3月28日のニュース<br>・クラブは抜け穴を利用して不正にクラブライセンスを取得?<br>・海外在住のマレーシア出身選手7名がマレーシア代表に合流予定-イスマイル殿下<br>・2026年女子アジア杯予選組合せ決定-マレーシアは強豪北朝鮮と同組に

マレーシア1部スーパーリーグは今季2024/25シーズンもあと2節を残すのみ。FIFAデイズが終わり、さてまた国内リーグ、となるところですが次節となる第24節は来週末の4月4日から6日の開催となっています。今週末に試合がないのは、イスラム教の断食月ラマダンが3月31日に終了し、週明けにはマレーシア最大の祝日「ハリ・ラヤ」となるからです。日本で言えばお盆や年末のような帰省ラッシュもあり、サッカーどころではありません。金曜日はイスラム教の礼拝日で、午前中に仕事を終え、昼の礼拝後には帰省というムスリム(イスラム教徒)も多そうです。また国内の主要高速道路は今日と明日は50%オフとなることが発表されており、帰省ラッシュが始まる反面、地方出身者が多い首都のクアラ・ルンプールは静かな週末になりそうです。

クラブが抜け穴を利用して不正にクラブライセンスを取得?

このブログでも繰り返し取り上げてきましたが、マレーシアリーグの「闇」の一つに給料未払い問題があります。今季開幕前にはクランタンFC(クランタン・ダルル・ナイムFCとは別のクラブです)が給料問題未解決を理由にクラブライセンスを発給されなかった結果、今季のスーパーリーグが13チーム編成になってしまいました。また開幕後には、クダ・ダルル・アマンFCとKLシティFCがやはり問題未解決を理由にいずれも勝点剥奪の処分を受けています。この他、処分対象とはなっていないものの、クランタン・ダルル・ナイムFCやサバFCなど他のクラブでも数ヶ月に及ぶ給料の「遅配」が発生していたことが報じられています。

そんな中、英字紙ニューストレイツタイムズは、「給与未払い問題を起こすようなクラブが、なぜ国内クラブライセンスを取得できるのか」という見出しの記事を掲載しています。

この記事では、その問いの答えとして「給料未払い問題を起こすクラブが『抜け穴』を利用しているからだ」とするサッカー法務アドバイザーのザフリ・アミヌラシッド氏のコメントを掲載しています。

ザフリ氏によると、近年、国内リーグでは給与未払いの報告が相次いでおり、さらにクラブライセンス発行に関する不正や、ライセンス交付を目的とした文書偽造の疑いも浮上しているということです。

さらにザフリ氏は、これらのクラブは負債を分割払いで清算することをリーグ主催者のマレーシアンフットボールリーグ(MFL)や、クラブライセンス交付を行う独立機関の第一次審査機関(FIB)に約束するだけで、国内クラブライセンスを取得できてしまうと指摘し、この抜け穴が繰り返し利用されているのが現状であると説明しています。

「FIBがクラブライセンス交付において、その審査に透明性を欠いている場合、アジアサッカー連盟(AFC)に苦情を申し立てることができる。さらにAFCが公平性の欠如を確認すれば、FIBの権限を取り消し、AFCがライセンス発行のプロセスを引き継ぐことも可能である」とザフリ氏は説明しています。

先週には、パフォーマンスアナリストのハズワン・ニザム・ファズィル氏とブラジル人理学療法士のヘルバー・リチャード氏が、クダ・ダルル・アマンFCから数カ月間の未払い給与があると訴えたことが報じられています。また首都圏の某クラブがライセンスが交付されるよう文書偽造を行ったとの疑いも報じられています。

アジアサッカー連盟(AFC)のウィンザー・ポール事務局長は、不正にクラブライセンスを取得したクラブへの対応はマレーシアサッカー協会(FAM)およびMFLの責任であると述べ、AFCが介入するのは誤った種類のライセンスが交付された場合のみであると説明しています。

ちなみに2025/26シーズンの国内クラブライセンス交付のための書類の提出期限は4月30日、ACLエリートやACL2に出場するのに必要なAFCクラブライセンスの申請書類提出の期限は3月31日となっています。

またこのクラブライセンス不正交付について、MFLのシャズリ・シャイク・モハマド暫定CEOはニューストレイツタイムズからの問い合わせに対して「その件については確認が必要であり、今ははっきりとは分からないので、確認する」と答え、同様の質問に対し、FAMのノール・アズマン・ラーマン事務局長は、「FAMに何か意見が届き、それがクラブライセンスに関するものであれば、MFLに対応を求める。もしMFLから回答がない場合のみ、FAMが対応し、(FAMの)懲戒委員会に持ち込まれる可能性もある」と互いに責任を逃れるような対応だったということです。

この記事の最後では、この官僚的な責任の押し付け合いが起こっている間、選手、コーチ、チームスタッフは給料未払いにより苦しみ続けていると述べ、FAMとMFLが責任を押し付け合い続けるなら、マレーシアサッカーを救うのは一体誰の役目なのだろうか?と締め括っています。


これに関連して、国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)のシャズリ・シャイク暫定CEOは、財政難に直面しているクラブを含めた全クラブと連絡を取り合い、クラブライセンス制度に必要な書類の提出を促しているとニューストレイツタイムズは別の記事で報じています。

「各クラブは(クラブライセンス申請書類提出期限の)4月30日までに全てのライセンス交付要件を満たすために努力する必要がある」と、最近行われたMFLのメディア向けイフタール(断食明けの食事)イベントで語っています。

このブログでは既に報じていますが、先週、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のオーナーでジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下は、JDTファンとの会合で、スリ・パハンFCとクダ・ダルル・アマンFCが来季のスーパーリーグに出場しない可能性が高いと驚きの発言をしています。

この他、今季はシンガポール1部プレミアリーグに参戦中のブルネイDPMM FCがスーパーリーグに復帰する、といううわさについて問われると、シャズリCEOは今後、正式に発表があるだろうと述べ、完全否定はしなかったということです。

このブルネイDPMM FCは、1979年からマレーシアリーグに参戦していたブルネイ代表と交代するする形で2005/06シーズンに当時の2部プレミアリーグに参戦すると、翌2006/07シーズンには1部スーパーリーグへ昇格するとそのシーズンには3位となり、翌2007/08シーズンには10位となりました。しかしその年、ブルネイサッカー協会(ブルネイFA)がブルネイ政府の下した判断により正式スポーツ団体としての資格を失うと、マレーシアサッカー協会(FAM)はブルネイDPPM FCのマレーシアリーグ参加を認めず、わずか3シーズンでマレーシアから撤退することになりました。(その後FIFAは2009年にブルネイサッカー協会に対して、政府の介入を理由に資格停止処分を下します。)

なおシャズリ氏は、FIFAが承認すれば、MFLは外国チームのMリーグ参加に前向きであると語っています。しかし、2017年にはこのDPMM FCが当時参戦していたシンガポールリーグからマレーシアリーグへの復帰を図った際、MFL(当時の名称はFMLLP)が、ブルネイ人選手は外国籍選手としてのみ登録可能で、それ以外はマレーシア人でチームを編成すること、またホームの試合はマレーシア国内で行うことなどの条件を出しました。この結果、DPMMは復帰を見送った経緯があるため、今回、再参戦となればMFLがリーグ参加に際してDPMMにどのような条件を提示するのかが気になります。

海外在住のマレーシア出身選手7名がマレーシア代表に合流予定-イスマイル殿下

先日の2027年アジア杯3次予選では、代表合流からわずか数日のヘクター・へベルの活躍でネパールに勝利したマレーシア代表。オランダ出身のヘクター・ヘヴェルとスペイン出身のガブリエル・パルメロの両選手がマレーシアにルーツ持つ帰化選手として今回の試合前の合宿に参加しましたが、ネパール戦に先発したヘベル選手は先制点を決め、さらにはMOMにも選ばれるほどの活躍でした。

次戦となるのは6月のベトナム戦ですが、東南アジアNo. 2、FIFAランキング114位は同132位のマレーシアにとっては厳しい相手です。そんな中で代表チーム強化に積極的に関わるジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下は、自身のSNSで海外在住のマレーシア出身選手7名が加わる見通しであると投稿しています。

今季の優勝を含めリーグ11連覇を果たしたジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のオーナーでもあるイスマイル殿下は、3月25日に行われた2027年アジア杯予選でのネパール戦の後に投稿し、海外在住のマレーシア出身選手7名の加入が、代表チームの質をさらに向上させだろうと述べています。

「まだ道のりは長いが、(帰化選手による代表強化策によって)全ての面で継続的な進歩と向上が見られるだろうと確信している。今後さらに7名の海外在住のマレーシア人選手が加わることで、チームの質が向上するだろう。重要なのは、我々の代表チームが主要な国際大会で戦い、尊敬を得ることだ。この目標を達成するためには、団結し、忍耐強くあることが必要だ。」と投稿したイスマイル殿下は、大切なのは代表チーム強化のスピードではなく、目指す方向であるとも、Xに投稿しています。


へヴェル選手はこれまでの代表チームにわずか1試合で「変化」をもたらした選手で、同様の質の高い帰化選手が今後、ハリマウ・マラヤ(マレーシア代表の愛称「マラヤの虎」の意味)に加わることは、過去10年以上、勝利したことがないベトナムとの対戦にも希望が湧いてきます。その一方で気になるのは、この新たな帰化選手の情報が、代表チームを運営している(はずの)マレーシアサッカー協会(FAM)からではなく、前FAM会長とはいえ、現在は協会内の人間でない、いわば一個人のイスマイル殿下から漏れてくること。国外のサッカー関係者とのネットワークは誰よりも広く、強力なのは事実で、ピーター・クラモフスキー監督は、イスマイル殿下の「個人的なアドバイザー」のティム・ケイヒル氏と同郷のオーストラリア出身で、チーム帯同のスポーツ医療専門家のクレイグ・ダンカン氏もやはりオーストラリア出身であることから、イスマイル殿下はこれらの人選に関与していそうです。以前はマレーシア代表チームをマレーシアサッカー協会(FAM)から完全に独立させて「民営化」する案なども披露したイスマイル殿下ですが、できれば是非ともFAMに戻り、内部から改革を進めて欲しいと思っているのは私だけではないように思います。

