSDウエスカで9勝12分9敗の成績で退団し、2022/23シーズンはキプロス1部のアノルトシス・ファマグスタで3勝2分7敗としました。、2023/24シーズンは再び英国に戻り、3部のシェフィールド・ウエンズデーで監督となりますが、10試合で0勝2分8敗の最下位となると解任され、スロバキア1部リーグのドゥナイスカー・ストレダで2023年11月監督に就任しました。当初は2023/24シーズン終了までの契約でしたが、就任10試合で6勝3分1敗の成績を上げると、契約が2年間延長されました。しかし今季2024/25シーズンは開幕からの15試合を6勝4分5敗とすると、2026年6月までの契約を解除されて昨年11月に退団しています。

英字紙スターは、ムニョス氏がスペイン国内メディアとのインタビューで自信を冒険好きと評し、さまざまな国のサッカーを見たり、新しい環境に挑戦することも好きだと述べたことがJDT監督就任を示唆する発言ではないかと報じています。

またJDTにはスペイン出身のFWサム・カスティジェホ、MFフアン・ムニョス、DFオスカル・アリバス(登録はフィリピン=東南アジア枠)、DFエディ・イスラフィロフ(登録はアゼルバイジャン)らがいることからチームに入って行きやすく、監督就任の際には同胞のセットピースコーチのロベルト・ケスト、アナリストのトニー・ヴァジェの両氏を連れてくるだろうと予想しています。

スーパーリーグ不参加決定のペラとクダでも無条件での下部リーグ受け入れはしない-AFL会長

来季2025/26シーズンのマレーシアスーパーリーグ参加に必要な国内クラブライセンスが交付されなかったケダ・ダルル・アマン(KDA)FCとペラFCは、代わりに3部にあたるA1セミプロリーグへ参戦する可能性がありますが、リーグやカップ戦で優勝経験のある両名門クラブであっても、このA1セミプロリーグへ無条件で参加することはできないようです。

A1セミプロリーグを運営するアマチュアフットボールリーグ(AFL)のユソフ・マハディ会長は、両クラブとも依然としてAFLの規定の対象であり、登録選手が20人以上いることなど、リーグ参加の基本基準を満たさなければならないと述べていると、マレー語紙ブリタハリアンが報じています。。

その一方でユソフAFL会長は、両クラブが財政問題に直面していることを理解した上で、AFLが求める財政的義務を果たすことができれば、リーグ参加については特に問題はないと述べた。

「選手や監督、コーチに給与を払い、チームをうまく運営できれば、両クラブともA1リーグへの参加に何の障害もない」と語ったユソフ会長は、「A1セミプロリーグの運営コストはスーパーリーグでのプレーに比べてそれほど高くなく、300万から400万リンギ(およそ1億から1億4000万円)あれば、シーズンを通してチームを運営するには十分である」と述べています。

リーグ戦、FAカップ、マレーシアカップの国内三冠を初めて2季連続で達成したクダ・ダルル・アマンFC、そして創設100年を超えるペラFCの両名門クラブは、クラブ経営状況に問題ありとして第一審機関(FIB)が今季の国内クラブライセンス交付を行わないことを発表された直後に、ユソフAFL会長は、両クラブがA1セミプロリーグでプレーしながら、財政再建を続けていくことで、将来のスーパーリーグ復帰に向けた「生き残る」を図ることができると、A1セミプロリーグへの参入を歓迎する発言をしていました。

5月25日のニュース(2)<br>来季のリーグ規約が発表:秋春制以降により開幕は8月初旬・外国籍選手は1クラブ最大15名が登録可能、ピッチ上では同時7名の出場が可能に・ブルネイDPMM FCの正式参入が決定・ファイナンシャルフェアプレーを導入

マレーシア1部スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)が来季2025/26シーズンの規約を発表しています。主な変更点としては来季の開幕が8月初旬となること、外国籍選手登録の上限が15名となったこと、ブルネイのDPMM FCの参戦が正式発表されたこと、そしてクラブ収入に基づく給料の上限を決めるファイナンシャルフェアプレー(FFP)が正式に導入さることなどが挙げられます。

