2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第2節の結果とハイライト映像(2)<br>・ジョホールが開幕2連勝で早くも単独首位に<br>・スランゴールとPDRMは今季初勝利を挙げる

5月17日から19日にかけて、今季2024/25シーズンのマレーシアスーパーリーグ(MSL)第2節が開催されています。
 なお今季のMSLは13チームで編成されており、第2節はKLシティFCの試合はありません。

MSL2024/25第2節
2024年5月18日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジムFC 3-1 ヌグリスンビランFC
⚽️ジョホール:ベルグソン・ダ・シルヴァ2(12分、17分)、ジョルディ・アマト(71分)
⚽️ヌグリスンビラン:ハイン・テット・アウン(28分)
🟨ジョホール(1)、🟨ヌグリスンビラン(4)
MOM:ベルグソン・ダ・シルヴァ(ジョホール・ダルル・タジムFC)

 開幕戦はスランゴールFCが対戦を辞退したために不戦勝となり、この試合が今季初のリーグ戦となったジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)はエースのベルグソン・ダ・シルヴァの2発などで快勝しています。新戦力のシリア代表MFジャリル・エリアスも加わり、選手層がさらに厚くなったJDTは、シャルル・サアド、エンドリック・ドス・サントス、モハマドゥ・スマレらマレーシア代表にも出番がありませんでした。
 またこの試合ではマレーシアの至宝(敢えてこう呼びたい)アリフ・アイマンがベンチ外で、右ウィングにはオスカル・アリバスが入りました。私の記憶では、アリバス選手はJDTでは左サイドでのプレーしか見たことがなかったので、この起用は意外でしたが、ハイライト映像を見る限りでは問題なくプレーしたようです。一方のアリフ選手は試合後の会見でJDTのエクトル・ビドリオ監督がケガのため欠場したと説明していますが、ケガの程度については言及していないようです。なおこの試合では新戦力のフランシスコ・ジェラウデス、ニコラオ・カルドーソもやはりベンチ外でした。
 一方のヌグリスンビランFCはゴール前で粘った佐々木匠選手とJDTのDFが交錯してこぼれたボールをハイン・テット・アウンが決めて一時は1点差まで迫り、その他にも佐々木選手が起点で好機を作っていたようです。プレシーズンマッチでヌグリスンビランFCの試合を見た際には、佐々木選手と他の選手の連携が上手くいっていない場面が見られましたが、この試合のハイライト映像を見た限りでは、その点は改善されている印象でした。
 ヌグリスンビランFCの佐々木匠選手は先発して90+3分に交代しています。

この試合のハイライト映像。JDTの公式YouTubeチャンネルJDTTVより。

MSL2024/25第2節
2024年5月19日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴールFC 1-0 クダ・ダルル・アマンFC
⚽️スランゴール:アリフ・ハイカル(85分)
🟨スランゴール(1)、🟨クダ(2)
MOM:シャルール・ナジーム(スランゴールFC)

 今節最も注目のカードは、こう着状態が続き、このまま引き分けかと思われた試合終盤に、途中出場のアリフ・ハイカルが値千金のゴールを決めて、スランゴールFCがクダ・ダルル・アマンFC(クダFC)を破り今季初勝利を挙げています。
 初戦のJDT戦を「安全上の理由」で辞退し、0−3の不戦敗でスタートしたスランゴールFCは、ホーム開幕戦となったこの試合は、酸をかけられて現在も入院中のファイサル・ハリムのためにも勝たねばならない試合でした。サポーターも、ファイサル選手の背番号7にちなんで、キックオフから7分ではサポーターが立ち上がって拍手をし、ファイサル選手を支援する団結力を見せるなど、スランゴールFCの勝利への期待が高まりました。しかし新加入のロニー・フェルナンデス、アルヴィン・フォルテスらが好機を作るもののゴールには至らず、前半は0-0で終了します。
 後半に入ってもヨハンドリ・オロスコ、ノー・アル=ラワブデらのシュートも枠内を捉えられず、残り時間が少なくなった中、81分に投入されたアリフ・ハイカルが85分にゴール前の混戦からこぼれたボールを蹴り込んで、これが決勝点となりスランゴールが今季初勝利を挙げています。
 クダFCは第1節のPDRM FCで勝利し、連勝を目指してMBPJスタジアムに乗り込み、スランゴールFCと互角に戦いました。しかしロスタイムにシャフィク・アフマドがソニー・ノルデのクロスに合わせるもシュートがバーを超えるなど、好機を作りながらであと1点が取れませんでした。

この試合のハイライト映像。スランゴールFCの公式YouTubeチャンネルSelangorFC+ より

SL2024/25第2節
2024年5月18日@イポー・スタジアム(ペラ州イポー)
ペラFC 2-3 PDRM FC
⚽️ペラ:トミー・マワト(9分)、ワン・ザック・ハイカル
(87分)
⚽️PDRM:イフェダヨ・オモスイ2(24分、90+12分)、鈴木ブルーノ(72分
🟨ペラ(1)、🟨PDRM(1)
MOM:イフェダヨ・オモスイ(PDRM FC)

 ロスタイムの劇的ゴールでPDRM FCが敵地でペラFCを破り、今季初勝利を挙げています。
 第1節ではホーム開催となった雨中の接戦でクダ・ダルル・アマンFCに0−1で敗れていたPDRM FCのP・マニアムは、初戦で先発したチディ・オスチュクウに代わり、プリンス・アンゲを起用した以外はメンバーを変えず、やはり初戦を1-3で落としているペラFCのユスリ・チェ・ラー監督は、初戦でレッドカードをもらったルイス・エンリケ・モッタに代わりイェスペル・ニホルムを起用した以外は、初戦のトレンガヌFC戦とは同じメンバーを起用しています。
 先制したのホームのペラFCでした。その前にも惜しいシュートを放っていたトミー・マワトが、ゴール前の混戦からイ・テミンが外へ流したボールを豪快に蹴り込んでゴール!ペラが8分に1−0とリードします。しかしPDRM FCも、この試合ではペラFCのDF陣が手を焼いたプリンス・アグレーのクロスをイフェダヨ・オモスイがヘディングで合わせて同点ゴールを決めます。VARのチェックなどもあった前半はロスタイムが11分ありましたが、スコアは1-1のまま終了します。
 後半の72分にはPDRM FCのGKブライアン・シーが元FC琉球のワン・ザック・ハイカルのシュートを弾くと、そこからのカウンターで右サイドを上がったイズルル・アシュラフがゴール前へクロス。このボールをアレム・ティモシーがスルーし、これに飛び出したペラGKハジク・ナズリのいないゴールに鈴木ブルーノ選手が押し込んで、PDRM FCが逆転します。しかしペラFCもその89分にGKブライアン・シーがゴール前のボールへのパンチングを空振りし、ワン・ザック・ハイカルの足元に転がると、これをそのまま蹴り込んだワン・ザック選手のゴールで試合は2-2となります。しかし最後に笑ったのはPDRM FCでした。90+12分には、ロングパスを受けたイズルル・アシュラフとペラDFが交錯して流れたボールをイフェダヨ・オモスイがペナルテイーエリアの外から豪快に蹴り込んで決勝点を挙げ、二転三転した試合はPDRM FCが勝利し、今季初勝利。一方のペラFCは開幕から2連敗となっています。
 PDRM FCの鈴木ブルーノ選手は先発して85分に交代しています。

この試合のハイライト映像。Astro Arena公式YouTubeチャンネルより。

2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第2節途中)

順位チーム勝点
1JDT26200615
2SAB24110321
3TRE13100312
4SRP13100101
5PDRM23101330
6SEL2310113-2
7KLC110101 10
8KCH11010110
9PEN11010000
10KDA*20101110
11KDN2000224-2
12NSE1000113-2
13PRK2000236-3
13SEL2310113-2
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは開幕前に勝点3剥奪処分を受けています。

2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第2節の結果とハイライト映像(1)<br>・サバFCがクランタン・ダルル・ナイムFCを破って今季初勝利と勝点3獲得