2026年女子アジア杯予選組合せ決定-マレーシアは強豪北朝鮮と同組に

3月27日に2026年女子アジア杯予選の組合せ抽選がマレーシアのクアラ・ルンプールにあるAFCハウスで行われ、1995年以来の本大会出場を目指すマレーシア女子代表はH組に入り、予選開催国となるタジキスタン、パレスチナ、そして過去3度の優勝経験を持つ北朝鮮と同組に入っています。

この日の抽選では、5チームで編成されるA組とB組、4チームで編成されるC組からH組が決定し、各組とも6月23日から7月5日にかけて行われる予選を戦います。来年3月1日から21日までオーストラリアのシドニー、パース、ゴールドコーストの3都市で開催される本大会へは予選各組の首位のみが出場します。

グループ別対戦チーム

A組:イラン、ヨルダン(開催国)、レバノン、シンガポール、ブータン
B組:タイ(開催国)、インド、モンゴル、東ティモール、イラク
C組:ミャンマー(開催国)、バーレーン、バングラデシュ、トルクメニスタン
D組:チャイニーズタイペイ、インドネシア(開催国)、キルギス、パキスタン
E組:ベトナム(開催国)、グアム、アラブ首長国連邦、モルディブ
F組:ウズベキスタン(開催国)、ネパール、ラオス、スリランカ
G組:フィリピン、香港、中国、カンボジア(開催国)、サウジアラビア
H組:北朝鮮、マレーシア、パレスチナ、タジキスタン(開催国)

2026年女子アジア杯は、2022年にインドで開催された前回大会から出場チームが4チーム増えて12チームとなっています。既に出場が決まっているのは開催国のオーストラリア、前回大会のチャンピオンで過去9回の優勝経験を持つ中華人民共和国、そして同じく前回大会準優勝の日本、同3位の韓国の4チームで、ここに予選を突破した8チームが加わります。なお、この大会の上位6チームには、2027年FIFA女子W杯2027(ブラジル)の出場権が与えられます。


マレーシアが最後に女子アジア杯に出場したのは1995年で、このときの大会がマレーシアのコタ・キナバルで開催されたことから、開催国枠での出場でした。またマレーシア女子代表がこの大会で残した過去最高成績は、1983年にタイで開催された大会での3位入賞です。

3月26日のニュース:アジア杯予選開幕-クラモフスキー新監督のマレーシアは白星スタート

日本や韓国などアジアの強豪2026年W杯3次予選に臨む中、2次予選で敗れた他国はこの日から始まった2027年アジア杯予選に臨んでいます。前FC東京監督のピーター・クラモフスキー監督が就任したマレーシアは、予選F組の初戦でネパールと対戦して2-0と勝利し、好発進を果たしています。

クラモフスキー監督はこの試合に3バックを採用し、左右SBにシャルル・サアドとマット・ディヴィーズのJDTコンビを起用、CBに代表戦7試合目となるハリス・ハイカル(スランゴールFC)を配置しています。中盤は前任のキム・パンゴン監督時代にはCBで起用され続けたディオン・クールズが、所属するタイ1部ブリーラム・ユナイテッドでプレーする右WBに入り、左WBがラヴェル・コービン=オング、中央にはこの試合が代表デビューとなるオランダ出身のヘクター・ヘヴェル(ポルトガル2部ポルティモネンセSC)とノーア・ライネ(スランゴールFC)が並びます。前線には左からエンドリック・ドス・サントス(ベトナム1部ホーチミンシティ)、ロメル・モラレス(JDT)、そしてマレーシアの至宝アリフ・アイマン(JDT)という3-4-3の布陣です。(以下はこの試合の先発XIとベンチ入りの選手)

日本人の笠原寛貴が主審を務めたこの試合は、クアラ・ルンプールから300km以上離れたマレー半島南端のジョホール州で行われたため、ストリーミング配信で観戦しました。試合は開始から自陣で引き気味にプレーするネパールに対し、マレーシアが試合をコントロールします。しかし、ペナルティエリア付近まではボールは運ぶものの、エンドリックやアリフ・アイマンの放ったシュートが枠外に外れるなど、ゴールまでには至りません。マレーシアが一方的に攻める場面が続く中、配信が突然中断。そして再開した時には、初代表初先発となった28歳のヘクター・ハヴェルがペナルティエリアの外から放ったシュートがゴールとなり、既にマレーシアが先制していました。(笑)中断は機材トラブルが原因だったようですが、下にも添付したハイライト映像でもわかるように、ゴールの瞬間はピッチ全体を映した映像も、ゴールの瞬間のはっきりした映像も映っていません。(このフィールドレベルのカメラの映像も試合配信中には見ることができませんでした。)また中継ではシュートの角度が変わった結果のゴールであると実況されており、映像を見る限りではゴールポストに当たったシュートがうまく弾んでゴールとなったようです。

とは言え、ホームのマレーシアが先制すると、このゴールで目が覚めたのか、映像が再開した際にはネパールも積極的に攻めている様子が見られ、ついに35分にこの試合初のPKを得ます。しかし直接ゴールを狙ったシュートはゴールの上を大きく超えていきます。前半はともにそれ以上のゴールは挙げられず、マレーシアが1点をリードして、前半を折り返します。

後半に入っても、決定的なチャンスを得られないマレーシアでしたが、70分に相手ペナルティエリアの左外でPKを得ます。エンドリックがこのPKを蹴る前に、アリフ・アイマンが左サイドに走ります。これにつられてネパールDFが左に動くと、エンドリックは逆に右にいたクター・へヴェルへパスを出します。これをヘヴェル選手がノールックで左のアリフ選手へパスすると、今度はアリフ選手がカットバック気味にファーサイドへボールを送ります。するとそこにはフリーのラベル・コービン・オングが待ち構えており、このボールを難なく蹴り込みゴール!練習通りにコンビネーションがぴたりと決まったプレーでマレーシアが追加点を奪います。奇しくも2019年6月2日のネパール戦が代表デビューだったコービン=オング選手の代表戦41試合目にして通算5ゴール目で、マレーシアはリードを広げます。

74分にはほぼ1年ぶりに代表復帰となったファイサル・ハリムが登場して、観衆は代表戦としては寂しい7,895名が最大の盛り上がりを見せた試合は、そのままマレーシアが逃げ切って、2大会連続出場を目指す2027年アジア杯へ向けて白星スタートを切りました。


代表デビュー戦でゴールを決めたヘクター・ヘヴェルは、TranfermarktではAMFとなっていますが、この試合ではむしろ下がり気味でDMF的なプレーを見せていましたが、これについて前スランゴールFC監督のニザム・ジャミル氏は、ヘヴェル選手が後方にいることで、左右のウイングバックがより高い位置に上がることができ、マレーシアの攻撃の組み立てが円滑になると説明しています。実際に左のラヴェル・コービン=オング、右のディオン・クールズがオーバーラップする場面は何度も見られましたし、ディオン・クールズは右WBが適正なポジションなのだろうことも伝わってきました。さらにヘヴェル選手は「ディープ・ライイング・プレーメーカー(後方から攻撃を組み立てる司令塔)」としての役割を果たしていたということで、攻撃の組み立てと創造性の中心となるような、まさにマレーシア代表が待ち望んでいた選手と言えそうです。

2027年アジア杯3次予選F組第1節
2025年3月25日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
マレーシア 1-0 ネパール
⚽️マレーシア:ヘクター・へベル(29分)、ラヴェル・コービン=オング(70分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。

なおF組のもう1試合はベトナムがグエン・バイ・ヴィの2ゴールやエースのグエン・クアン・ハイらのゴールでラオスに5-0と大勝しています。

6月11日のF組第2節ではマレーシアがホームにベトナムを迎えます。各組1位のチームのみが本戦出場となるこの3次予選では、マレーシアはベトナムに勝利しない限り本戦出場はあり得ませんが、そのベトナムとは2014年の東南アジアサッカー連盟選手権での勝利を最後に、現在は引き分けを挟んで7連敗中です。またこの間は3得点15失点(8試合)と圧倒されており、パク・ハンソ監督がベトナム代表を率いていた時代は手も足も出ませんでした。昨年就任したキム・サンシク監督となってからは、マレーシアはまだベトナムと対戦はありませんが、6月には10年ぶりの勝利を期待したいところです。

2027年アジア杯3次予選F組 順位表(第1節終了)

順位勝点
1ベトナム11005053
2マレーシア10102023
3ネパール101002-21
4ラオス100105-50

3月25日のニュース:2027年アジア杯3次予選ネパール対マレーシア戦試合前日会見

2027年アジア杯3次予選がいよいよ本日から始まります。来年2026年3月までと12ヶ月の長丁場ですが、F組でベトナム、ラオス、ネパールと同組になっているマレーシアは、アジア杯2大会連続出場を果たすためには、マレーシアはこの組を突破する最有力候補のベトナム戦以外の全試合に勝つことが大前提となります。

またこの試合は、今年1月1日付で就任したピーター・クラモフスキー監督が初めて指揮を取る試合でもある他、オランダ生まれのAMFエクトル・へベル(29歳、ポルトガル2部ポルティモネンセ)と、スペイン生まれで左SBを得意とするガブリエル・パルメロ(23歳、スペイン4部CDテネリフェB)の両帰化選手も代表合宿に合流しており、この試合で新監督と新戦力がマレーシア代表サポーターをがっちりと掴めるかどうかに注目が集まります。

その一方でこの試合は、マレーシア代表のホームで、首都クアラ・ルンプールにあるブキ・ジャリル国立競技場ではなく、ジョホール・ダルル・タジムFCの本拠地、ジョホール州にあるスルタン・イブラヒム・スタジアムでの開催となっています。またイスラム教の断食月ラマダン中ということもあり、午後10時のキックオフとなっていることもあってか、昨日3月24日の夜9時の時点では、マレーシアサッカー協会の発表によると、これまでに売れたチケットの枚数が2,374枚と代表戦としてかなり寂しい数字になっています。

FIFAランキングは指標にならない-クラモフスキー監督

2027年アジアカップ3次予選の初戦でFIFAランキング132位のマレーシアは、同175位のネパールと対戦します。この試合が就任後初の対外試合となるピーター・クラモフスキー監督は、ランキングの差をチーム力の差を示す指標として考えるべきではないと強調しています。