来季2025/26シーズンの開幕は8月初旬に決

AFCの秋春制導入に伴い、2025/26シーズンの開幕は8月初旬となることが発表されています。例年、開幕戦は英国のチャリティーシールド(現コミュニティーシールド)を模し、前年度のリーグ覇者とマレーシアカップ優勝チームが対戦するスンバンシーカップですが、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)がリーグ戦、マレーシアカップ、FAカップの国内三冠を達成しているため、2024/25シーズンに続き、JDTはリーグ2位のスランゴールFCが対戦します。

英国のチャリティーシールドと大きく異なるのは、この試合がリーグ戦の一環として行われ、さらにリーグチャンピオンのホームで行われること。昨年のスンバンシーカップもJDTとスランゴールFCの顔合わせとなりましたが、試合の5日前にスランゴールFCのファイサル・ハリムが酸攻撃を受け事件が起こりました。スランゴールFCは安全上の懸念を理由に試合の延期を求めましたが、MFLはこれを拒否。スランゴールFCは後見者でもあるスランゴール州スルタンの同意を得て出場を辞退した結果、MFLはJDTに勝点3を与えることを決定しています。

リーグ覇者とマレーシアカップ王者の対戦という試合の性格から、本家がウェンブリーアリーナで開催されるのと同様に、このスンバンシーカップもブキ・ジャリル国立競技場のような中立地で、しかもリーグ戦の一環ではなく単なるカップ戦として開催するべきだと思うのですが、主催するMFLはそうは考えていないようです。

トランスファーウィンドウは6月と来年1月オープン

年2回のトランスファーウィンドウ(移籍期間)は、1度目が開幕前の6月9日から8月31日まで、シーズン途中の2度目は2026年1月5日から2月1日となっています。

FAカップは8月、マレーシアカップは来年1月開催

FAカップは8月に予定されており、マレーシアカップとその敗者が出場するチャレンジカップはいずれも2026年1月に予定されています。マレーシアカップは昨年と同じであれば、1部スーパーリーグの14チームにおそらく3部A1セミプロリーグの2チームが加わった16チームで1回戦がスタートすることになりそうです。またFAカップはトップリーグ以外のカブリーグでプレーするのクラブに門戸が開かれる大会ですが、2024/25シーズンは16クラブと、前年2023年の20、2022年の34、2021年の59から毎年減少しています。国内サッカー人気の低迷が危ぶまれる中で、日本の天皇杯サッカーのようなアマチュアレベルから出場できる唯一の国内大会はサッカー振興という観点からも重要なので、是非とも出場チーム数の拡大を検討してもらいたいところです。

出場登録選手の半数に当たる最大15名の外国籍選手の登録が可能に

各クラブは登録選手の上限が今季2024/25シーズンの32名(ACLエリートに出場のJDTとACL2出場のスランゴールは例外措置で34名)から30名に減る一方で、外国籍選手枠についてはAFC大会出場の有無に関係なく何と15名まで登録できるようになりました。今季は各クラブの外国籍選手登録は最大9名、ACLエリートに出場したJDTとACL2に出場したスランゴールに限って12名となっていました。

ピッチ上では同時に7名の外国籍選手のプレーが可能に

ベンチ入り可能な外国籍選手数も今季の最大7名から8名となり、ピッチ上の外国籍選手数も今季の6名から東南アジア枠が1名増えて7名(無条件4名、アジア枠1名、東南アジア枠2名)が同時に出場することが可能になっています。

外国籍選手枠の増加により、これまで以上にクラブ格差が広がりそうです。このブログでも何度も取り上げているように多くのスーパーリーグクラブは給料未払い問題を抱えるなど運営資金の捻出に苦労しています。一方で、今季ACLエリートに出場したJDTとACL2に出場したスランゴールについてはそういった問題が起こっていないことから、15名に拡大した外国籍選手枠をフル活用するクラブがあるとすれば、おそらくこの2クラブしか考えられません。(後は可能性があるとすれば、世界屈指の産油国ブルネイからスーパーリーグに参加するDPMM FCでしょうか。)