 5月17日に今季2024/25シーズンのマレーシアスーパーリーグ(MSL)第2節の1試合が開催されています。
 なお今季のMSLは13チームで編成されており、第2節はKLシティFCの試合はありませんでした。
(試合のハイライト映像は全てMFLの公式YouTubeチャンネルから)

 またMSLとは関係ないですが、昨日5月17日にはジョホール州ジョホール・バルで刃物で武装した男が警察署を襲撃し、警察官2名が死亡する事件が起こりました。警察の発表では、インドネシア、マレーシア、シンガポールそしてイスラム教徒が多いフィリピン南部などで活動しているイスラム系テロ組織、ジェマ・イスラミアが襲撃に関与しているとみられています。ジェマ・イスラミアはインドネシアのバリ島で2002年、2005年と2度の爆弾テロを起こした他、ジャカルタなどでも同様の爆弾テロを起こしおよそ250名が命を奪われています。
 さらに同じ日の午後にはマレーシア国王の住む王宮に刃物を持って押し入ろうした2人組が拘束されています。
 5月3日に強盗傷害事件でケガをしたアキヤ・ラシド、5月5日に酸を浴びせられたファイサル・ハリム、5月7日に暴漢に車のリアウィンドウをハンマーで粉砕されたサフィク・ラヒムとサッカー選手を狙う事件が続きましたが、現在のマレーシアは我々一般市民も呑気ではいられなくなりそうな雰囲気になっています。

MSL2024/25第2節
2024年5月17日@スルタン・ムハンマド4世・スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン・ダルル・ナイムFC 2-3 サバFC
⚽️クランタン:キム・リクワン(55分)、ペ・ギョンファン(90+2分)
⚽️サバ:ガブリエル・ペレス(25分)、スチュアート・ウィルキン(63分)、ラモン・マチャド(69分)、
🟨クランタン(1)、🟨サバ(1)
MOM:カイルル・ファーミ

 サバFCがクランタン・ダルル・ナイムFC(KDN FC)の猛追から逃げ切って開幕2連勝を挙げています。サバFC1点リードの31分、VARのチェックによりKDN FCにPKが与えられますが、チャドラック・ムズングのシュートをGKカイルル・ファーミが好セーブ。このプレーがこの試合の分岐点でした。両チームが拮抗する中、前半を1-0で折り返したサバFCは、後半に入ってKND FCに追いつかれると、途中出場の代表MFスチュアート・ウィルキンのミドルシュートで再びリードを奪い、その3分後には左サイドのテルモ・カスタネイラからのクロスをエースのラモン・マチャドが角度を変えてゴールし、追加点を奪ってそのまま逃げ切っています。
 昨季は4勝5分17敗の12位に終わったクランタン・ユナイテッドFCは、昨季終了後にクランタン・ダルル・ナイムFCと名称を変えてリブランディングを行いました。同じクランタン州を本拠地とするクランタンFCが給料未払い問題により下部リーグに降格したこともあり、熱狂的なサポーターが多いクランタン州のサッカーファンを惹きつけたいところですが、この試合ではバックスタンドの入場料を大人10リンギ(およそ330円)としたことで、公式発表では7,778人の観衆を集めています。昨季の1試合平均入場者数は777人、最大入場者数はクランタンダービーとなったクランタンFCとの試合で2,910人だったことを考えると、この試合の観客動員はリブランディングが功を奏しているようにも見えます。
 この試合はストリーム配信されていたので、私も観戦しました。チームは集客だけでなくピッチ上でも昨季と比べて大きく改善されています。この試合でゴールを挙げた新加入の韓国人コンビDFキム・リクワン(21)、FWペ・ギョンファン(22)、そしてPKは外したもののサバFCのDF陣を翻弄する場面を何度も見せたコンゴ民主共和国出身のウィング、チャドラック・ムズングらを中心に最後まで粘りを見せるなど、昨季とは全く違うチームになっています。昨季のクランタン・ユナイテッドFCのつもりで対戦して油断すると、上位のチームでも足元を掬われかねないチームになっている印象で、個人的には今季、注目したいチームです。

2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第2節途中)

順位チーム勝点
1SAB24110321
2JDT13100303
3TRE13100312
4SRP13100101
5KLC110101 10
6KCH11010110
7PEN11010000
8KDA*10100101
9NSE00000000
10PDRM1000101-1
11KDN2000224-2
12PRK1000131-2
13SEL1000103-3
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは開幕前に勝点3剥奪処分を受けています。

5月17日のニュース<br>・FAカップの組み合わせ決まる-今回は史上最小の16チーム出場<br>・ベトナム、インドネシアに続け?マレーシアも代表とU23代表監督の兼任を検討

FAカップの組み合わせ決まる-今回は史上最小の16チーム出場

今季2024/25シーズンのマレーシアFAカップの抽選会が5月16日に行われました。今大会で第33回を迎えるこの大会には合計16チームが出場します。。

スーパーリーグの13チームに加えて、3部リーグのA1セミプロリーグの16チームからKLローヴァーズFC、ブキット・タンブンFC、マレーシア大学FTの3チームが今季のFAカップに出場します。

組み合わせ抽選は、昨季2023年シーズンでマレーシアスーパーリーグ(MSL)で下位5チーム(ヌグリスンビランFC、ペナンFC、ペラFC、クランタン・ダルル・ナイムFC、クチン・シティFC)と、A1セミプロリーグの3チームの計8チームが、昨季のMSLで1位から8位にランクされた8つの「シード」チームのホームで試合を行う形で行われました。

8つの「シード」チームは、ジョホール・ダルル・タクジム(JDT)、セランゴールFC、サバFC、ケダ・ダルル・アマンFC、スリ・パハンFC、トレンガヌFC、KLシティFC、PDRM FCで、1回戦ではこの8チームのホームで試合が行われます。

1990年から始まったFAカップは、2020年と2021年は新型コロナの影響で中止となりましたが、過去32回の歴史の中で、セランゴールFCとケダ・ダルル・アマンFCが最多の5回優勝を誇り、続いてJDT、スリ・パハン、KLシティがそれぞれ優勝3回で続いています。

2024/25年FAカップの1回戦8試合は2024年6月13日に開始され、決勝戦は8月に予定されています。

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マレーシアFAカップは日本で言えば天皇杯に当たる大会ですが、今年はマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)が運営する1部スーパーリーグ13チームと、アマチュア・フットボール・リーグ(AFL)が運営する3部リーグ(2部リーグのプレミアリーグは現在休止中のため実質2部)の3チームの全16チームが参加するささやかな大会になっています。

サッカーサイトのスムアナニャ・ボラによると2015年には34チームが、2016年には35チームがこのFAカップに出場しています。さらに2017年は37チーム、2018年には40チーム、そして2019年には59チームが出場する国内最大のサッカー大会になりました。

しかしコロナ禍の2020年と2021年にはFAカップは中止となりました。下部リーグのクラブの中にはスタジアムではなく外周を柵などで囲まれたサッカー場が本拠地のクラブもあり、そう言った試合会場では入場者の制限など新型コロナ対策が十分に行えないことを理由にしての2年連続中止でした

そして2022年に再開されるとこの大会こそ34チームが参加したものの、昨季2023年は20チーム、そして今回は16チーム参加と規模が縮小されています。国内のもう一つのカップ戦、マレーシアカップは1921年に第1回が開催された伝統ある大会で、後発のFAカップはその影に隠れた格好になっています。しかし、マレーシアカップは国内のトップリーグMSLのクラブのみ出場できる大会である一方で、FAカップはこれまで下部リーグのクラブにもその門戸を開いており、AFLが運営する3部に当たるA1セミプロリーグ以下には、4部に当たるA2リーグ、5部に当たるA3コミュニティリーグもあることから、こう言ったリーグのクラブにまで門戸を開き、自分たちもマレーシアサッカー界の一員であること感じてもらうことこそがFAカップを開催する意義だと思うのですが、MFLはそう言った発想はなさそうです。