オーストラリア出身のクラモフスキー監督は、同じオーストラリア出身のマシュー・ロス監督率いるネパール代表との初戦を勝利で飾ることを目指し、良い結果とともに良いパフォーマンスを見せたいと、試合前会見で述べています。

クラモフスキー監督は、マレーシア代表の選手たちには戦術やサッカー哲学を理解するだけでなく、勝者のメンタリティを築くことが求められていると述べています。。

「勝者のメンタリティは、日々の取り組みの中で一貫性を保つことが重要である。これまで良い日々を積み重ねてきたが、その勢いを維持し続ける必要がある。だからこそ、明日(3月25日)の試合では良いスタートを切り、強いチームとしての姿勢を見せたいと考えている。そして、その後も勝者のメンタリティを築き、トップチームの一員として自らの地位を確立していきたい」と述べています。

自身初の代表監督就任でもあり、試合に向けたプレッシャーについて質問された際、クラモフスキー監督は、「プレッシャーは私の辞書にはない。またネパール戦は私個人に関することではなく、マレーシア代表に関することであり、マレーシア国民に誇りを持ってもらえるような魅力的なサッカーを目指している。」と述べ、またサポーターからの評価も高かった前任のキム・パンゴン監督(現蔚山HD監督)との比較も気にしていないと語っています。

ファイサル・ハリムには物語がある-クラモフスキー監督

またピーター・クラモフスキー監督は、代表に復帰したファイサル・ハリムについて会見で問われると「相手を混乱させるほどの攻撃的なプレーができる俊敏な選手」だと評価し、代表復帰は非常にふさわしいとも述べています。

「彼が代表チームに戻ってきたのは本当に素晴らしいことだ。彼は優れたウィングで、相手に大きな脅威を与えられる選手である。彼のプレーには明確な意図と激しい攻撃のリズムがあり、今が代表復帰に最適なタイミングだと考えている。」

「彼はそのチャンスにふさわしい選手であり、彼には語るべき物語がある。その物語は、彼のさらなる成長とともに続いていくだろう」とも述べたクラモフスキー監督は、ファイサル選手のチームへの適応力を高く評価した上で、(代表合宿が始まってからの)8日間の合宿で全選手が良い反応を示していると説明しています。

「彼は非常にうまくチームに溶け込んでおり、それは他の選手たちも同様です。選手たちのフィジカル面にはとても満足している。」

「重要なのは、選手一人ひとりをどう成長させられるかです。合宿は8日間でしたが、私たちの焦点はその期間だけではありません。現在の代表メンバー以外の選手に対しても、合宿以外の場面でフィジカル強化に取り組むための戦略があります」と語った。

2024年は、1月アジア杯韓国戦でゴールを挙げるなどの活躍を見せたファイサル選手は、同年5月5日にスランゴール州内のショッピングモールで何者かに酸をかけられ、身体の一部に第4度のやけどを負い、約10日間集中治療室(ICU)で治療を受けました。その後のW杯予選なども出場できず、今回が酸攻撃以来初めての代表合宿参加となる。

なおファイサル選手自身は、は3月8日のスーパーリーグ、セランゴールFC対ケランタン・ダルル・ナイムFC戦ではハットトリックを決め、さらに復帰後初となるフル出場を果たすなど、完全復活を印象付けるような活躍もしています。

ネパールを侮ってはいけない-マレーシア代表キャプテン

試合前会見に出席したDFマット・ディヴィーズは、ネパール戦は、非常に厳しい試合になるだろうと語っています。

ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)所属の右SBであるディヴィーズは、昨年3月15日に行われた非公開の親善試合でマレーシアがネパールに5-1で勝利したものの、その結果は参考にならないと強調しています。

今回の試合でキャプテンを務めるディヴィーズ選手は、今回のネパール代表は、マシュー・ロス監督の下で数名の新戦力が加わり、チームがより強化されていると指摘しています。ネパールは先週金曜日の国際親善試合で格上のシンガポールに1-0で勝利しています。

「ネパールは新監督の戦術に慣れてきており、戦術面での成長が見られる。そのため、我々は警戒して戦わなければなりません。ネパールの選手たちの実力を過小評価することはできない。同時に、私たちも戦術プランに沿って安定したプレーをし、プレッシャーを感じることなく良い結果を目指して試合に臨みたい」とディヴィーズ選手は語っています。


このディヴィーズ選手は1995年にオーストラリア生まれましたが、母親がマレーシア人であることからマレーシア国籍を取得し、2015年に代表デビユーを果たしています。このディヴィーズ選手は会見の冒頭で、代表チームに練習施設を提供したジョホール州摂政で、自身が所属するJDTのオーナーでもあるトゥンク・イスマイル殿下に対してマレーシア語で感謝の意を表明しています。この会見映像がSNSで広がると、ディヴィーズ選手のマレーシア語が非常に流暢だったこともあり、「これこそ帰化選手のあるべき姿だ」とあちこちで称賛の声が上がっています。

マレーシア戦は新たなスタートになる-ネパール代表監督

一方、ネパール代表のマシュー・ロス監督は、マレーシア戦に向けた戦術を問われると、引き分けを狙うつもりはないと語っています。

「今回のマレーシア戦は、ネパールサッカーにとって新たな章の始まりである。我々はアジア杯予選でどのチームとも戦える実力があることを証明したいと考えている。シンガポール戦での1-0の勝利は、マレーシアとの試合に向けての自信につながっている。」と話したロス監督は、「最初から引き分け狙いの姿勢では結局負けてしまうので、明日の試合は前向きな結果を目指して臨みたい。選手たちはトレーニングで非常に真剣に取り組んでおり、これが現実的な目標だと確信している。」とロス監督は自身を見せています。

「シンガポールでの親善試合後、短期間のリカバリーと戦術分析を行い、各ポジションをさらに強化するための対策を講じた。あとは選手たちが再び100%のコンディションに戻れるように努めているところである」と語っています。

ピーター・クラモフスキー監督が就任して初の対外試合となるマレーシア代表のプレースタイルを分析するのは難しいとも述べたロス監督は、その理由として、新たな帰化選手たちがチームに加わっていることも理由に挙げています。

「マレーシア代表に加わった帰化選手自体にについては特にコメントはない。カタールやUAEのような国々でも同様のことが行われており、それば全て規定に基づいたものです。一方、ネパール代表の選手は全員がネパールで生まれ育った選手だけで構成されており、帰化選手は一人もいない。そして我々はそのことに誇りを持ってい」とロス監督は語っています。

集中してベストを尽くしたい-ネパール代表キャプテン

またネパール代表のキャプテン、キラン・クマール・リンブは、昨年キム・パン・ゴン監督率いるマレーシアに1-5で敗れた過去にはこだわらず、その悔しさを糧にして明日の試合に臨むと意気込みを語っています。

「もちろん、前回の試合の敗戦は我々にとって痛手だったが、それを教訓にして立ち直った。過去の出来事は忘れ、マレーシア戦に集中してベストを尽くしたいと考えている。」

「確かに、我々は厳しいグループに入っている。マレーシアだけでなく、ラオスやベトナムとも対戦しなければならず、これら3チームに対してどれだけ戦えるかが私たちの試練となるだろう」とリンブ選手は語っています。

なおマレーシアとネパールはこれまで過去8試合対戦しており、その結果はマレーシアの6勝2分となっています。

1983年9月19日 – マレーシア 7-0 ネパール
1985年3月16日 – ネパール 0-0 マレーシア
1985年3月31日 – マレーシア 5-0 ネパール
1989年5月23日 – マレーシア 2-0 ネパール
1989年6月7日 – マレーシア 3-0 ネパール
2008年10月15日 – マレーシア 4-0 ネパール
2019年6月2日 – マレーシア 2-2 ネパール
2024年3月15日(非公開試合)- マレーシア 5-1 ネパール

3月24日のニュース<br>・2024/25ナショナルフットボールアウォーズ各賞の候補者が発表<br>・首都圏のクラブが書類偽造問題でリーグ除名の危機に<br>・来季のU23リーグが廃止に-各クラブの財政圧迫が原因

2024/25ナショナルフットボールアウォーズ各賞の候補者が発表

ニュースと言うほど新しい話題ではないですが、今季2024/25シーズンのナショナルフットボールアウォーズ(マレーシア語での呼称はABK24/25)の各賞の最終候補が発表になっています。

日本で言えばJリーグアウォーズにあたるナショナルフットボールアウォーズは、2-24/25シーズンのマレーシア国内リーグ(Mリーグ)において活躍した選手や監督を中心に、今季のマレーシアサッカー界に貢献したさまざまな関係者の功績を称えるために開催されます。

2023年にはU23チームが争うMFLカップが創設されましたが、ABK24では、このMFLカップ出場選手を表彰する「MFL最優秀選手」や「MFLカップ得点王」という2つの新しいカテゴリーを含めて16部門と、2019年シーズン以来となる復活した「最優秀サポーター」を合わせた以下の全17分門が表彰対象となります。

 1)最優秀ゴールキーパー
 2)最優秀ディフェンダ
 3)最優秀ミッドフィルダー
 4)最優秀フォワード
 5)最優秀監督
 6)最優秀外国人選手
 7)最優秀若手選手
 8)最優秀MFLカップ選手
 9)最優秀選手 (MVP)
10)フェアプレー賞
11)最優秀チーム
12)ベストゴール賞
13)FAN XI(サポーターが選んだベストXI)
14)ゴールデンブーツ賞 – MFLカップ部門
15)ゴールデンブーツ賞 – スーパーリーグ (マレーシア人選手)
16)ゴールデンブーツ賞 – スーパーリーグ
17)最優秀サポーター賞

最終選考を前に今季のMリーグでプレーした合計498名の選手の中からABK24/25選考委員会によって各部門のトップ10選手が既に選ばれています。なお各選手は、それぞれのクラブが登録したポジションに基づいて選出されています。各賞の受賞者はマレーシア1部スーパーリーグ13クラブの監督、キャプテン、MFL出場13クラブの監督、キャプテン、そして26名のメディア関係者の投票により決定されます。なお以下は8部門のトップ10選手のリストです。