ACLエリートやACL2での上位進出を目指すクラブにしてみれば、この外国籍枠拡大は大きなメリットですし、試合そのもののレベルアップやエンタメ性がますという利点はある位一方で、資金的にも苦しい中位から下位のクラブには全く関係ない話です。しかも既にJDTが圧倒的な強さを誇るスーパーリーグで、今後さらにクラブ間格差が広がれば、大味な試合が増え、リーグそのものに魅力がなくなってしまう恐れがあります。またピッチ上で同時に最大7名の外国籍選手がいるということはマレーシア人選手は4名飲みの出場となり、これが各選手の出場時間減少につながり、ひいては代表チーム教科にに及ぼす影響も少なくなさそうです。

    ブルネイのDPMM FCのスーパーリーグ参加が正式に発表で今季参加の全14クラブが決定

    MFLからはこれまで何の発表もなかったブルネイのクラブであるDPMM FCの今季スーパーリーグ参入についても正式に発表しています。2008年以来のマレーシアリーグ復帰となるDPMM FCの参戦は、FIFAによる「招待クラブ」との承認を受けたことで実現しています。この結果、2025/26シーズンのスーパーリーグは、ジョホール・ダルル・タジムFC、スランゴールFC、サバFC、クチンシティFC、トレンガヌFC、クアラルンプールシティFC、スリ・パハンFC、PDRM FC、ペナンFC、ヌグリスンビランFC、クランタン・ダルル・ナイムFCに加え、昇格組のマラッカFC、イミグレセン(入国管理局)FC、DPMM FCの14クラブに決定しています。ただし、クアラルンプールシティFC、PDRM FC、クランタン・ダルル・ナイムFCの3クラブについては条件付きでのクラブライセンス交付となっており、今月末までにクラブの財政状況についての詳細をライセンス交付を担う第一審期間(FIB)に提出することが求められています。これが行われない場合、この3つのクラブのクラブライセンス交付は取り消しとなり、今季のスーパーリーグ出場ができなくなります。

    ファイナンシャルフェアプレーの正式導入

    これまで導入が検討されてきたファイナンシャルフェアプレー(FFP)が導入されます。これにより、各クラブはFIBに提出した2025/25シーズンのクラブ運営予算額の80%が選手への給料支払いの上限となります。

    5月25日のニュース(1)<br>・ベトナム戦に向けたマレーシアの秘密兵器はコロンビアリーグのストライカー<br>・スランゴールFCは来季のチーム強化へ積極補強も<br>・6シーズン在籍も帰化選手になれなかったレゾヴィッチがトレンガヌFC退団<br>プルシスの1部残留を果たしたオン監督はマレーシア出身選手の獲得も視野

    5月21日の東南アジアクラブ選手権「ショッピーカップ」決勝2ndレグでは、タイの王者ブリーラム・ユナイテッドがベトナムのハノイ公安FCを通算成績5-5、PK戦3−2という大接戦の末に破り、ショッピーカップ初代王者に輝いています。そのブリーラム・ユナイテッドではシーズンを通して安定したプレーを見せたのが、マレーシア代表でもプレーするディオン・クールズです。ベルギー出身の父とマレーシア出身の母を持つクールズ選手はベルギーの年代別代表でもプレー経験がある選手ですが、、そのコールズ選手がJリーグのセレッソ大阪移籍が濃厚だとマレーシアやタイのメディアが報じています。マレーシア人選手として初めてJ1でプレーする選手となれるのでしょうか。

    ベトナム戦に向けたマレーシアの秘密兵器はコロンビアリーグのストライカー

    しかしよくこんな人材を地球の反対側から見つけてきたなぁ。

    6月10日のAFCアジアカップ2027年大会第3次予選でベトナム代表と対戦するマレーシア代表に強力な秘密兵器が加わりそうです。アルゼンチン出身で今季はコロンビア1部のアメリカ・デ・カリでプレーするFWロドリゴ・オルガドが、マレーシア人の血を引くとして「ハリマウ・マラヤ(マレーの虎)」の愛称を持つマレーシア代表に招集されたと国内外のメディアが報じています。

