11月15日のインドネシア代表対日本代表の試合は、2026年W杯アジア3次予選に東南アジアから唯一残っているインドネシアが、オーストラリア戦の引き分けはあったものの、ここまで圧倒的な強さを誇ってきた日本にどのくらい太刀打ちできるのかに注目しました。しかし結果は4-0、しかも内容はスコア以上の完敗でした。この試合では、改めて日本代表の強さを知らされたと同時に、次々と外国生まれの選手を帰化させて強化を図り、東南アジアではその地位を上昇させているたインドネシア代表の限界を見せつけられたような気がします。サウジアラビアやオーストラリアと引き分けた際には、予選C組の台風の目になるかと思いましたが、各チームとの対戦を一通り終えた前半戦は3分2敗で6チーム中最下位となっています。明日11月19日のホーム、サウジアラビア戦で勝てばプレーオフへ向けて首の皮一枚で可能性を残しますが、果たしてどうなるでしょう。
前代未聞!?ジョホールの3選手がACL出場を理由に代表離脱
今月のFIFA国際マッチカレンダーでマレーシア代表はラオス、インド両代表との試合を組んでいます。ラオス代表とは既に11月14日に対戦し、3−0で勝利を収めており、次戦は本日11月18日にインドのハイデラバードでインド代表と対戦します。
しかし、このインド戦を前に驚くようなニュースが流れました。マレーシアサッカー協会(FAM)は、ラオス代表戦が行われたバンコクからハイデラボードへ移動するのは26名中23名で、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)に所属するMFアリフ・アイマン、DFフェロズ・バハルディン、DFマシュー・デイヴィーズはインドへ移動せずマレーシアへ帰国することを発表しました。
その後、JDTからは公式声明が出されています。これによると、11月26日に行われるACLエリート東地区第5節の山東泰山対JDT戦に向けて、JDTは11月21日に試合が開催される中国山東省の済南市入りする予定ということです。その一方で今日のインド代表戦を終えたマレーシア代表は11月20日に帰国予定となっていることから、帰国から中国出発までの時間がないことから、FAMやマレーシア代表のパウ・マルティ監督の同意を得た上で、JDTの3選手はインド代表戦に先だって帰国が可能となったと説明ししています。
また今回のインド代表戦にはJDTからはGKシーハン・ハズミも選ばれていますが、今季のACLエリートでは、JDTは全試合でスペイン出身のアンドニ・スビアウレが先発GKと起用されていることから、シーハン選手は3選手とは別に代表チームに帯同してインド入りするということです。
さらにこの声明では、JDTがACLエリートに向けて多額の投資を行なっていることや、JDTがACLエリートで好成績を収めることはクラブだけの利益ではなく、AFCクラブランキングの押し上げにもつながり、その結果、国内の他のクラブにも恩恵があると説明しています。また声明では、FAMとマルティ監督に対して今回の3選手の早期帰国を認めたことを感謝し、さらにJDTとして2027アジアカップ予選については協力を惜しまないとも述べています。
なんともスッキリしないJDTの声明発表ですが、実はJDTの発表の前にはFAMも声明を発表しており、そこではJDTの3選手の早期帰国については11月20日に行われるマレーシアカップ1回戦KLローヴァーズ対JDTに3選手が出場するために早期帰国を求める要望があったことを明らかにし、これに応じるかたちて帰国を認めるとしていました。しかしJDTの声明はこのFAMの発表とは異なることから、国内サッカーファンからは様々な反応が出ています。
さらにFAMのノー・アズマン事務局長は、FAM、マルティ監督、JDTの間で意見の相違があったのではというメディアからの問いに対しては、それを否定する一方で、これが他のMリーグクラブにも適用される前例とはならないと苦しい弁明を行なっています。
代表選手がクラブの試合を優先し、さらに代表を運営するサッカー協会がこれを認めて代表チーム離脱を許可するという異常な事態は、国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)による日程の発表が遅れたことも原因の一つとなっています。11月1日から3日にかけて行われた今季第15節から2週間近く空いた11月13日になって発表された第16節以降のリーグ日程と今月から始まるマレーシアカップの1回戦日程により、第15節と第16節の間が3週間近く空いた一方で、12月から始まる東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権「三菱電気カップ」ど同時期に国内リーグを行うという謎の過密日程になってしまいました。
前述したようにノー・アズマンFAM事務局長は、今回のJDTの要求を受け入れたことは前例とはならないと述べていますが、変則のホームアンドアウェイ方式で行われる三菱電機カップでは、グループステージ初戦となる12月8日のアウェイのカンボジア代表戦と同じ日にマレーシアスーパーリーグ第16節の12月8日にはジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)対KLシティFC、翌9日にはヌグリスンビランFC対スランゴールFCが組まれており、さすがにこの4チームの選手はカンボジア戦出場は不可能でしょう。なお11月14日のラオス代表戦先発XIには、JDT3名、KLシティ2名、スランゴール2名の計7名がいました。
またグループステージ最大のライバルであるタイとの試合の前後にはマレーシアカップ準々決勝1stレグが組まれています。国内リーグの上位8チームが順当にベスト8に進めば、今回の代表メンバー全26名中、18名がこの上位8チームのいずれかに所属しており、マレーシアカップを理由に各クラブが所属選手の代表招集を拒めば、東南アジアでFIFAランキングがトップのタイ代表との試合にベストメンバーが揃わないという事態も起こり得ます。(以下は12月のマレーシア代表戦、国内戦、マレーシアのクラブが出場するACLの日程)