1)最優秀ゴールキーパー
アズリ・ガニ (クアラルンプール・シティFC)
ブライアン・シー (PDRM FC)
ダミアン・リム (サバFC)
ハジク・ナズリ (ペラFC)
カラムラ・アル=ハフィズ (セランゴールFC)
シャリル・サアリ (クチン・シティFC)
シーク・イズハン (ペナンFC)
シーハン・ハズミ (ジョホール・ダルル・タジムFC)
ワン・シャズミン (ケダ・ダルル・アマンFC)
ザリフ・イルファン (スリ・パハンFC)

2)最優秀ディフェンダー
アダム・ノー・アズリン (スリ・パハンFC)
ダニエル・ティン (サバFC)
ドミニク・タン (サバFC)
フェロズ・バハルディン (ジョホール・ダルル・タジムFC)
ハリス・ハイカル (セランゴールFC)
イブラヒム・マヌシ (スリ・パハンFC)
ジミー・レイモンド (クチン・シティFC)
クエンティン・チェン (セランゴールFC)
シャルル・ニザム (トレンガヌFC)
ウバイドゥラー (トレンガヌFC)

3)最優秀ミッドフィルダー
アキヤ・ラシド (トレンガヌFC)
サファウィ・ラシド (トレンガヌFC)
アミルル・ヒシャム (ケダ・ダルル・アマンFC)
アリフ・アイマン (ジョホール・ダルル・タジムFC)
ダニアル・アミル (クチン・シティFC)
ファズルル・アミル (ケランタン・ダルル・ナイムFC)
ノーア・ライネ (セランゴールFC)
スチュアート・ウィルキン (サバFC)
シャミル・クティ (ペナンFC)
ワン・ザック・ハイカル (ペラFC)

4)最優秀フォワード
ダレン・ロック (サバFC)
ジャフリ・フィルダウス・チュウ(サバFC)
パウロ・ジョズエ (クアラルンプール・シティFC)
ハキミ・アジム (クアラルンプール・シティFC)
ガブリエル・ニーステルロイ(ジョホール・ダルル・タジムFCII-MFLカップ)
ロメル・モラレス (ジョホール・ダルル・タジムFC)
シャフィク・アフマド (ケダ・ダルル・アマンFC)
ラマダン・サイフラー (クチン・シティFC)
シャーレル・フィクリ (PDRM FC)
エセキエル・アグエロ(スリ・パハンFC)

5)最優秀監督
エクトル・ビドリオ (ジョホール・ダルル・タジムFC)
アブディ・ハサン (セランゴールFC-MFLカップ)
P・マニアム (PDRM FC)
ミラスロフ・クリヤナッチ (KLシティFC)
バドロル・アフザン・ラザリ (トレンガヌFC)
ヴィクター・アンドラン (ケダ・ダルル・アマンFC)
ユスリ・チェ・ラー (ペラFC)
ファンディ・アフマド(スリ・パハンFC)
アイディル・シャリン (クチン・シティFC)
喜熨斗勝史 (Selangor FC)

6)最優秀外国人選手
ベルグソン・ダ・シルヴァ (ジョホール・ダルル・タジムFC)
ヘベルチ・フェルナンデス(ジョホール・ダルル・タジムFC)
フアン・ムニス(ジョホール・ダルル・タジムFC)
アリ・オルワン(スランゴールFC)
ヨハンドリ・オロスコ(スランゴールFC)
アルヴィン・フォルテス(スランゴールFC)
ジャンカルロ・ガリフオコ(KLシティFC)
クパー・シャーマン(スリ・パハンFC)
マヌエル・イダルゴ(スリ・パハンFC)
ルチアーノ・ゴイコチェア(ペラFC)

7)最優秀若手選手
アダム・ダニアル(クランタン・ダルル・ナイムFC)
アリフ・イズワン(セランゴールFC)
ハイカル・ダニッシュ(セランゴールFC)
ラーマン・ダウド(セランゴールFC)
アズハド・ハラズ(サバFC)
ダニエル・ハキミ(ペラFC)
G. パヴィスラン(ジョホール・ダルル・タジムFCII-MFLカップ)
ナジムディン・アクマル(ジョホール・ダルル・タジムFCII-MFLカップ)
ハキミ・アジム(KLシティFC)
ウバイドゥッラー・シャムスル(トレンガヌFC)

8)最優秀MFLカップ選手
アフィーク・イクマル(ケダー・ダルル・アマンFC B)
アフィク・ヒルマン(KLシティ・エクステンション)
アイリエル・ザフラン(スリ・パハンFC)
アスラフ・アリフディン(クランタン・ダルル・ナイムFC)
ガブリエル・ニステルローイ(ジョホール・ダルル・タジムII)
ハリー・ダニッシュ(セランゴールFC)
ハイカル・ダニッシュ(セランゴールFC)
ラーマン・ダウド(セランゴールFC)
ロヒシャム・ハイカル(セランゴールFC)
S. ビマル・ナイル(ヌグリ・スンビランFC)

なお以上の候補を選んだABK24-25 選考委員会メンバーは以下の通りです。
ナフジ・ザイン -マレーシア U23代表監督
ラズマン・ロスラン – マレーシアプロサッカー選手協会(PFAM)副会長
スレイマン・フシン – マレーシアプロサッカーコーチ協会(PJBM)役員
フィルダウス・ハシム – マレーシアスポーツ記者協会(SAM)役員
イズワン・モハド・ノール – マレーシアリーグ公式放送代表(HB)

首都圏のクラブが書類偽造問題でリーグ除名の危機に

クアラルンプールからスランゴール州にかけての首都圏一体はその地域を流れる川に因んでクラン渓谷とも呼ばれていますが、マレーシアのメディア、マジョリティはこのクラン渓谷に本拠地を持つあるサッカークラブが、クラブライセンス取得のための文書手続きを簡略化しようとした結果、リーグから除名されるリスクに直面していると報じています。なおクラン渓谷に本拠地を持つクラブはスランゴールFC、KLシティFC、そしてPDRM FCの3つのクラブです。

この記事の中でスポーツ関連を専門とするザフリ・アミヌラシッド弁護士は、文書偽造は刑法に基づく重大な違反行為であると指摘している他、この問題はマレーシアサッカー協会(FAM)の規定に基づく処分を受ける恐れがありとしています。FAMの懲戒規定第64条によると、文書偽造に関与した個人には罰金および12カ月以上のサッカー活動停止処分が科される可能性があり、さらに、関与したクラブはリーグ除名などの厳しい処分を受けるリスクがあるということです。

ザフリ弁護士の説明によると「FAMの懲戒委員会が調査を行い、必要に応じて処分を決定する。警察に報告された場合、当局が追加調査を行い、十分な証拠がそろい起訴が許可されれば、加害者は裁判にかけられる可能性もある」と述べ、さらに文書偽造の問題は、関与したクラブだけでなく、マレーシアリーグ全体の評判にも悪影響を及ぼすこともあるとして、罪を犯したクラブはライセンスの取り消し、罰金、勝点の減点、出場停止処分などさまざまな制裁を受ける可能性があるとも話しています。また、FAMがこの問題を放置すれば、国際サッカー連盟(FIFA)から制裁を受ける恐れもあるとも警告しています。

以前、このマジョリティは、スーパーリーグのクラブがクラブライセンスおよびアジアサッカー連盟(AFC)ライセンス申請の際、文書を偽造したと報時ています。またこのクラブのサポーターの間でもこの問題は話題になっており、その一部がクラブオーナーに直接、質問する場面も見られました。しかし、クラブオーナーはこの件についての情報を持っておらず、サポーターからはクラブ運営の透明性に対する不信感が高まっています。

また、マジョリティの取材に対して、国内リーグを運営するマレーシアンサッカーリーグ(MFL)のモハド・シャズリ・シャイク・モハドCEO代行は、この件について調査を進めると述べたと言うことです。

来季のU23リーグが廃止に-各クラブの財政圧迫が原因


国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は3月24日に、来季2025/26シーズンのMFLカップの廃止が決定したことを発表しています。なおこの決定は、2月19日に行われた国内1部スーパーリーグの13クラブとMFLとの協議を経て決定されたと言うことです。

若手選手の育成を目的として、スーパーリーグ参加クラブのU23チーム同士のリーグ戦として2023年に創設されたMFLカップは、国内クラブライセンス取得要件の一つとなっており、それまでU23チームを持たなかったクラブも含めた全13クラブはMFLカップに出場するU23チームを編成することが求められました。

しかし2023年、2024/25年と2シーズンを経た結果、MFLは、選手の給与や移動費などの運営費が各クラブにとって大きな負担となり、MFLカップの運用費用だけで全クラブの総費用が2800万リンギ(およそ9億5000万円)に達していたことを明らかにしています。この結果、全13クラブの意見を踏まえた上で、MFLはクラブの財政状況を強化し、安定させるためにMFLカップの廃止を決断する必要があると考えました。

さらに、MFLは、MFLカップに出場していた20歳から23歳の選手は年齢制限のある大会に出場するよりも、トップチームでのポジション争いに挑む時期であるとの認識で一致したと、MFLの公式サイトでは発表されています。

来季2025/26シーズンからMFLカップは行われなくなりますが、若手選手の育成は引き続き重要視されており、20歳以下の「プレジデントカップ」および18歳以下の「ユースカップ」は引き続き開催されるとしています。ただしこのプレジデントカップとユースカップは、MFLではなくマレーシアサッカー協会(FAM)が主催し、しかもプレジデントカップは1985年から、ユースカップは2007年から開催されているリーグ戦であり、MFLカップ廃止とは全く無関係に行われる大会です。

なおMFLは、23歳以下のリーグであるMFLカップが廃止となる一方で、スーパーリーグの強化に引き続き取り組んでいくとしていますが、国内クラブの民営化に伴い、2015年に発足したマレーシアンフットボールリーグは、2部プレミアリーグの廃止も行なっており、これをMFLが主張する通り各クラブの財政の健全化のための産みの苦しみと見るのか、目先の利益と引き換えに将来につながる若手世代育成を切り捨てる悪手なのかは、今後明らかになるでしょう。

3月23日のニュース<br>・来週のアジア杯予選初戦で対戦するネパール代表が格上のシンガポール代表に1-0で勝利<br>・ジョホールは「紳士協定」を来季撤廃へ<br>・元リバプールのルイス・ガルシア氏がジョホールのCEOに就任