    直近の10試合で5勝3分2敗の成績を残しているマレーシア代表ですが、FW陣はブラジル出身のパウロ・ジョズエ(KLシティFC、代表通算25試合出場8ゴール)やアルゼンチン出身のセルヒオ・アグエロ(スリ・パハンFC17試合出場3ゴール)、コロンビア出身のロメル・モラレス(ジョホール・ダルル・タジムFC、同9試合2ゴール)、ら帰化選手たちに依存しています。そんな南米コネクションに新たに加わることが期待されているのがオルガド選手です。

    29歳のオルガド選手は2024年にアメリカ・デ・カリに移籍以来、44試合で17ゴールを挙げているFWですが、いずれも元々は所属クラブではMFだったものの代表チームの得点力不足からFWにコンバートされたジョズエ、モラエスの両選手、そしてやはり本来はMFであるアグエロ選手らとは違った、いわゆる「アウトアンドアウト」ストライカーならではプレーが6月の試合では見られるのではとの期待が高まります。


    スランゴールは来季のチーム強化へ積極補強も

    2シーズン連続で王者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)の後塵を拝することになったスランゴールFCは、FAカップでは決勝に進出するも同じJDTに1-6と惨敗し、マレーシアカップではまさかの1回戦敗退、そして8年ぶりとなったAFC主催大会出場もACL2ではグループステージ敗退と、2024/25シーズンは思うような結果を残すことができませんでした。そんなスランゴールFCが来季に向けて、国内外の選手を積極的に補強しそうだと英字紙スターが報じています。

    今季のメンバーからはキャプテンを務めたシンガポール代表のDFサフワン・バハルディンが契約を1年残して退団することが明らかになっている他、チーム最多の10ゴールを挙げたチリ出身のFWロニー・フェルナンデス、チーム最多先発出場を記録したベネズエラ出身のMFヨハンドリ・オロスコ、そしてヨルダン代表FWアリ・オルワンらがチームを去ることが発表されています。

    この記事の中でスランゴールFCのシャーリル・モクタル理事は、サフワン選手についてクラブとの関係は良好で、サフワン選手が「新たな挑戦」を求めていることから、退団を希望したと説明しており、現在はローン移籍先を探している最中だと説明しています。

    サフワン選手に代わるキャプテン候補としてはマレーシア代表MFノーア・ライネや同じく代表選手のFWファイサル・ハリムを挙げたシャーリル理事は、来月6月17日から始まる予定のプレーシーズンに向けて、喜熨斗勝史監督と来季に向けたチームの補強策について検討中とも話しています。

    「現在はヨーロッパ、南米、東南アジア、日本出身の数名の候補選手の名が上がっており、プレシーズン前には新加入の選手が確定できるだろう。」と話したシャーリル理事は具体的な名前は挙げなかったものの、SNS上では2023年シーズンにクダ・ダルル・アマンFCでプレーした経験もある元Jリーグ甲府のFWウィリアン・リラ、元ベネズエラ代表MFフアンピこと、フアン・パブロ・アニョル・アコスタ(現ギリシャ1部ヴォロスFC)のいずれも31歳の両選手の名前が挙がっています。

    また獲得を目論んでいたとされるインドネシア代表DFエリアノ・ラインデルス(オランダ1部PECズヴォレ)との交渉は破談となったものの、シャーリル理事はさらに東南アジアの「大物」獲得を続けていくと話していることもスターは報じています。

    6シーズン在籍も帰化選手になれなかったレゾヴィッチがトレンガヌFC退団

    2019年からトレンガヌFCに在籍してきたモンテネグロ出身のDFアルグジム・レゾヴィッチが自身のSNSで対談することを明らかにしています。33歳のレゾヴィッチ選手は190cmのセンターバックで2018年にPDRM FCに移籍してマレーシアリーグでプレーを始めると翌2019年からはトレンガヌFCに移籍しトップチームとセカンドチームのトレンガヌFC IIでプレーを続けてきました。

    トレンガヌ州の隣のパハン州出身のマレーシア人女性と結婚し、子供も生まれていたレゾヴィッチ選手は、マレーシアでのプレーが5年目を過ぎてからはマレーシア国籍取得を目指していることが報じられていました。しかし、今年3月の英字紙ニューストレイツタイムズの報道では、クラブが国籍取得の審査を行う内務省に積極的に働きかけ、マレーシアサッカー協会(FAM)からも推薦状を得ているものの、契約満了となる4月30日を前に国籍の取得はできていませんでした。