またカップ戦の醍醐味はいわゆる「ジャイキリ」、下部リーグのクラブが上部リーグのクラブを破るジャイアントキリングですが、MFLは準々決勝、準決勝をホームアンドアウェイ方式で開催することで、そう言ったハプニングが起こる可能性を潰しています。ビジネスという観点からは1試合よりも2試合行うほうが実入りも良くなるのは理解できますが、規模の縮小と言い、ワンチャンの機会を奪うホームアンドアウェイ制の導入と言い、MFLによるFAカップの運営には個人的にはかなり不満が残ります。

ベトナム、インドネシアに続け?マレーシアも代表とU23代表監督の兼任を検討

マレーシア語紙のブリタハリアンは、マレーシアサッカー協会(FAM)がキム・パンゴン代表監督にU23代表監督を兼任させることを検討していると報じています。

U23アジアカップではベスト4に進み、大陸間プレーオフで敗れたもののの、あと1勝すればオリンピック出場というところまで手が届いていたインドネシアU23代表の監督は、韓国出身のシン・テヨン監督ですが、シン監督はインドネシア代表の監督でもあります。

昨年3月の2026年W杯予選兼2027年アジアカップ予選でシン監督が代表チームで起用した選手の内11名はU23代表にも招集され、U23アジアカップでは同国代表としては最高位の4位となりました。

またベトナムはパク・ハンソ氏がやはり2017年から代表とU23代表の監督を兼任し、2018年のU23アジアカップではU23代表が準優勝を果たすと、代表チームでも2020年W杯アジアでは最終予選までチームを導くと、最終予選では日本と1分1敗の記録を残しています。

ベトナムは、パク監督の後任のフィリップ・トルシエ元日本代表監督、そしてその後任のキム・サンシク氏も代表とU23代表の監督を兼任しています。(ベトナム監督としては良い結果が出せなかったトルシエ氏も日本代表では代表とU23代表監督を兼ねていた時期もあります。)

こう言った状況受けて、マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン会長は、この監督兼任につい、今後FAM内で議論される予定であり、この仕組みがマレーシア代表に適しているかどうかについては詳細な調査が必要であると説明しています。またそうなれば契約内容の変更にも及び、キム監督との協議も必要になるだろうと述べています。

「他国にとっては適切であっても、我々(マレーシア)にとっては適切ではないこともある。しかし、代表とU23代表に同じ監督を任命することについては既にこれまでもFAM内でも議論されており、おそらくそれが適切かどうかもう一度議論することになるだろう」と話したハミディンFAM会長はその一方で、「(監督兼任をFAMが要請した場合)キム監督が同意しなければ、この案は実現しないことは理解しておくべきだ。」と話しています。

5月16日のニュース<br>・酸をかけられたファイサル・ハリムはICUから普通病棟に移る<br>・強盗傷害事件にあったアキヤ・ラシドは練習に復帰<br>・破格!クランタン・ダルル・ナイムFCのホーム開幕戦チケットは300円<br>・

酸をかけられたファイサル・ハリム(スランゴールFC)と強盗傷害事件にあったアキヤ・ラシド(トレンガヌFC)の良いニュースが報じられています。しかし、その一方で、アキヤ選手の事件からはおよそ2週間、ファイサル選手の事件からは10日が経ちますが、この事件の捜査状況については、警察からはほとんど発表がありません。捜査にはこんなに時間がかかるのか、という印象ですが、どちらの事件も早く犯人が逮捕されることが両選手の心の平穏にもつながると思いますので、警察には迅速に動いて捜査を頑張って欲しいところです。

酸をかけられたファイサル・ハリムはICUから普通病棟に移る

5月5日に不審者から酸をかけられた代表FWファイサル・ハリムは、先週木曜日に行われた皮膚移植手術を含む3度の手術を受けましたが、術後の経過は良好で、9日間を過ごした集中治療室(ICU)から普通病棟へ移ったとマレーシアの通信社ブルナマが報じています。

ファイサル選手と面会したスランゴールFCのシャーリル・モクタル理事は、はっきりとした口調で話ができるようになっている他、歩くこともできるようになり、食欲が出てきており、出身地ペナンで有名なマレーシア風カレーの「ナシ・カンダー」が食べたいと話しているということです。

「容態は安定しているものの、未だ最新の注意が必要な状況であり、一般の見舞客との面会はまだ許可されてはいない。予定されている次の皮膚移植手術はおそらく最後の手術で、ファイサル選手自身の身体の一部の皮膚を火傷した箇所に移植する手術だと聞いている。」と説明したシャーリル理事は、術後は最低でも2週間は入院が続くと話しています。

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なおファイサル選手が所属するスランゴールFCは、クアラルンプールとスランゴール州をつなぐ幹線道路である連邦高速道路や、ダマンサラ・プチョン高速道路(LDP)に近いデジタル・サイネージを使って「ファイサル・ハリムとともに立ち、暴力を阻止せよ」というキャンペーンも展開しています。

強盗傷害事件にあったアキヤ・ラシドは既に練習に復帰

ファイサル・ハリムが酸をかけられる事件の3日前には、ジョホール・ダルル・タジムFCからトレンガヌFCに期限付き移籍中の代表FWアキヤ・ラシドが練習から帰宅した際に強盗傷害事件の被害を受け、頭や足などを4針縫うケガを負っています。

今季チームの開幕戦となった5月11日の試合にはベンチ入りもできませんでしたが、そのアキヤ選手は既に練習に復帰していると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。この報道によると、アキヤ選手はチームとともにウォーミングアップを行った後、軽めの練習メニューをこなしたということです。

練習後にはメディアの問いかけに応じたアキヤ選手は、事件のトラウマがあることは認める一方で、「足の縫合箇所は一両日中には抜糸が終わるので、試合に向けてフィットネスレベルを上げていきたい」と話し、今週末に予定されている今季のマレーシアスーパーリーグ第2節のペナンFC戦への出場意欲を未沙汰ということです。

破格!クランタン・ダルル・ナイムFCのホーム開幕戦チケットは300円

今週末に今季2024/25シーズンのマレーシアスーパーリーグ(MSL)第2節が開催されますが、5月17日に今季のホーム開幕戦を戦うクランタン・ダルル・ナイムFCは、この試合のバックスタンドのチケットを10リンギ(およそ330円)とすることを発表しています。なおメインスタンドは当初の予定通り25リンギ(およそ830円)のままということです。

ホームのスルタン・ムハンマド4世スタジアムにサバFCを迎えて行われるこの試合について、クランタン・ダルル・ナイムFCはクラブ公式SNS上で声明を発表し、昨季までのクランタン・ユナイテッドFCからのりブランディングを支援する多くのサポーターに感謝の意を表すことが目的だと話し、クランタン・ダルル・ナイムFCのサポーターはもとより、サッカーの人気が高いクランタン州のサッカーファンにも、入手しやすい価格のチケットを買ってスタジアムに足を運んで欲しいと呼びかけています。

5月15日のニュース<br>・皮膚移植手術を受けた代表FWファイサル・ハリムの経過は良好<br>・代表チームメートのパウロ・ジョズエがファイサル選手と自身の故郷にメッセージを送る<br>・VARが使えれば勝っていたかもしれない-サバFC監督

皮膚移植手術を受けた代表FWファイサル・ハリムの経過は良好

5月9日に3度目の手術となる皮膚移植手術を受けた代表FWファイサル・ハリムの術後の経過をマレーシア語紙ブリタハリアンが報じ、細菌感染などの症状も示さず、住ん町に定着しているようだと伝えています。

5月5日に酸をかけられたファイサル選手を見舞ったスランゴールFCのシャーリル・モクタル理事は、皮膚移植手術を受けた腹部と左腕の状態は良いと話しています。、また皮膚移植治療は複数の段階に分けて行われるとして、さらに数日間経過を見た後、次の手術を受けることができるだろうと話しています。

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これまで一部のメディアからはファイサル選手が早期引退危機、といった無責任な報道も出ていましたが、回復は順調なようです。またチームのフィジオセラピストとも今後のリハリビ開始について相談を始めたという報道もあります。

代表チームメートのパウロ・ジョズエがファイサル選手と自身の故郷にメッセージを送る

5月12日に行われたマレーシアスーパーリーグ(MSL)第1節のKLシティFC対クチンシティFCでゴールを決めたパウロ・ジョズエが珍しくゴールパフォーマンスを見せましたが、これは入院中のファイサル・ハリム(スランゴールFC)と。