来週のアジア杯予選初戦で対戦するネパール代表が格上のシンガポール代表に1-0で勝利

3月21日に行われた国際親善試合でFIFAランキング175位のネパールは、12分にカウンターからギレスピー・ジュン・カルキがゴールを決め、同160位で日本人の小倉勉監督、帰化選手の仲村京雅選手を擁するシンガポールに1-0で勝利しています。なおネパール代表は、3月25日に2027年アジア杯3次予選の初戦として同132位のマレーシア代表と対戦します。

シンガポールの英字紙ストレイトタイムズによると、この試合後の会見で小倉監督は、「こんなプレーでは、どんなチームにも勝てない。自分が監督になって1年になるが、今回はシンガポール代表の最悪のパフォーマンスだ。」「ネパールは90分間戦い続けたが、我々は10分か15分程度しかファイトしなかった。それでは全く不十分だ。などと語ったそうです。

なおシンガポール代表は3月25日にFIFAランキング155位の香港代表と2027年アジア杯3次予選で対戦します。

ジョホールは「紳士協定」を来季撤廃へ

ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、来季のスーパーリーグでは、リーグ内の他のチームにローン移籍している選手に対し、JDTとの試合への出場禁止を撤廃する予定があると、マレーシア語紙ハリアンメトロが報じています。

これまで、JDTは他クラブにローン移籍している選手に対し、JDT戦への出場を禁止するという「紳士協定」を設けていましたが、これがマレーシアのサッカーファンや関係者の間で議論の的となっていました。

この紳士協定に基づき、ローン移籍している選手がJDTとの試合でプレーするのを禁止することで、JDTに有利に働いていると批判されることもありましたが、JDTのオーナーで、ジョホール州の摂政でもあるトゥンク・イスマイル殿下は、来季からこの紳士協定を撤廃する意向を示しています。

「スーパーリーグ内の他クラブにローン移籍している選手については、給与の半分は我々(JDT)が負担し、残りの半分はローン先のクラブが支払っている。しかし来季からは、ローン移籍中の選手がJDT戦に出場できるようにするつもりであり、クラブの経営陣にこの件について対応するよう求めている。」

「JDTからローンされた選手がいるクラブとJDTが対戦する際、JDTが有利だと思われたくないので、来季からは、ローンしている選手もJDT戦に出場できるようにする」と、イスマイル殿下はハリアンメトロとのインタビューで述べています。

JDTは過去数シーズンの間、この「紳士協定」を採用しており、一部のファンからはこれがJDTにとって有利な戦略だという声が上がっていました。しかし、この「紳士協定」自体は、JDTとローン先のクラブの合意に基づくものであり、JDTが何か規則違反を犯していたわけではありません。


JDTのローン移籍について、個人的には「紳士協定」以上に気になることがあります。それはスーパーリーグ内でJDTから他のクラブへローン移籍している選手の数です。

クラブ名リーグ順位JDTからローン移籍中の選手
(年齢)
スランゴールFC2位なし
クチンシティFC3位FWラマダン・サイフラー
*MFダニエル・アミル
サバFC4位*DFダニエル・ティン(33)
トレンガヌFC5位*MFサファウィ・ラシド(28)
*DFアザム・アズミ(24)
*#アキヤ・ラシド(25)
KLシティFC6位*DFデクラン・ランバート(26)
MFライアン・ランバート(26)
ペラFC7位*GKハジク・ナズリ(27)
PDRM FC8位なし
ペナンFC9位*MFシャミル・クティ(27)
スリ・パハンFC10位MFマヌエル・イダルゴ(25)
クダ・ダルル・アマンFC11位*FWシャフィク・アフマド(29)
ヌグリスンビランFC12位なし
クランタン・ダルル・ナイムFC13位なし

ローン移籍中の人数は12名、移籍先クラブ数はスーパーリーグのJDTを除く12チーム中8クラブに及びます。(注:トレンガヌのアキヤ・ラシドは今季途中に完全移籍済み)また*印の9選手はマレーシア代表でプレー経験のある選手で、この内、ダニエル・ティン(サバFC)、サファウィ・ラシド、アキヤ・ラシド(いずれもトレンガヌFC)、ハジク・ナズリ(ペラFC)、シャミル・クティ(ペナンFC)の5選手は、3月25日の2027年アジア杯予選に出場するマレーシア代表のメンバーでもあります。

このブログを読んでくださっている方であれば、マレーシアリーグのクラブの多くが資金不足に困っていること、そして無払い給料問題が複数のクラブで起きていることもご存知かと思います。そんな中でJDTからのローン移籍で選手を獲得できるとなれば、前述の通り支払う給料は半分で済み、しかも代表クラスの選手がローンできるわけです。また選手にとってもJDT内のポジション争いに敗れた結果、ベンチを温めるよりも他のクラブで試合出場時間を積み重ねることができ、またJDT自身も選手を無駄に飼い殺しせずに済むこの仕組みは、一見するとJDT、選手、移籍先クラブにとって「三方良し」にも思えます。

しかし今後も各クラブにJDTからのローン移籍の選手が増えていくと、いくら「紳士協定」を撤廃するとはいえ、ローン移籍中の選手が自身の給料の半分を支払うクラブ相手に全力を出せるのか、そこに無意識に縛りのようなものが発生しないのか、という疑問が起こります。しかし、それ以上に私が気になるのは、JDTが有望な選手を次々に獲得してはローン移籍で貸し出し、結果として国内の有力選手の大半がJDTの選手になってしまう、という点です。例えば上の表で言えば、トレンガヌのアザム・アズミ、KLシティの双子のランバート兄弟、スリ・パハンのマヌエル・イダルゴは、JDTと契約したものの、JDTでプレーすることは一度もなく、元々いた所属クラブにそのままローン移籍した選手たちです。将来の代表の右SBを担うと言われるアザム選手や、アルゼンチン出身で来年2026年5月にはマレーシアでのプレーが5年となり、帰化申請が可能になるイダルゴ選手の獲得といった言わば「先行投資」は、まさに資金力のあるJDTだからこそなせる技です。しかしこの先行投資が今後も続いたばあい、それが果たしてマレーシアリーグにとって、ひいてはマレーシアサッカーにとって良いことなのか。個人的には1クラブが1年間に国内の他クラブへローン移籍させることができる選手の数を制限するといった規定を設けるなど、国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)による英断が必要と思います。しかしそのMFLもラ・リガから来たCEOが半年も持たずに辞任するなど、組織としての機能を果たしていないので、状況はすぐには変わりそうにはありません。

元リバプールのルイス・ガルシア氏がジョホールのCEOに就任

マレーシア国内リーグ11連覇中の絶対王者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、元スペイン代表でUEFAチャンピオンズリーグ優勝経験を持つルイス・ガルシア氏を、新たな最高経営責任者(CEO)に任命したことを発表しています。

数日前に自身のSNSにマレーシアの国民食「ナシレマ」の画像を投稿するなど、マレーシアのクラブCEO就任が秒読みとされていたルイス・ガルシア氏は、リバプールのOB戦「バトルオブレッズ」なども含め、何度かマレーシアを訪れています。

JDTのSNSに投稿された発表では、「元リバプール、バルセロナ、アトレティコ・マドリードの選手であるルイス・ガルシア氏は、UEFAプロライセンスおよびUEFAエグゼクティブ・マスター(国際選手向け)を取得しており、これまでFIFA、UEFA、ラ・リーガのアンバサダーも務めた経歴があります」と記されており、今回の人事はクラブ経営の専門性を強化することを目的とした再編計画の一環であると説明されています。

また、今回の再編により、2017年からテクニカルディレクター(TD)を務めてきたアリスター・エドワーズ氏がTDに加え、新たに最高執行責任者(COO)との2役を兼任することも発表されています。

3月22日のニュース:代表関連の3題<br>・アジア杯予選を控えるマレーシア代表に2人の帰化選手が合流<br>・「消息不明」のナチョ・インサが発見される<br>・代表チームはサッカー協会の管理下にある-サッカー協会会長

2026年W杯アジア3次予選が再開し、東南アジアから唯一出場しているインドネシア代表はオーストラリア代表にアウェイで1-5で敗れています。これまでのシン・テヨン監督を「選手とのコミュニケーションの難しさ」を理由に解任し、オランダ出身の選手が集まる代表にパトリック・クライファート監督を招聘しましたが、デビュー戦としては残念な結果となりました。昨年9月の対戦では、シン・テヨン監督の元でオーストラリアとスコアレスドローだったこともあり、監督経験に問題ありとされたクライファート監督への風当たりは強いようです。帰化選手に対しても、ルーツを持つとはいえインドネシアに住んだこともなく、生まれた国では代表になれなかった「二流」の選手といった批判が出始めており、今後も結果が出なければこの声が大きくなる可能性があります。同様の機関選手による強化を進めるマレーシア代表の関係者がこの状況をどうみているのかが気になるところです。

アジア杯予選を控えるマレーシア代表に2人の帰化選手が合流

3月25日に2027年アジア杯3次予選の初戦を迎えるマレーシア代表に2名の帰化選手が合流したことをマレーシア代表の公式SNS Malaysia NTが発表しています。現在マレー半島南端のジョホール州で合宿中のマレーシア代表に合流したのは、オランダ生まれのAMFエクトル・へベルと、スペイン生まれで左SBを得意とするガブリエル・パルメロの両選手です。

29歳のヘベル選手は、ADOデン・ハーグ(オランダ)のユース出身で、AEKラルナカ(キプロス1部)では2017/18シーズンにキプロスカップ、2018/19シーズンにはスーパーカップ優勝に貢献。また、2020/21シーズンにはスペインの隣国、アンドラ公国に本拠地を持つFCアンドラのクラブ史上初となるスペイン2部昇格にも貢献しています。現在はポルトガル2部のポルティモネンセSCに所属しています。

一方、23歳のパルメロ選手は、スペインのUDラス・パルマスのユースやBチームを経て、いずれも同国4部のギムナスティカ・セゴビアナCFや、現在所属するCDテネリフェBにレンタル移籍しています。

Malaysia NTの投稿では「海外で活躍するマレーシア人が帰ってきた!エクトル・ヘベル選手、ガブリエル・パルメロ選手、Selamat datang(マレーシア語で「ようこそ」)!」と記されています。