    退団を伝えるSNSへの投稿でレゾヴィッチ選手は、自身のキャリアの中で最も長く所属したクラブであるトレンガヌFCとチームメート、そしてサポーターへの感謝を伝えています。

    今季5位に終わったトレンガヌFCは、シーズン途中でトミスラフ・シュタインブリュックナー監督(現ベトナム1部タインホアFC監督)を解任し、バドルル・アフザン・ラザリを暫定監督に据えましたが、来季はこのバドルル暫定監督を正式監督として迎えることをすでに発表しており、バドルル監督の元でチーム再建の一環として大幅なメンバーの入れ替えを行うとされています。

    プルシスの1部残留を果たしたオン監督はマレーシア出身選手の獲得も視野

    マレーシアの隣、インドネシアの1部リーグ「リガ1」は昨日5月24日に最終第34節を終えて2024/25シーズンが終了しましたが、そのリガ1で2連覇を達成したのが、クアラルンプールシティFC前監督のボヤン・ホダック監督が指揮するプルシブ・バンドンでした。そして最終節にこのプルシブと対戦したのが、マレーシア出身でサバFC前監督のオン・キムスウィー監督率いるプルシス・ソロでした。マレーシア国内でも対戦経験のある両氏が舞台をインドネシアリーグに変えて対峙した結果は、プルシブがかつてJ2金沢やトレンガヌFCでもプレーしたダビ・アパレシド・ダ・シルバのゴールなどで一時は3点差をつけてリードするも、プルシスもMF山本奨選手のゴールなどで追い上げましたが、3-2と逃げ切ったプルシブがシーズン最終戦を勝利で飾っています。

    プルシブ・バンドンに敗れたペルシス・ソロですが、5月11日に行われたリーガ1第32節のPSBSビアク戦で2-0と勝利し、今季の1部残留を既に決めています。 このプルシブのオン監督はマレーシアでは代表監督やU23代表監督、またマレーシアサッカー協会(FAM)のテクニカルディレクターなどを歴任し、2011年の東南アジア競技大会通称シーゲームズではマレーシアを優勝に導いています。このオン監督はマレーシアスーパーリーグの2024/25シーズン途中の昨年11月にリーグ3位にいたサバFCからの契約延長オファーを断り、当時降格圏の16位にいたプルシスの監督に就任しました。

    好成績を残しているクラブから2部降格危機に直面するクラブへの転身したオン監督でしたが、プルシスは、オン監督就任以降の7試合では0勝3分4敗の成績で、一時は最下位の18位に転落してしまいました。しかし年が明けた今年1月20日の第19節PSISスマラン戦でオン監督が初勝利を挙げると、チームもそこからの15試合を7勝5分3敗とし、第25節で15位に浮上してついに降格圏を脱すると、その後は2度と降格圏内に落ちることなく最終成績を14位とし、オン監督は課せられていた1部残留というミッションを果たしました。

    今季最終戦となったプルシブ戦を前にオン監督はインドネシアのメディアとのインタビューで、「ペルシス・ソロに来た時の目標は明確で、降格を回避することができたことは喜ばしい。プルシスがリガ1で6か月近く降格争いを続けなければならなかったことが、この国のサッカーリーグがいかに競争が厳しいかを示しているだろう。」と話しています。さらに、負けても立ち上がる先進的な強さを持つ選手たちに加え、クダ・ダルル・アマンFCから移籍したCBクレイトンをはじめ、MFラウタロ・ベレッジャ、FWジョン・クレイ、DFジョーディ・トゥトゥアリマのシーズン途中に加入した4選手の影響も大きかったとオン監督は話したということです。

    プルシスとの契約は今月末で切れることから、オン監督はクラブ側との契約延長についての話し合いを始めたいしていますが、個人的には来季もプルシスで指揮を取りたいと話し、クラブの予算次第ではあるもののマレーシア出身選手数名との契約も視野に入れているとも話しています。