この試合では12分にKLシティFCの先制ゴールを決めたジョズエ選手は、得点後、スタンドに向かってアピールしながら、マレーシア代表でチームメートのファイサル・ハリム選手が得点後に行う”Siuuu”というパフォーマンスを見せました。国内サッカーファンなら誰でもわかるこのパフォーマンスでスタンドが湧くと、今度はカメラに駆け寄りユニフォームを捲り上げるとその下にはまた別のメッセージが書かれていました。

ゴール後のパフォーマンスでメッセージを披露するパウロ・ジョズエ(Supporter of Kuala Lumpur UnitedのXより)

そこに書かれていたのは”FORCA RS. BE STRONG”の文字でした。最初の1文はポルトガル語で「頑張れRS」、2文目は英語で「強くあれ」とでも訳せるでしょうか。試合後の会見ではこの”BE STRONG”が代表チームメートのファイサル選手に向けられたことを説明しています。

そして1文目はジョズエ選手の出身地、ブラジル南部のリオグランデ・ド・スル州に向けてのものだと考えられています。ブラジル出身のジョズエ選手は、MSLで5年以上プレーしたため、一昨年マレーシア国籍を取得していますが出身地はリオグランデ・ド・スル州で、RSはその通称です。このリオグランデ・ド・スル州ではおよそ2週間前から始まった雨による大洪水が発生し、5月13日の時点で死者143名、行方不明者125名という大変な被害が起き、同州の人口約1090万人のうち53万8000人以上が避難を余儀なくされていると報じられています。”FORCA RS”は苦境にある故郷へ向けての応援メッセージなわけです。

VARが使えれば勝っていたかもしれない-サバFC監督

マレーシアスーパーリーグ(MSL)は今季2024/25シーズンからVARを導入しましたが、先日終了した今季第1節では開催された5試合中、2試合で機材トラブルなどを理由にVARを使うことができませんでした。

その内の1試合が5月12日にサバFCのホームで開催されたサバFC対ペナンFCの試合でした。試合は0−0の引き分けに終わりましたが、試合後の会見で、サバFCのオン・キムスイ監督は、VARが使用できていれば、試合結果は違ったものになっていたのではないかと話しています。

問題の場面は77分に起こったプレーでした。ペナンFCのペナルティーエリア内でサバFCのサディル・ラムダニとペナンFCのDFが交錯した際、ハンドの反則が映像で確認できたと話しています。この場面では、主審はサバFCからの抗議を退け、コーナーキックを指示しました。

オン監督は「もしVARでチェックすることができれば、PKが与えられていたはずだが、このような重要な場面でVARが使えないという事実を受け入れなければならなかった。」と述べる一方で、次の機会では、審判が正しく判定できる役に立つことを切に願っていると話しています。

2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ<br>第1節の結果とハイライト映像<br>・待望のリーグ開幕も新規導入のVARが5試合中2試合で機能せず

 5月11日から12日にかけて、今季2024/25シーズンのマレーシアスーパーリーグ(MSL)第1節が開催されています。
 5月10日に予定されていたジョホール・ダルル・タジム(JDT)対スランゴールFCの試合は、その数日前に酸をかけられる事件にあったファイサル・ハリム所属のスランゴールFCが「安全上の理由」で試合の延期を求めたものの、MSLを主催するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)がこれを拒否。スランゴールFCは結局、試合出場を辞退したためこの試合は中止となり、JDTが3−0での勝利と勝点3を獲得する事態となっています。
 なお今季のMSLは13チームで編成されており、第1節は佐々木匠選手が所属するヌグリスンビランFCの試合はありませんでした。
(試合のハイライト映像は全てMFLの公式YouTubeチャンネルから)

MSL2024/25第1節
2024年5月11日@MBSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM FC 0-1 クダ・ダルル・アマンFC
⚽️クダ:シャフィク・アフマド(1分)
🟨PDRM(0)、🟨クダ(1)
MOM:シャフィク・アフマド(クダ・ダルル・アマンFC)

 前日のJDT対スランゴールFCが中止となり、図らずとも今季のリーグ開幕戦となったこの試合は、開始1分で先制したクダ・ダルル・アマンFC(クダFC)がその1点を守り切って今季初勝利を挙げています。
 クダFCは、昨季の給料未払い問題の解決が遅れ、今季開幕前に勝点3を剥奪される処分を科せられています。さらに今季の胸スポンサー予定だった企業がスポンサー契約を解除したことで、この試合はプレシーズンユニを着て試合に臨み、さらマレー半島北部にあるクダ州から400kmをバスで移動するなど開幕からいきなり資金不足の様相を呈しています。
 この試合はスタジアムで観戦しましたが、開始30秒(記録上は開始1分)に左サイドのMFソニー・ノルデから出たクロスをFWシャフィク・アフマドがダイレクトでオールへ蹴り込んでクダFCが先制しました。クダFCのリードで前半を折り返すと、試合開始から降り続いていた雨は後半に入ると激しくなり、ピッチ上には水が浮き、ボールが止まってしまう場面も多くなるなど試合展開は停滞し、開始1分のゴールであげた1点でクダFCが逃げ切り、第1節ではやくも勝点を0に戻しています。
 PDRM FCは新加入のイフェダヨ・オモスイと鈴木ブルーノのツートップになかなかボールが繋がらず、後半はシャーレル・フィクリを投入してFW3枚で同点を狙いましたが、劣悪なピッチの状況もあり、チャンスを作ることもほとんどできませんでした。
 PDRM FCの鈴木ブルーノ選手は先発してフル出場しています。

MSL2024/25第1節
2024年5月11日@MPTスタジアム(パハン州テメルロー)
スリ・パハンFC 1-0 クランタン・ダルル・ナイムFC
⚽️パハン:マヌエル・イダルゴ(64分)
🟨パハン(0)、🟨クランタン(1)
MOM:マヌエル・イダルゴ(クダ・ダルル・アマンFC)

 代表のキム・パンゴン監督が観戦に訪れたことが報じられたこの試合は、本来の本拠地であるダルル・マクモル・スタジアムのピッチ張り替えが決まったことで、本来のホームからおよそ140km離れたMPTスタジアムで開催されています。
 試合はJDTから期限移籍中のマヌエル・イダルゴがゴール正面で得たフリーキックを直接ゴールインさせたスリ・パハンが虎の子の1点を守り切って勝利しています。
 代表のキム・パンゴン監督が観戦に訪れたことが報じられたこの試合は、本来の本拠地であるダルル・マクモル・スタジアムのピッチ張り替えが決まったことで、本来のホームからおよそ140km離れたMPTスタジアムで開催されています。
 試合はJDTから期限移籍中のマヌエル・イダルゴがゴール正面で得たフリーキックを直接ゴールインさせたスリ・パハンが虎の子の1点を守り切って勝利しています。 
 またこの試合は、技術的なトラブルからVARが使用できなかったようで、VAR導入初年度の第1節に聞くには不安なニュースです。

MSL2024/25第1節
2024年5月11日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌFC 3-1 ペラFC
⚽️トレンガヌ:ヌリーロ・トゥクタシノフ(6分)、シヴァン・ピレイ(67分OG)、チュクゥウ・ナブイケ(81分)
⚽️ペラ:ルチアーノ・グアイコチェア(61分PK)
🟨トレンガヌ(2)、🟨ペラ(1)、🟥ペラ(1):ルイス・エンリケ・モッタ
MOM:ヌリーロ・トゥクタシノフ(トレンガヌFC)