なお今年1月に就任したピーター・クラモフスキー監督は以前、3人の帰化選手がマレーシア代表に加わると示唆していましたが、現在のところ発表されたのは上記の2選手のみです。


ちなみにこの代表合宿はJDTの練習施設を使って行われています。JDT以外の選手にとっては、自チームの施設と比べてその質の高さから、クラブに戻ってもこんな環境で練習したい、と思わせるJDTに勧誘するため良い宣伝材料にもなっていそうです。

「消息不明」のナチョ・インサが発見される

2027年アジア杯3次予選のネパール戦を控えたマレーシア代表のトレーニングに、代表招集されているナチョ・インサ(ジョホール・ダルル・タジムFC、JDT)が参加しておらず、またマレーシアサッカー協会(FAM)からも何も発表がないため、様々な憶測が飛び交っていましたが、ついに事実が明らかになりました。

ピーター・クラモフスキー代表監督は、インサ選手が現在リハビリ中であると明らかにしています。38歳のインサ選手は今季も主力としてJDTで国内リーグやカップ戦、さらにACLエリートといった過密なスケジュールでプレーしておりおり、現在は自身の回復のために個別のリハビリを行っていると説明しています。

「彼は私たちと一緒にトレーニングをしておらず、個別のリハビリプランに取り組んでいる。全体練習に合流できるかどうかは後ほど判断する予定である。」と、クラモフスキー監督は練習後の記者会見で述べています。

またクラモフスキー監督は、同じJDTに所属するアリフ・アイマンも個別リハビリ中であるものの、。「彼のリハビリプランは若干異なり、個別リハビリではあるものの、メディカルチームと共に練習場で活動している。次回の全体練習には合流できることを期待している」と述べて、全体練習には参加していると説明しています

また代表チームのトレーニングの進捗についてクラモフスキー監督は、「我々は良いチーム、強いチーム、そして見ていてワクワクするチームになるために重要な点に集中しています。選手たちは真剣に取り組んでおり、情熱を持っているので、チームが最高の状態になるようさらに引き上げたい。」と話し、選手たちが戦術的アプローチに順応しており、残りのトレーニングでさらに磨きをかけられるだろうとも述べています。

「チームは正しい方向に進んでいます。トレーニングで取り組んでいる良い内容は試合に現れるだろう。(ネパール戦に向けた)準備の仕上げとして、今後数日間を有効に活用したい。」と自信を見せています。

またクラモフスキー監督は、ファンに対してネパール戦が開催されるスルタン・イブラヒム・スタジアムに足を運び、代表チームを応援するよう呼びかけています。3月11日に行われたACLエリートのJDT対ブリーラム・ユナイテッド(タイ)戦では、イスラム教の断食月、ラマダン期間中にもかかわらず3万4000人以上の観客が集まったことを例に挙げ、同様の盛り上がりを期待していると話しています。

代表チームはサッカー協会の管理下にある-サッカー協会会長

マレーシアサッカー協会(FAM)のジョハリ・アユブ会長は、マレーシア代表がFAMの管轄外になったとの憶測を否定しました。ジョハリFAM会長は、「(マレーシア代表の愛称)ハリマウ・マラヤは引き続きFAMの管理下にある」と述べ、独立して運営されているという話を否定しました。

過去数ヶ月間にわたり、ジョホール・ダルル・タジムFCのオーナーで、かつてはFAMの会長もつとめた、ジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下が中心となって代表チーム改革を積極的に進めており、マレーシア代表チームがFAMとは別に運営されているとの見方が広がっていましたが、ジョハリ会長は「外部からの支援は歓迎するが、マレーシア代表チームは依然としてFAMの組織内にある」と強調しています。

ジョハリ会長は、トゥンク・イスマイル殿下の貢献に言及し、「殿下の支援により、代表チームが前進できている。どなたの支援でも歓迎するが、殿下の協力には非常に感謝している」と述べています。

トゥンク・イスマイル殿下は、これまでも代表チーム改革案を提案、プロ意識と競争力を向上させる重要な人事を主張し、代表チーム首脳陣の人選の原動力となっています。元オーストラリア代表のティム・ケーヒル氏を自身のアドバイザーとして、マレーシア代表チームのロブ・フレンドCEO、ピーター・クラモフスキー監督、また元オーストラリア代表選手のマーク・ミリガン、マット・スミス両氏の代表チームコーチ就任、さらに高名なハイパフォーマンス専門家のクレイグ・ダンカン博士などを次々と起用しています。


代表合宿はFAMの施設よりもあらゆる面で優っているJDTの練習施設を使い、クラモフスキー新監督披露となるネパール戦代表戦をマレーシア代表の「ホーム」であるブキ・ジャリル国立競技場ではなく、JDTのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで行ななど、マレーシアサッカー協会(FAM)会長が何と言おうと、マレーシアサッカーの中心は、少なくとも代表チームの運営についてはFAMではなくジョホールになっています。

2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第23節の結果とハイライト映像・

3月7日から16日にかけてマレーシアスーパーリーグ第23節が行われています。なおスーパーリーグは3月25日に行われるAFCアジアカップ2027年大会予選のネパール戦とそれに先立つ3月17日からの代表合宿のため一時中断し、次節第23節は4月4日から6日に開催されます。
 また今季のスーパーリーグは13チーム編成のため、今節第22節はクランタン・ダルル・ナイムFCの試合がありません。
*試合のハイライト映像は全てマレーシアンフットボールリーグ(MFL)のYouTubeチャンネルより。

給料未払い問題を抱えるチーム同士の対戦はKLシティに軍配

勝点剥奪処分を受けた両チームの対戦は、来季の存続が危ぶまれるクダ・ダルル・アマンFCを、資金不足から下部リーグ降格の噂があるKLシティが逆転で破り勝利しています。

給料未払い問題により開幕前に勝点3を剥奪されたクダと、クラブライセンス申請時に財務状況に関する書類に虚偽があったとして勝点6を剥奪されたKLシティが対戦。先日、ジョホール・ダルル・アマンFCのオーナーでジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下に来季のスーパーリーグではプレーしないだろうとその名をあげられたクダは、複数の主力選手を欠きながらも、エベネゼル・アシフアのクロスにミロシュ・ゴルディッチが合わせ、最後までチームに残る外国籍選手2名の活躍で先制します。一方、最大株主のクアラルンプールサッカー協会(KLFA)の会長が、現在抱える給料未払い問題を解決するために来季のスーパーリーグ撤退、下部リーグ降格を示唆する発表に反発するKLシティは、クラブ最多ゴール記録を持つパウロ・ジョズエのゴールで前半終了間際に追いつきます。

後半に入るとギアを上げたKLシティは、パウロ・ジョズエが自身のクラブ記録を更新する通算76得点目となるゴールを決めて逆転すると、クダも一度はファズルル・ダネルのゴールで追いつくものの、最後はショーン・ジャネッリが決勝ゴールを決めて勝利し、順位は6位のままですが、5位のトレンガヌ勝点差3と迫っています。一方、敗れたクダはペナンFC、スリ・パハンFCと勝点20で並んでいますが、得失差で11位となっています。

2025年3月7日@ダルル・アマン・スタジアム(クダ州アロー・スター)
クダ・ダルル・アマンFC 2-3 KLシティFC
⚽️クダ:ミロシュ・ゴルディッチ(25分)、ファズルル・ダネル(55分)
⚽️KLシティ:パウロ・ジョズエ2(45+2分、62分)、ショーン・ジャネッリ(85分)
MOM:パウロ・ジョズエ(KLシティFC)

3位サバと4位トレンガヌの対戦は引き分け

来季のアセアンクラブ選手権出場権がかかる3位を争う両チームの対戦は2-2で引き分けています。

アウェイのサバは前半20分に代表MFスチュアート・ウィルキンの先制ゴールでリードを奪いますが、その4分後にはイスマヒル・アキナデが同点ゴールを決めてトレンガヌがすぐに追いつきます。しかし前半終了間際には先制点をアシストしたサディル・ラムダニがゴールを決めて、サバが再びリードを奪います。しかし84分にサファウィ・ラシドが同点ゴールを決めて引き分けに持ち込んでいます。

今季のスーパーリーグは、既にジョホール・ダルル・タジムFCの1位、スランゴールFCの2位が確定していますが、この両チームが引き分けたことで、3位に浮上したクチンシティFCと4位サバの東マレーシアの両チームが勝点36で並び、5位のトレンガヌが勝点32で、残り2節を残す今季の3位争いが激化しています。

2025年3月7日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌFC 2-2 サバFC
⚽️トレンガヌ:イスマヒル・アキナデ(24分)、サファウィ・ラシド(84分)
⚽️サバ:スチュアート・ウィルキン(20分)、サディル・ラムダニ(44分)
MOM:サファウィ・ラシド(トレンガヌFC)

ヌグリスンビランは今季初の連勝ならず

前節に今季3勝目を挙げたヌグリスンビランFCは、今季初の連勝をかけてペラFCと対戦しました。しかし前半の30分にハリス・サムスリがペラの得点機のファウルにより一発レッドで退場なるなど苦しい展開となりましたが、結局、試合はスコアレスドローに終わり、今季の12位が確定しています。

2025年3月8日@MPMスタジアム(ペラ州マンジュン)
ペラFC 0-0 ヌグリスンビランFC
MOM:アキル・アブドル・ラザク(ペラFC)
ヌグリスンビランFCの佐々木匠選手は59分から途中出場し、試合終了までプレーしています。

マレーシアカップ決勝進出のスリ・パハンがリーグ戦9試合ぶりの勝利

リーグ戦では昨年10月29日のペナンFC戦以来勝利がないスリ・パハンFCが9試合ぶりの勝利を挙げています。

スリ・パハンは、38分にステファノ・ブルンドのゴールで先制しますが、PDRMは鈴木ブルーノが52分に今季4得点目となるゴールを決め、一時は同点追いつきます。しかしスリ・パハンはクパ・シャーマンが72分、そして78分に決めた2ゴールで一気にPDRMを突き放しています。

この9試合ぶりの勝利により、スリ・パハンは勝点20となりで10位に浮上。一方、リーグ戦では昨年12月以来勝利がないPDRMは勝点21のままで8位をキープしています。

2025年3月8日@MPSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM FC 1-3 スリ・パハンFC
⚽️PDRM:鈴木ブルーノ(55分)
⚽️スリ・パハン:ステファノ・ブルンド(38分)、クパー・シャーマン2(72分、78分)
MOM:クパー・シャーマン(スリ・パハンFC)
PDRM FCの鈴木ブルーノ選手は先発して、フル出場しています。

クチンシティが今季初の3位浮上-スランゴールは14試合無敗が止まる

現在、最も勢いのあるクチンシティFCが、前節に今季の2位を確定させたスランゴールFCをホームに迎えたこの試合は、個人的には今節最も注目している試合でした。PDRM FCとのチャレンジャーカップ決勝を含め、14試合連続無敗記録を更新中のスランゴールは試合開始からボールを支配しますが、先制したのはホームのクチンシティでした。26分に右サイドを上がったヌル・シャミ・イスズハンのクロスをファーサイドにいたラマダン・サイフラーが押し込んで、クチンシティがリードを奪います。ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)からローン移籍中のラマダン選手がこの試合では躍動し、また徐々にクチンシティも攻勢を強め、さらに好機を作りますが、スランゴールGKカラムラー・アル=ハフィズの好守もあり、前半は1-0のまま折り返します。

後半に入るとスランゴールの喜熨斗勝史監督はムカイリ・アジマルを投入しますが、この起用があたり、ムカイリ選手が右サイドでフリーとなっていたクエンティン・チェンからのクロスを蹴り込み、後半の50分にスランゴールが追いつきます。ハーフタイムあたりから降り始めた雨が激しくなり、ボールが転がりにくくなる中、84分に右サイドでフリーとなったジミー・レイモンドがペナルティエリアに切り込んで放ったシュートはGKカラムラー・アル=ハフィズの逆を突き、誰に触れることもなくそのままゴールイン。これが決勝点となり、クチンシティは連続無敗記録を9に伸ばし、暫定ながらクラブ史上最高位の3位に順位を上げています。

なお次節ではクチンシティは今季のリーグ覇者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)と、またスランゴールは4位のトレンガヌFCと対戦します。


今季の、いやここ数年繰り返されている「勝たなければいけない試合に勝てない」スランゴールそのものでした。喜熨斗監督は、既に=に2位を確定させていたことが敗因ではないと述べ、敗因は自チームのミスによるもので、そこをクチンシティに漬け込まれたと説明し、スランゴールから訪れたサポーターに対しては「遠くまで応援に来てくれたサポーターに謝りたい。勝点3どころか、勝点1すら持ち帰ることができず、申し訳ない」と話しています。

一方、クチンシティのアイディル・シャリン監督はリーグの強豪であるスランゴールを下したことに満足の意を示しています。「選手たちに称賛を贈りたい。簡単な勝利ではなかった。スランゴールの順位や歴史、さらにはACL2での活躍を見れば、彼らが強豪であることは明らかだ。経験豊富で優れた選手を多く擁するチーム相手に、我々は良いプレーができ、勝点を得ることができた。またサポーターの声援も大きな力になった。チームを応援してくれたすべてのサポーターに感謝したい」と述べていました。

2025年3月16日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチンシティFC 2-1 スランゴールFC
⚽️クチンシティ:ラマダン・サイフラー(26分)、ジミー・レイモンド(85分)
⚽️スランゴール:ムカイリ・アジマル(51分)
MOM:ジミー・レイモンド(クチンシティFC)

イスラフィロフのヘディング2発でジョホールがペナンに勝利

既に今季優勝を決めているジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)がエディ・イスラフィロフの今季初ゴールを含む2本のヘディングシュートなどでペナンFCに3−0と快勝しています。

JDTは3月11日のACLエリート決勝トーナメント1回戦でタイのブリーラム・ユナイテッドに敗れた後の初めての試合でした。またペナンは直近6試合でわずか1勝という厳しい状況の中でJDTをホームに迎えています。

JDTは先日発表されたアジアカップ2027年大会予選のネパール戦に出場するマレーシア代表メンバーに選ばれた右SBマット・デイビスとCBシャールル・サアドが久しぶりに先発するなど、ACLエリートとは大きくメンバーを入れ替えるなど、「国内戦」仕様で臨みましたが、それでもペナンを圧倒し、20分にはナズミ・ファイズの左コーナーキックをエディ・イスラフィロフが頭で合わせて先制します。さらにその7分後には、ヘベルチ・フェルナンデスの左コーナーキックを再びイスラフィロフ選手がヘディングで合わせてゴール!JDTがリードを広げます。また36分にはJDTがPKを得ますが、ベルグソン・ダ・シルヴァのPKはペナンGKシーク・イズハンが好セーブし、前半はJDTが2点のリードで終了します。

後半に入ると、54分にはそのヘベルチ選手が、やはりマレーシア代表に選出されたロメル・モラレスとのワンツーからのパスを受け、強烈なシュートを決めて3点目を挙げ、JDTがそのまま逃げ切っています。最後は代表選出されているムハマド・スマレ(今季6試合出場、出場時間109分)や、ラヴェル・コービン=オング(同14試合、639分)といった今季はほとんど出場機会がない選手を起用して「虫干し」する余裕すらありました。

2025年3月16日@シティ・スタジアム(ペナン州ジョージ・タウン)
ジョホール・ダルル・タジムFC 3-0 ペナンFC
⚽️ジョホール:エディ・イスラフィロフ2(20分、27分)、ヘベルチ・フェルナンデス(54分)
MOM:エディ・イスラフィロフ(ジョホール・ダルル・タジムFC)

2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第23節終了)
順位チーム勝点
1JDT2161201073766
2SEL22461444411625
3KCH2236994352510
4SAB2135106539318
5TRE213288532248
6#KLC2128104734286
7PRK21246693334-1
8PDRM21246692433-9
9PEN21204892537-12
10SRP21204892537-12
11*KDA20206591935-16
12NSE211334142043-23
13KDN21721181366-53
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC, SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC, KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC, PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC, KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは勝点3剥奪処分を受けています
#KLシティFCは勝点6剥奪処分を受けています。
2024/25マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第23節終了)
氏名所属ゴール
1ベルグソン・ダ・シルヴァJDT23
2パウロ・ジョズエKLC15
3ジョーダン・ミンターKCH12
4ルシアーノ・ゴイコチェアPRK10
ロドリゴ・ディアスPEN10
ロニー・フェルナンデスSEL10
7アルヴィン・フォルテスSEL8
イフェダヨ・オルセグンPDRM8
クレイトンPRK8
クパー・シャーマンSRP8
11アリフ・アイマンJDT7
ヘベルチ・フェルナンデスJDT7
ジョアン・ペドロSAB7
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC, KLC-KLシティFC、KCH-クチンシティFC、SRP-スリ・パハンFC, PRK-ペラFC、PEN-ペナンFC、SAB-サバFC、PEN-ペナンFC

3月13日のニュース<br>・アジア杯予選に臨むマレーシア代表メンバー発表-新たな帰化選手は召集されず<br>・1部の2クラブが来季はリーグから撤退?-ジョホールのオーナーが明かす

アジア杯予選ネパール戦に臨むマレーシア代表メンバー27名発表-新たな帰化選手は召集されず

マレーシアサッカー協会(FAM)は、3月17日からジョホールで始まるマレーシア代表合宿の参加メンバー27名を発表しています。この合宿は3月25日から始まるアジア杯2027年大会最終予選の初戦となるネパール戦に向けて行われます。

アジア杯2027年大会最終予選でF組に入っているマレーシアは、今月対戦するネパールの他、F組突破最有力のベトナム、同じ東南アジアのラオスと同組になっています。なおこのアジア杯最終予選では各組の1位のみが、2027年1月にサウジアラビアで行われるAFCアジア杯への出場権を獲得します。

今年1月に就任したピーター・クラモフスキー監督にとって3月25日のネパール戦は代表監督として初の指揮を取る試合となりますが、この試合に向けて招集された27名には、噂されていた新たな帰化選手の名前はありません。またネパール戦は、昨年末の東南アジア選手権三菱電機カップ以来の代表戦となりますが、国内リーグと同時平行でおこなわれた三菱電機カップに出場したマレーシア代表26名中、クラモフスキー監督は9名を再び召集しています。

今回のメンバー27名中、先日のACLエリートではベスト16で敗退したジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)から最大10名が選ばれていますが、この10名の他にもGKハジク・ナズリ(ペラ)、DFサフワン・マズラン、FWサファウィ・ラシド(いずれもトレンガヌ)、DFダニエル・ティン(サバ)、MFシャマル・クティ(ペナン)、MFエンドリック・ドス・サントス(ホーチミンシティ)の6名はいずれもJDTからローン移籍中の選手なので、実質的にはチームの半数以上がJDTの選手で構成されていることになります。また噂されていた欧州出身の帰化選手は今回は召集されておらず、次節となる6月10日のベトナム戦前にお披露目となるのかも知れません。

氏名年齢所属
GKシーハン・ハズミ29JDT
カラムラー・アル=ハフィズ30SEL
ハジク・ナズリ27PRK
DFシャールル・サアド32JDT
マシュー・ディヴィーズ30JDT
ラヴェル・コービン=オング34JDT
クエンティン・チェン26SEL
ジクリ・カリリ23SEL
ハリス・ハイカル23SEL
サフワン・マズラン23TRE
ダニエル・ティン33SAB
ディオン・クールズ29BUR
MFナチョ・インサ39JDT
アフィク・ファザイル31JDT
ナズミ・ファイズ31JDT
ノーア・ライネ23SEL
スチュアート・ウィルキン27SAB
シャマル・クティ28PEN
エンドリック・ドス・サントス30HCM
FWアリフ・アイマン23JDT
ロメル・モラレス28JDT
モハマドゥ・スマレ31JDT
ファイサル・ハリム27SEL
サファウィ・ラシド28TRE
アキヤ・ラシド26TRE
パウロ・ジョズエ36KLC
ハキミ・アジム22KLC
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC、SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、KLC-KLシティFC、PEN-ペナンFC、PRK-ペラFC、BUR-ブリーラム・ユナイテッド(タイ)、HCM-ホーチミンシティFC(ベトナム)