 ホームのトレンガヌFCがペラFCに一度は追い付かれたもののを、相手のOGなどもあり今季初勝利を挙げています。
 5月3日に強盗傷害事件で頭を4針縫うケガを負ったアキヤ・ラシド、さらには昨季のチーム得点王イヴァン・マムートなど主力4名を欠いたトレンガヌFCは、昨季は1ゴールのヌリーロ・トゥクタシノフがペナルティーエリアの外がゴールを決めて先制します。
 トレンガヌFCが1点のリードを保って前半を折り返すと、後半の61分にはトレンガヌFCのマヌエル・オットがペラの10番、FWイ・テミンをペナルティエリアで倒してPKを与えてしまいます。これをルチアーノ・グアイコチェアが決めてペラFCは同点に追いつきますが、その6分後にはシヴァン・ピレイのOGで失点、さらに昨季在籍したPDRMのU23チームでは、U23リーグのMFLカップでリーグ2位の16ゴールを挙げているチュクゥウ・ナブイケに3点目のゴールを許して敗れています。

MSL2024/25第1節
2024年5月12日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバFC 0-0 ペナンFC
🟨サバ(1)、🟨ペナン(1)
MOM:ラファエル・ヴィトール(ペナンFC)

 プレシーズンマッチでケガを負い、出場が危ぶまれていたラモン・マチャドとサディル・ラムダニのFWコンビが先発XIに名を連ねたサバFCは、シュート数でもペナンFCno5本(枠内1本)に対して15本(同6本)と優位に試合を進めながら、ホームでスコアレスドローに終わっています。
 なおこの試合も前日のスリ・パハンFC対クランタン・ダルル・ナイムFC同様、「技術的な理由」でVARの使用ができなかったようです。

MSL2024/25第1節
2024年5月12日@KLフットボール・スタジアム
KLシティFC 1~1 クチンシティFC
⚽️KLシティ:パウロ・ジョズエ(12分)
⚽️クチンシティ:ペドロ・エンリケ(19分)
🟨KLシティ(0)、🟨クチンシティ(2)、🟥KLシティ(1):アドリアン・ルドヴィッチ
MOM:ブレンダン・ガン(KLシティFC)

 KLシティFCは、12分に先制ゴールを決めたパウロ・ジョズエが代表でチームメートのファイサル・ハリムの得点後のパフォーマンスを真似てみせるなど、良い雰囲気でスタートします。その直後にはクチンシティFCもゴール前の混戦から谷川由来選手のゴールで追いついたかと思われましたが、VARのチェックが入り、このゴールは認められません。それでも19分にペドロ・エンリケのゴールでクチンシティが同点に追いつきます。
 その後は両チームともゴールを挙げることができず引き分けていますが、KLシティでは新加入の高速ウィング、ジョヴァン・モティカ、クチンシティではチェチェ・キプレ、ジョーダン・ミンターのFWコンビ、そして「未完の大器」ダニエル・アミールが次戦以降に期待を持たせるプレーを見せた試合でした。
 クチンシティFCの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第1節終了)

順位チーム勝点
1JDT13100303
2TRE13100312
3SRP13100101
4KLC110101 10
5KCH11010110
6SAB11010000
7PEN11010000
8KDA*10100101
9NSE00000000
10PDRM1000101-1
11KDN1000101-1
12PRK1000131-2
13SEL1000103-3
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは開幕前に勝点3剥奪処分を受けています。

5月12日のニュース<br>・酸をかけられたファイサル・ハリムは手術後の回復期で面会謝絶に<br>・開幕戦出場辞退のスランゴールFCはMFLの寛大な処分を望む<br>・スリ・パハンFCは本拠地の芝をバミューダグラスに張り替え決定<br>・今季はリーグ戦61試合が国営放送により地上波で放映

いきなりサッカーとは関係ない話題ですが、ペラ州イポーで開催されていた男子ホッケーのスルタン・アズラン・シャー・カップ(SASC)に出場していた日本代表がパキスタン代表を破って悲願の初優勝を飾っています。かつては英国の植民地だったこともあるマレーシアではホッケーは盛んなスポーツで、この国際招待大会のSASCも今回が30回目となっています。今大会が6度目の出場となった日本代表は、参加6チーム総当たりで行われるグループリーグを4勝1分としてトップ通過していました。グループリーグ首位と2位が対戦する決勝へは今大会が初進出で、決勝で対戦したパキスタンとは2−2でレギュレーションタイムを終えた後、サッカーのPK戦に当たるSO(シュートアウト)戦で4-1と勝利して初優勝を果たしています。2022年の前回大会では3位決定戦で同じ相手に敗れていただけに、リベンジを果たしたことにもなります。ホッケー日本代表の皆さん、優勝おめでとうございます。

酸をかけたれたファイサル・ハリムは手術後の回復期で面会謝絶に

5月5日に酸をかけられ第4度の火傷を負って入院中の代表FWファイサル・ハリムは、入院後3度目の手術となる皮膚移植手術を受けたことが報じられています。そして現在は術後の回復期間で厳重な監視が必要なことから、今後2週間は面会謝絶となると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

この記事では、スランゴール州青年スポーツ委員会のナジワン・ハリミ委員長の話しとして、手術後のファイサル選手の具合は安定しているものの、皮膚移植手術後は完全隔離した上で、回復状況を注意深く見守ることが必要だと説明しています。

*****

また別の記事では、ファイサル選手がペナン州スブラン・プライのムンクアン・ティティ村出身であることから、ペナン州政府はファイサル選手の父親のアブドル・ハリム氏に3000リンギ(およそ10万円)を手渡したことが報じられています。

開幕戦出場辞退のスランゴールFCはMFLの寛大な処分を望む

5月5日のファイサル・ハリムの事件を受け、スランゴールFCは5月10日に予定されていた今季2024/25シーズン開幕戦兼スンバンシー・カップについて「安全上の問題」があるとして延期をリーグを運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)に求めましたが、MFLは試合当日に警官を増員するなど安全が確保されているといて、これを却下。それを受けたスランゴールFCは最終的に出場辞退を決定しました。この結果、対戦相手のジョホール・ダルル・タジム(JDT)が規定により3-0でこの試合の勝者とされ、スンバンシー・カップの8年連続優勝と、開幕戦の勝点3が与えられたことを、MFは公式サイトで発表しています。

さらにこの発表が行われた際には、同時に出場を辞退したスランゴールFCへの処分は理事会での協議を経て、近日中に発表されることをMFLは発表しています。処分内容は、勝点の剥奪や罰金などが課せられるのではと考えられていますが、スランゴールFCのシャーリル・モクタル技術委員長は、寛大な処分を期待していると話しています。

これを報じたブルナマの記事ではシャーリル氏は、「我々は安全に関する不安から出場を辞退したが、同じサッカー界にいるものとして、MFLには我々に対して厳しい処分を与えないことを望んでいる。」と話しているということです。

*****

先日の記事でも取り上げた通り、後見人でもあるスランゴール州スルタンの指示を受けて出場辞退を決定したスランゴールFCは、開幕戦延期を求めた時点では「安全上の理由」を挙げていました。これに対し、MFLや試合が行われる予定だったジョホール州の警察、さらには警察庁長官までが警官の増員などで安全を確保することを約束しましたが、スランゴールFCはそれでも出場辞退を選んでいます。その決定を行なった以上、MFLがどんな処分を科そうと、スランゴールFCはそれを甘んじて受け入れるべきだと思います。その覚悟がないまま出場辞退を選択していたのだとしたら、考えが甘いと指摘されてもしょうがないようにも思えます。噂では今季出場が決まっているACL2への出場権剥奪なども聞こえてきますが、もし、そうなることを恐れているのであれば、正直、情けないとすら感じます。

スリ・パハンFCは本拠地の芝をバミューダグラスに張り替え決定

スリ・パハンFCの本拠地、パハン州クアンタンにあるダルル・マクモル・スタジアムのピッチは、マレーシアでは一般的なカウグラス(アカツメクサ)でしたが、この度、バミューダ芝への張替が行われることが決定したと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

マレーシア政府青年スポーツ省(KBS)は、マレーシア各州に対して、50万リンギ(およそ1600万円)の補助金を提供する条件で州の代表的なスタジアムのピッチをバミューダ芝などに張り替えることを求めています。しかし、従来のカウグラスはその管理にほとんど手間がかからない一方で、バミューダ芝などに張り替えると、芝そのものの管理に加え、ピッチ下の排水設備の改善などで、現在以上に費用がかかることが補助金を受け取ることを躊躇している州が少なくなく、マレーシアスーパーリーグ(MSL)が開催されるスタジアムの中で芝のピッチとなっているのはジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のスルタン・イブラヒム・スタジアムと、トレンガヌFCのスルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアムだけです。なおKBSの補助金については、ペラ州とクダ州が受け取ることを表明しています

ピッチ張り替え決定を発表したパハン州青年スポーツ委員会のファジル・カマル委員長は、政府による補助金と張り替え及び管理費用との差額120万リンギ(およそ4000万円)を州予算に計上したことを発表しています。今回の決定についてファジル委員長は、今季2024/25シーズンのMSLがパハン州が面するマレー半島東海岸のモンスーンの季節に当たる12月から1月かけて開催されることを理由に挙げています。「もしモンスーンの季節中にカウグラスのピッチで試合をすれば、大雨が降った際にはピッチは水田のようになってしまい、日程の再編などが必要となる恐れがある。しかしバミューダ芝は水はけも良く、悪天候での使用にも耐えうる。」と説明したファジル委員長は、1973年開場のダルル・モクタル・スタジアムでピッチ張り替え工事が行われる間は、ホームゲームはクアンタンからおよそ140km離れた収容人数1万人のMPTスタジアム(通称テメルロー・スタジアム)で開催することも発表しています。

今季はリーグ戦61試合が国営放送により地上波で放映

マレーシアスーパーリーグ(MSL)を運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)はマレーシア国営放送局のラジオ・テレビ・マレーシア(RTM)が今季2024/25シーズンのMFL主催試合61試合を生中継することを発表しています。、

MFLの発表によれば、61試合の内訳はMSLが52試合、FAカップ8試合、そしてマレーシアカップ決勝となっています。これらの試合はRTMのチャンネル、TV OkeyとSukan RTMで見ることができる他、RTMのインターネット配信サイトRTM Klikでもストリーム配信されるということです。

昨今のサッカー放送の御多分に洩れず、マレーシア国内でもケーブルや衛星の有料チャンネルあるいは有料のストリーム配信が主流になっており、そういった契約を結ばない限りは国内リーグをスタジアム以外で観戦することは難しくなっています。

*****

無料でサッカーの生中継が見られない場合、マレーシアでは屋外にテレビやスクリーンを設置している屋台で見るファンも少なくありません。国内サッカーファンの大半はマレー系のイスラム教徒なので、紅茶やコーヒーを飲みながら屋外の屋台で友人らとサッカー観戦というはマレーシアのどこででも見られれる風景です。

5月11日のニュース<br>・酸をかけられたファイサル・ハリムの皮膚移植手術後の経過は良好<br>・クダFCは胸スポンサーが決まらずプレシーズンユニ着用で開幕戦へ-6時間かけてのバス移動も含め早くも資金不足の兆候?<br>・国家サッカー選手育成プログラムの新たなTDにオーストラリア出身のオスカー・ゴンザレス氏就任

いよいよ今日5月11日からマレーシアスーパーリーグ(MSL)の今季2024/25シーズンの公式戦が始まります。日本人選手では鈴木ブルーノ選手が所属するPDRM FCは、本日5月11日に今季から本拠地として使用するスラヤン・スタジアム(MPSスタジアム)にクダ・ダルル・アマンFCを迎え、谷川由来選手が所属するクチンシティFCは明日5月12日にアウェイのKLシティFC戦に臨みます。今季からヌグリスンビランFCに加入した佐々木匠選手は、今季のMSLが13チーム編成となっているため、今節は試合がありません。

昨日予定されていたリーグ開幕戦を兼ねたスンバンシー・カップ(前年のリーグチャンピオンとマレーシアカップチャンピオンが対戦するいわば「スーパーカップ」)は、酸を浴びせられたファイサル・ハリムが所属するスランゴールFCがMFLに対して安全上の理由から延期を求めたものの、試合当日の警官増員で安全が確保されたとして、リーグを運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)はこれを拒否。それを受けてスランゴールFCは出場を辞退しました。この結果、MFLは公式サイト上でスンバンシー・カップの中止を発表していました。またこの試合は今季2024/25シーズンの開幕戦も兼ねており、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は3−0での勝利と勝点3が与えられることも発表していました。

MFLの公式サイトでは、スンバンシー・カップは「中止」とされていたので、今季は記録に残らないのかと思っていましたが、「中止」の意味を間違えていたようで、リーグ戦の勝利だけでなく、スンバンシー・カップもJDTの勝利という扱いになっているようです。JDTは試合が予定されていた自身のホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムに選手が集まり、JDTとしては27個目の国内タイトルとなるスンバンシー・カップ「優勝」を祝ったという報道が出ています。

酸をかけられたファイサル・ハリムの皮膚移植手術後の経過は良好

5月5日に酸をかけられて以来、入院中の代表FWファイサル・ハリム(スランゴールFC)は、昨日(5月9日)の午後に3度目の手術となる皮膚同種移植手術を受けたことをマレーシアの通信社ブルナマが報じています。この記事によると、ファイサル選手の手術後の経過は順調で、既に病室内では歩き始めており、できるだけ早く帰宅したいとも話しているようです。

ファイサル選手を見舞ったスランゴールFC理事会のシャリル・モクター理事は、ファイサル選手はベルギーから輸入された皮膚を使用した皮膚同種移植手術を受け、3時間に及ぶ手術後は移植された皮膚に対して良好な反応を示しいると話しています。なお、今回の皮膚移植手術は腕と肋骨に行われ、新たな皮膚が生着するために十分な時間を取ったのち、更なる手術も予定されているということです。

また今後、医師の許可が得られれば現在、滞在している集中治療室(ICU)から、より重篤度が低い患者のための高度治療室(HDU)へ1週間ほどで移される可能性が高いとも話しています。

クダFCはユニフォームの胸スポンサーが未だ決まらず、プレシーズンユニ着用で今季初戦に臨む-開幕戦へ6時間かけてのバス移動は早くも資金不足の兆候?

本日、PDRM FCと対戦するクダ・ダルル・アマンFC(クダFC)は、開幕まで1ヶ月となるまで昨季の給料未払いが解決できず、あわや今季のスーパーリーグ出場停止か、という状況でしたが、なんとかそれも解決し、プレーシーズンマッチを行い、チームを仕上げてきました。しかし、いよいよ開幕という時点で今季ユニフォームの胸スポンサーから約束されていた資金提供を受けられなくなっているようです。

クダFCはクラブ公式SNSで声明を発表し、既に某企業から口頭で(!)ユニフォームの胸スポンサー契約のオファーを受けていたが、その企業が契約締結の最終段階で経営状況悪化に直面した結果、この企業とは胸スポンサー契約を結ばないことを選択したと説明ています。またクダFCは現在も新たな胸スポンサーを探しているということです。

この状況により、クダFCは今季のユニフォーサプライヤー、ALスポーツ社と協議し、胸スポンサーが確定するまでは今季のスーパーリーグで使用する公式ユニフォームを発表せず、少なくとも本日の第1節から数試合はプレシーズンで使用した特別ユニフォームをリーグ戦で着用することを発表しています。

*****

このニュースとは別ですが、クダFCはホームがあるマレー半島北部のクダ州から今日の試合があるスランゴール州までの450km近い距離を6時間かけてバスで移動してきたことも報じられています。クダFCは懸念したファンからの問いかけに対してクラブ公式SNSでこのバス移動について「フライトスケジュールの変更を避けるため」という意味不明な理由を挙げて説明しています。この長距離をバスで移動するのは国内トップリーグのクラブとしてはあまりにも選手の疲労を考えていないと思いますが、クラブSNSが本当のことを言っているのか、胸スポンサーが見つからないことでチームの財政に再び問題が発生しているのかは、もう少し見守る必要がありそうです。

国家サッカー選手育成プログラムの新たなTDにオーストラリア出身のオスカー・ゴンザレス氏就任

国家サッカー選手育成プログラム(NFPD)はマレーシアサッカー協会(MFL)と青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会(NSC)が共同で運営するプロサッカー選手育成のための国家プログラムですが、このNFPDの新たなテクニカル・ディレクター(TD)にオーストラリア出身のオスカー・フランシスコ・ゴンザレス氏が就任したと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