1部の2クラブが来季はリーグから撤退?-ジョホールのオーナーが明かす

残りあと2節となっている今季2024/25シーズンのマレーシア1部スーパーリーグで現在10位のスリ・パハンFC と11位のクダ・ダルル・アマンFCが、来季のスーパーリーグから「撤退」すると、リーグ11連覇中の絶対王者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のオーナーで、ジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下が明らかにしたと報じられています。

複数のメディアは、イスマイル殿下が3月12日に開店したクラブ直営カフェで行われたファンとの質問セッションで、来月4月に行われるマレーシアカップ決勝、JDT対スリ・パハンの試合について質問された際に以下のように回答したということです。

「スリ・パハンFCとの決勝について一つだけ残念なことがある。決勝に勝てばJDTにとっては30個目のタイトルになるが、それは同時に良き友でもあるパハン州皇太子と歴史的なクラブであるスリ・パハンFCとの別れでもある。と言うのも、クラブ内で起こっている問題を理由に、スリ・パハンFCは来季はスーパーリーグに存在しないからだ。」

「クダ・ダルル・アマンFCについても同様だ。素晴らしい実績を持つクラブだが、やはり来季はスーパーリーグにはいないだろう。これは一体誰の過失によるものなのだろう。」

「これは明らかに資金の運用失敗が全てである。1000万リンギの資金にも関わらず、1500万リンギを使ってしまったからだ。本当に残念なことだ。」と述べたイスマイル殿下はさらに「両クラブが問題解決の方法を見つけることを切に願っている。しかし資金運用の失敗はマレーシアサッカーにおける最大の問題であるのは明らかだ。マレーシアでリーグやクラブを運営している者たちはサッカーについての知識も関心も全くない。」と最後はクラブだけでなく、リーグも槍玉に挙げています。

給料未払い問題により今季開幕前には勝点3を剥奪され、その後も未払いが続いているとされるクダ・ダルル・アマンFCは、オーナーのダウド・アブ・バカル氏がリーグから撤退することはないと明言していましたが、果たしてどちらが本当のことを言っているのでしょうか。

ACLエリート決勝トーナメント1回戦2ndレグ:ジョホールは痛恨の失点で8強入りならず

3月11日にACLエリート決勝トーナメント1回戦2ndレグが行われ、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のはホームのスタジアム・スルタン・イブラヒムでブリーラム・ユナイテッド(タイ)と対戦し、0-1で敗れて初のベスト8進出を逃しています。

先週3月5日にブリーラム・ユナイテッドのホームで行われた1stレグがスコアレスドローで終わっていた両チームの対戦は、この試合の勝者がサウジアラビアで集中開催され、東西両地区が対戦する準々決勝に駒を進めます。今大会のJDTは、グループステージではホームで3勝1分と圧倒的な成績を残していました。

両チームの先発は以下の通り。JDTは1stレグで先発したムリロ・エンリケ、パク・ジュンホン、アンセルモ・デ・モラエスに代わり、サム・カスティジェホ、シェーン・ローリー、そしてアフィク・ファザイルがこの2ndレグでは先発。スペイン出身の7選手が先発に名を連ねています。


現在はイスラム教の断食月「ラマダン」中で、日の出から日没までは飲食ができません。試合が行われたジョホール州のこの日の日没は午後7時16分、そしてこの試合のキックオフは午後8時と、アリフ・アイマンやアフィク・ファザイルらムスリム(イスラム教徒)の選手にとっては調整が難しい時間でした。

そんな中、開始1分にはブリーラムGKニール・エザリッジのセーブからこぼれたボールをJDTのベルグソン・ダ・シルバが押し込み、先制点か!となりましたが、これはVAR が介入するとオフサイドとなり、結局、幻のゴールに終わります。それでもJDTは35,000名を超えるサポーターの声援を背に、序盤から積極的にブリーラムの守備を脅かし、一方のブリーラムはその猛攻をしのぎ、そこからカウンターを仕掛ける展開となります。

JDTにとって最大のチャンスは27分でした。連続攻撃からフリーとなったアフィク・ファザイルがグラウンダーのシュートを放ちますが、これはゴールポストを直撃して絶好の先制機を逃してしまいます。一方のブリーラムは要所要所での的確な守備でJDTの攻撃陣に十分な仕事をさせず、前半は0-0で終了します。

後半に入ると、今度はブリーラムが攻勢に転じ、53分にはペテル・ジュリがミドルシュートでゴールを狙いますが、ボールはクロスバーを越えてしまいます。しかしその5分後、ついにこの試合唯一の得点が入ります。中盤でJDTのパスをゴラン・チャウシッチがカットすると、そこからスパナット・ムアンタとのパス交換で一気にJDTゴール前へ上がります。これをJDTのDFエディ・イスラフィロフがスライディングタックルで止めに入りますが、このクリアボールが右サイドでフリーになっていたスパナット・ムアンタの足元へ。スパナット選手が躊躇せず、絶妙なカーブをかけて放ったシュートは、JDTのGKアンドニ・スビアウレの指先を掠めるようにゴールイン!ついにブリーラムが先制します。JDTはボールを奪われた中盤の選手が全力で戻ろうとせず、さらに守備陣の足が一瞬止まってしまったことが悔やまれます。

リードを許したJDTのエクトル・ビドリオ監督は、71分にヘベルチ・フェルナンデスを投入し、その後もヘセ・ロドリゲス、ホルヘ・オブレゴンと次々に攻撃のカードを切り、試合の流れを変えようとします。84分には、そのヘベルチ・フェルナンデスが25メートルの位置から直接FKを狙いますが、相手の壁に阻まれ、同点のチャンスを逃します。ブリーラムはその後も、GKニール・エザリッジを中心に鉄壁の守備を見せてJDTにフリーでシュートを打たせません。7分と長いロスタイムには、ホルヘ・オブレゴンがあわや同点ゴールかという芸術的なシュートを決めますが、これもVARが入って、結局オフサイドと判定され、試合はそのまま終了します。

この結果、JDTはクラブ史上初となるACLエリートの準々決勝進出を逃し、一方のブリーラム・ユナイテッドは東南アジア唯一の代表として、4月25日からサウジアラビアで開催される集中開催方式の準々決勝へと駒を進めています。なお、ブリーラム・ユナイテッドの対戦相手は来週3月17日に、マレーシアのクアラ・ルンプールにあるAFCハウスで行われる抽選で決まります。

ACLエリート2024/25 決勝トーナメント1回戦2ndレグ
2025年3月11日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジムFC 0-1 ブリーラム・ユナイテッド(通算成績:0-1)
⚽️ブリーラム:スパナット・ムアンタ(58分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第21節の結果とハイライト映像(2)<br>・スランゴールはファイサル・ハリムのハットトリックなどで大勝、今季2位を確定させ来季のACL2出場権獲得

チームの勝利貢献とともに完全復活で代表復帰へ

今季3試合を残し、勝点差8の3位に迫っていたサバが同4位のトレンガヌと引き分けたため、この試合に勝てば今季の2位が確定するスランゴールは、現在、最下位のクランタン・ダルル・ナイムFCと対戦し、ファイサル・ハリムの今季初となるハットトリックなど7ゴールで圧勝し、来季のACL2出場を決めています。

警告累積によりこの試合は出場停止となったロニー・フェルナンデスに代わり、左ウィングにはファイサル・ハリムが入ったこの試合は、4試合ぶり先発となったファイサル選手が躍動。開始13分で今季初ゴールを決めると、45分、後半の66分とゴールを決めてハットトリックを達成しています。おそらく来週発表となるマレーシア代表入りを狙うクエンティン・チャンが31分に、ハリス・ハイカルも54分と56分に、そしてアリフ・イズワン・ユスランが73分とそれぞれゴールを決めています。

この勝利でスランゴールは勝点46となり、3試合を残して3位のサバFCとの勝点差を10として今季の2位を確定させただけでなく、リーグ2位に与えられるACL2出場権も獲得しています。


今季開幕前の昨年5月に未だ逮捕されていない不審者から酸攻撃を受け、顔や首、腕などの筋肉や骨にまでダメージが及ぶ重度の火傷を負ったファイサル選手は、皮膚移植手術やリハビリなどを経て、8月に復帰したものの、一時は現役引退を考えた、と後に語るほどの肉体的かつ精神的なダメージを受けました。2024年アジアカップでは韓国戦でもゴールを決めるなど、マレーシア代表でも主力選手だったファイサル選手は、W杯アジア3次予選進出がかかった昨年6月のキルギス戦に出場できず、代表からも離れていました。

しかし相手が最下位のクランタン・ダルル・ナイムFCとは言え、今季初ゴールを含む3得点、さらに今季初のフル出場で、ピーター・クラモフスキー新監督率いる代表復帰への好アピールとなりました。

2025年3月8日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
クランタン・ダルル・ナイムFC 0-7 スランゴールFC
⚽️スランゴール:ファイサル・ハリム3(13分、45分、66分)、クエンティン・チェン(31分)、ハリス・ハイカル(54分、56分)、アリフ・イズワン・ユスラン(73分)
MOM:ファイサル・ハリム(スランゴールFC)

この試合のハイライト映像。マレーシアンフットボールリーグ(MFL)のYouTubeチャンネルより。
2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第22節終了)
順位チーム勝点
1JDT2058191070763
2SEL21461443401426
3SAB2135106539318
4TRE213288532248
5KCH203079430246
6#KLC2128104734286
7PRK21246693334-1
8PDRM20215692232-10
9PEN20204882632-6
10SRP21204892537-12
11*KDA18206581932-13
12NSE201334131941-22
13KDN21721181366-53
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは勝点3剥奪処分を受けています
#KLシティFCは勝点6剥奪処分を受けています。
2024/25マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第22節終了)
氏名所属ゴール
1ベルグソン・ダ・シルヴァJDT23
2パウロ・ジョズエKLC15
3ジョーダン・ミンターKCH11
4ルシアーノ・ゴイコチェアPRK10
ロドリゴ・ディアスPEN10
ロニー・フェルナンデスSEL10
7アルヴィン・フォルテスSEL8
イフェダヨ・オルセグンPDRM8
クレイトンPRK8
10アリフ・アイマンJDT7
ジョアン・ペドロSAB7
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
KLC-KLシティFC、KCH-クチンシティFC、SRP-スリ・パハンFC
PRK-ペラFC、PEN-ペナンFC、NSE-ヌグリスンビランFC