この記事によるとNSCはゴンザレス氏を国内トップのエリートアカデミー、モクタル・ダハリ・フットボール・アカデミー(AMD)のTDを務めるという決定を、ハンナ・ヨー青年スポーツ相が議長を務めた委員会で決定したと伝えています。

NSCによると、マレーシアサッカー協会(FAM)は昨年12月にNFDPのTDの候補者4名と面接を行った結果、オーストラリアサッカー協会のコーチ教育リーダーを務めてたゴンザレス氏の採用をFAMが提案し、NSCがこれに同意したと説明しています。

FAMはハミディン・アミン会長、S・シヴァスンダラム副会長、ノール・アズマン事務局長、スコット・オドネルTDらによる選定委員会が面談を行ったとしています。

AFCのプロコーチング・ディプロマを持つゴンザレス氏は、ニューサウスウェールズ州でエリート育成プログラムを20年以上にわたって手掛けた経験がある他、

彼はまた、中国1部の南通支雲足球倶楽部(ナントン・ジーユンFC)、ニューサウスウェールズ州サッカー協会、オーストラリア1部Aリーグのセントラル・コースト・マリナーズなどでも指導経験があるということです。

5月10日のニュース<br>・スランゴールFCの出場辞退によりMFLはスンバンシー・カップの中止を決定<br>・スランゴール州スルタンがスランゴールFCのスンバンシー・カップ出場辞退を支持<br>・東南アジアクラブ選手権の組み合わせ決定ーKLシティはACL経験を持つ3チームと同じ「死の組」に

昨夜の大陸間プレーオフでギニア(アフリカ4位)に惜敗したインドネシアの長かった冒険が終わりました。まさかこの大陸間プレーオフまで試合が続くとは思っていなかったのか、この試合はU23アジアカップのメンバーから主力が抜ける苦しい布陣で臨むことになりました。しかし、この経験は協会にとっては重要な経験となったはず。これでまたマレーシアはインドネシアに話されてしまったなぁ。

マレーシア国内に目を転じると、本日予定されていた2024/25シーズン開幕戦を兼ねていたスンバンシー・カップがスランゴールFCの出場辞退により中止になりました。今日のニュースはこの話からです。

スランゴールFCの出場辞退によりMFLはスンバンシー・カップの中止を決定

国内リーグを運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)は公式サイトで、本日5月10日に予定されていたスンバンシー・カップ2024についてスランゴールFCが出場を辞退したために中止とし、またこの試合が今季2024/25シーズン開幕戦も兼ねていたことから、ジョホール・ダルル・タジムFC (JDT)を開幕戦の3−0の勝者として勝点3を与えることを発表しています。

5月5日に起こったファイサル・ハリムが酸をかけられた事件を受け、スランゴールFCは「安全上の理由」からこのスンバンシー・カップの延期をMFLに求めていましたが、ジョホール州警察が警官を増員して警備を行うなど対策は十分にとられているとして、MFLはスランゴールFCの試合延期申請を却下していました。

MFLによる発表では、スランゴールFCCの出場辞退にに関連する問題は、さらなる検討のためにMFLの取締役会で議論されることも明らかにしています。

スンバンシー・カップ(スンバンシーはマレーシア語で「貢献」の意味)は、英国のチャリティー・シールド(現FAコミュニティー・シールド)を模して1995年から始まったカップ戦で、前年のリーグチャンピオンとマレーシアカップチャンピオンが対戦する「スーパーカップ」です。昨シーズンはJDTがリーグ、マレーシアカップ、FAカップ全てに優勝する国内三冠を達成していることから、今回は昨季リーグ2位のスランゴールFCがJDTと対戦することになりました。

*****

今回の一件で明らかになったのは、スンバンシー・カップはリーグ戦とは切り離して行うべき、ということです。JDTのホームで行われる今回のスンバンシー・カップは、ファイサル選手の事件の前から不穏な空気になっていました。手始めには、スランゴールFCから申請がなかったという理由でJDTがアウェイサポーター向けチケットを発売しないと発表したことでした。JDT主催のリーグ戦ならまだしも、このカップ戦はMFL主催試合であるべきで、チケットの販売についてもJDTではなくMFLが決定すべきことでした。(しかしMFLはこれについては公式コメントを出しませんでした。)結果として、スランゴールサポーターがいない試合を、自分たちの士気が上がらない中、メンタルを傷つけてまでやる必要がないとスランゴールFCが判断したのだとしたら、JDTの自業自得と言ったら言い過ぎでしょうか。

スランゴール州スルタンがスランゴールFCのスンバンシー・カップ出場辞退を支持

スランゴールFCは公式SNSに、クラブの後見人(パトロン)でもあるスランゴール州スルタンのスルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下による声明を掲載し、殿下が本日5月10日に行われる予定だったスンバンシー・カップ2024の出場を辞退するというセランゴール FCの決定を承認し、全面的に支持しました。

また殿下は、マレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)がセランゴールFCから公式に文書で出されていた試合延期の要求を拒否したことに対して失望も表明しています。セランゴール FCの後見人として、殿下は、最近、選手やスタッフに関わる生命の危機に関するいくつかの事件が発生した後、セランゴールFCが、2024年スーパーリーグの開幕戦も兼ねるこのスンバンシー・カップに出場しないのは、時宜に適っていると考えているとも述べて、現時点でのクラブの最優先事項は、カップを勝ち取ることではなく、選手たちの命と安全だと述べています。

さらに殿下は、安全上の問題だけでなく、ファイサル・ハリムへの酸攻撃事件の影響を受けて精神的に動揺しているチームの士気も考慮すべきだとし、さらにスポーツにおけるあらゆる形態の暴力と戦う連帯を支持しているとも述べています。

スルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下は、今回のように選手の命に関わる事件の重大さは、これまでの事件とは異なることを理解して欲しいと強調し、さらに、この事件が試合の日程に非常に近い時期に発生したことも考慮に入れるべきだとのべています。またセランゴール FCは、出場辞退という決定に伴ういかなる措置にも対応する準備ができていると強調しています。

*****

スルタンとはイスラム教国の特定の地域の政治を司る支配者のことを指します。マレーシアのスルタンは王家の血を引くマレー人の男性に限定され、現在はプルリス、クダ、クランタン、トレンガヌ、パハン、ペラ、スランゴール、ヌグリスンビラン、ジョホールの9州にスルタンがいます。(ただし、、ペルリス州ではスルタンと呼ばずにラジャ、ヌグリスンビラン州ではヤン・ディ・プルトゥアン・ブサルと呼ばれています。)現在のマレーシアの政治の仕組みでは。政治的な権力はないものの、スルタンは自州内のイスラム教徒の長であり,イスラム教徒であるマレー人の保護者でもあります。このためスルタンの発言は非常に重く、その発言に批判的な内容を述べれば不敬罪などに問われることもあります。

今回、スルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下が発言したのは、相手のJDTのオーナーがジョホール州スルタンの長子、皇太子のトゥンク・イスマイル殿下であることとも関係しているでしょう。皇族に物申せるのは皇族だけということです。

個人的には今回のスルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下の声明で触れられていた「精神的に動揺しているチームの士気も考慮すべき」という部分に触れているが素晴らしいと思いました。「安全上の理由」での出場辞退なら、警備を増員したので心配無用と却下されることもありますが、精神面が理由の辞退では受け入れられないとしても、反論されることはありません。スランゴールFCもMFLに延期の申請をする際に安全上の理由に加えてこの精神面での理由も明言していれば、別の結果になっていたのではないかという気もします。

スランゴールFCを過度に敵視している印象が強いJDTは、辞退を決めたスランゴールFCに対し、しつこいほどの対戦要求を繰り返しています。今回のスンバンシー・カップでスランゴールFCを破り、現在は8回で並んでいる優勝回数でスランゴールFCを抜き、さらに煽りたかったのだろうなと思います。JDTが強いことは国内サッカーファンなら誰もが分かっているのだから、もう少し大人の振る舞いをしても良かったとも思います。今回のスンバンシー・カップもスランゴールFCに対して思いやりを見せ、敢えてJDTから試合の延期を持ちかけていれば、JDTの株も上がり、アンチの多くもJDTを見直していたでしょう。

東南アジアクラブ選手権の組み合わせ決定ーKLシティはACL経験を持つ3チームと同じ「死の組」に

2024/25シーズンのアセアン(東南アジア)クラブ選手権、通称ショッピー・カップの組み合わせ抽選が昨日5月9日にベトナムのホーチミンで行われ、マレーシアから出場するトレンガヌFCはA組、KLシティFCはB組に振り分けられています。今回の大会にはベトナム、タイ、インドネシア、マレーシアからはそれぞれ2チームが、フィリピンとシンガポールからはそれぞれ1チーム出場するほか、ブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーのチームによるプレーオフを経て出場する2チームの合計12チームが出場します。

KLシティFCが入ったB組は、昨季のタイ1部チャンピオンでマレーシア代表DFディオン・コールズも所属するブリーラム・ユナイテッドFC、シンガポールの昨季王者、ライオン・シティ・セイラーズFC、そしてフィリピン1部でリーグとカップの二冠を達成しているカヤ・イロイロFCと、昨季のACL出場クラブが3チームも入った「死の組」になっています。しかもこの他には、先月終わったばかりのインドネシア1部リーグを首位で突破した元JDTの廣瀬慧選手を擁するボルネオ・サマリンドFC、そして昨季のベトナム王者のハノイ公安FCと各国の強豪、計6チームで構成されています。

マレーシアのスポーツメディア、フラッシュ・スカンの取材に対してKLシティFCのスタンリー・バーナードCEOは「A組と比較すると、自分たちは明らかに死の組に入ったが、この大会でプレーできることを誇りに思い。相手が誰であっても気にしない。また自分たちが2022年のAFCカップで、ASEANゾーンで勝利し、決勝に進出して2位になった事実は、選手たちの経験において重要な役割を果たしている。」と述べ、ミロスラフ・クルヤナック監督はグループの上位2位以内に入ってノックアウトステージに進むことができると自信を持っていると話しています。

シンガポールのECサイト「ショッピー」が冠スポンサーとなっているショッピー・カップは7月から2025年5月にかけて開催され、グループステージは3試合はホームで、さらに3試合はアウェーで行われる予定です。

5月9日のニュース<br>・酸をかけられたファイサル・ハリムは今週皮膚移植手術を受ける見込み<br>・スランゴールFC会長のスランゴール州皇太子はファイサル選手の治療費を負担<br>・ジョホールは不戦勝?スランゴールはスンバンシー・カップ出場辞退を表明<br>・ジョホールはセランゴールの辞退に失望し、警察の保証を信じるべきと主張<br>・今季のマレーシアスーパーリーグは予定通り実施する- MFL

酸をかけられたファイサル・ハリムは今週皮膚移植手術を受ける見込み

酸をかけられ、第4度の火傷の診断を受けた代表FWファイサル・ハリムは、皮膚の移植手術を受けることになり、その移植手術に使用される皮膚が今週にも海外から届くと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

スランゴールFCスポーツ医学部長のハズワン・カイール医師は「皮膚は同種移植のために海外から持ち込む必要がある。移植手術は回復プロセスを助け、加速させるための手順の一部である。」と説明し、筋肉の回復などはその後になると説明しています。

スランゴールFC会長のスランゴール州皇太子はファイサル選手の治療費を負担

スランゴールFCの会長であるスランゴール州皇太子のトゥンク・アミール・シャー殿下は、酸をかけられたファイサル・ハリム選手は医療保険に加入しているにもかかわらず、回復するまでの治療費と医薬品費用を負担する準備があると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。。

スランゴールFCのシャリル・モクタール理事は「ファイサル選手の医療費は保険でカバーされているが、我々は彼に最善を尽くしたいと思っている。最善の治療というものは通常、高額な費用がかかるが、(スランゴールFC会長の)トゥンク・アミール・シャー殿下は、そういった心配する必要はないと保証し、必要な場合には、医療費を負担する準備があると述べていると明かしています。

この日、シャリル理事はトゥンク・アミール・シャー殿下に同行し、2回目の手術を完了した後、集中治療室 (ICU) にいるファイサル選手を訪問しています。訪問後にメディアに対応したシャリル理事は、「ファイサル選手はすでに食事ができるようになてはいるが、まだ軟いものを摂取している。また、起きて軽い運動をしたがっているようで、サッカーに関連した運動をしたがっている」と説明しています。

ジョホールは不戦勝?スランゴールはスンバンシー・カップ出場辞退を表明

今週金曜日5月10日に開幕する今季のマレーシアスーパーリーグ(MSL)はスランゴールFC対ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が開幕戦で対戦する予定になっています。JDTのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで予定されているこの試合は前年のリーグ優勝チームとマレーシアカップ優勝チームが対戦するスンバンシー・カップを兼ねて行われます。

英国のFAコミュニティー・シールドを模して1995年から始まったいわばスーパーカップですが、スランゴールFCはこの試合を辞退することを発表しています。スランゴールFCは、「安全上の理由」をもとにリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)に対して試合の延期を要請したものの、MFLは警察と協力して十分な安全が確保できるとしてこの申請を拒否すると発表していました。

スランゴールFCは本日声明で、様々な関係者との詳細な調査と議論の後、この試合の出場を辞退するという難しい決断をしたと発表しています。「クラブ(スランゴールFC)は、長い間楽しみにしていた2024年スンバンシー・カップに参加しないという非常に難しい決定をしなければならなかった。」

さらに「現在の不安定な状況を考慮して、スランゴールFCは、チームの安全が最も重要であると考えており、あらゆる形態の暴力と脅威を真剣に受け止め、チームの安全に関する問題については一切妥協しないことを強く主張する」という声明を発表しています。

ジョホールはセランゴールの辞退に失望し、警察の保証を信じるべきと主張

スランゴールFCが開幕戦となるスンバンシー・カップ出場を辞退したことを受け、ジョホール・ダルル・タジムFCはクラブ公式SNSで声明を発表し、セランゴールFCの出場辞退という決定に失望していると表明しています。

JDTのアリスター・エドワーズCEO名で出された声明では、ラザルディン・フセイン警察庁長官とジョホール警察長官のM・クマール警視監は、チーム、選手、そしてサポーターの安全を最優先とすることを強調しています。

「スンバンシー・カップで選手を含むすべての人々の安全を確保するために、警察は1,500人の警官を配置して、安全面で妥協しないことを確認している。我々は、ファイサル・ハリムに関わる事件や、セランゴールFCの一部の個人に届いた脅迫を強く非難しますが、チームが試合に参加しないという決定を再考してくれることを期待しています。」

さらに「これは、警察の保証を受けても不安を感じるために、どのチームでも撤退する 『前例』を作ってしまう可能性があるためである」と声明は続いています。

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クラブの主力でもある代表選手が酸を浴びせられるという「前例のない」事件に対して、前例を作ることを非難するような声明は出さず、相手の出場辞退を受け入れて勝点を得る。また出場辞退についての処分はMFLに任せるという方法もあったはずですが、敢えてこの声明を出したことで、未だICUに入っているファイサル選手を思いやる国内サッカーファンの多くを敵に回してしまったことは間違いありません。

今季のマレーシアスーパーリーグは予定通り実施する- MFL

国内リーグのマレーシアスーパーリーグ(MSL)を運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)は、今週開幕するMSLの試合日程を維持することを決定しています。

MFLによる声明では、警察が今シーズンの全てのMSLの試合においてセキュリティを強化することを保証したと発表しています。

その一例として、通常の3倍に当たる1,500人の警察官が、5月10日にスルタン・イブラヒム・スタジアムで行われるスンバンシー・カップで選手とファンの安全を確保するために配置され、厳重な管理とチェックが行われるとしています。

MFLは「警察によってセキュリティが保証されることから、安全レベルに対する懸念に基づいて申請されたスランゴールFCの試合延期要請を拒否した。」と声明で述べています。