12月 | 三菱電機カップ | マレーシアカップ | リーグ戦 | ACLE | ACL2 |
1日 | 1回戦2ndレグ | ||||
2日 | |||||
3日 | ブリーラムU | ||||
4日 | 第16節 | ||||
5日 | セブFC | ||||
6日 | |||||
7日 | |||||
8日 | カンボジア(A) | *第16節 | |||
9日 | *第16節 | ||||
10日 | |||||
11日 | 東ティモール(H) | ||||
12日 | 準々決勝1stレグ | ||||
13日 | 準々決勝1stレグ | ||||
14日 | タイ(A) | ||||
15日 | 準々決勝1stレグ | ||||
16日 | |||||
17日 | 第17節 | ||||
18日 | 第17節 | ||||
19日 | |||||
20日 | シンガポール(H) | ||||
21日 | 準々決勝2ndレグ |
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今回はJDT3選手の離脱が注目されていますが、側から見ているとFAMとMFLの対応の遅さやまずさ、準備不足が招いた「事故」のように思えます。例えばFAMで言えば、インド代表戦終了後、FAM自らがこの3選手を直接、中国へ移動させる航空券の手配をすれば、マレーシアから移動するチーム本体よりも先に中国入りすることができ、日程を理由に代表離脱を求めたJDTの要求を突っぱねることもできたはず。さらに言えば、FAMが今月のFIFAデイズは代表戦を行わないことを決め、MFLが国内リーグ開催を優先し、第16節と第17節、さらにはマレーシアカップの準々決勝までを11月中に終える日程を作成していれば、そもそもJDTからの無謀な要求も出なかったでしょうし、三菱電機カップ中にリーグ戦やカップ戦を行う必要もなかったでしょう。
なおFAMは今回のFIFAデイズに向けて26名の代表メンバーを発表していましたが、代表に召集されていたいずれもJDTのMFナチョ・インサとFWロメル・モラレス両選手も「ケガ」のため代表招集を辞退していました。しかし11月17日にJDTのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで行われたシンガポール1部ライオン・シティ・セイラーズとの練習試合で、インサ選手はキャプテンとして先発しています。この試合にはモラレス選手も出場しており、両選手の「突然の回復」に対してそもそもの代表辞退を疑問視する声や、ACLエリートに間に合ってよかった、と言った賛否の声がSNS上に上がっています。
Mリーグのコーチにも来季からAFCプロライセンス取得が義務付けられる
現在はマレーシア1部スーパーリーグの監督にのみ取得が義務付けられているプロAライセンス(AFCプロライセンス相当)について、来季2025/26シーズンより監督だけでなくコーチにもその取得が義務付けられることになると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。
サバFC監督でマレーシアプロサッカー指導者協会(FCAM)会長でスーパーリーグのサバFC監督でもあるオン・キムスイ会長は、マレーシアサッカー協会(FAM)の技術委員会とプロAライセンス取得義務化について協議を行なったことを明らかにし、次のFAM理事会で決定される見通しだということです。この決定が下されると、スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)が規約を改正して、Mリーグの試合でベンチ入りするコーチにもプロAライセンスの所持が義務付けられることになります。なおマレーシア国内リーグでは、2020年以降、チームの監督にのみプロAライセンスの所持が義務付けられています。
この記事によると現在、FCAMにはプロAライセンスを持つ62名の指導者が登録しているということです。
なおこれらの発言は、11月15日から16ににかけてFCAMが開催した国際コーチングセミナー開会時の会見でなされたものです。このセミナーには、FAMのテクニカル・ディレクター(TD)のスコット・オドネル氏や、国内エリートアカデミーのモクタル・ダハリ・アカデミーのオスカル・ゴンザレスTDの他、日本サッカー協会(JFA)の影山雅永技術委員長も参加しています。
FAMは元オーストラリア代表のティム・ケーヒルと接触も詳細は明かさず
マレーシア政府から1500万リンギ(およそ5億2000万円)の支援を受けることが発表されたマレーシアサッカー協会(FAM)は、その支援の条件となっている代表チーム強化のための特別部署を設立することを発表していますが、その部署の責任者の候補の1人として、元オーストラリア代表で、現在はカタールサッカー協会のテクニカル・ディレクター(TD)と接触したことが明らかになっています。
年代別代表も含めカタール代表を多く輩出するアスパイア・アカデミーのCSO(チーフ・スポーツ・オフィサー)も務めるカーヒル氏は、FAMとの会談を前に、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)で、オーナーでジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下や、同じオーストラリア出身のアリスター・エドワーズCEO、そしてアンワル・イブラヒム首相とも会談したことを、イスマイル殿下が自身のSNSで明らかにしています。
マレーシア代表チーム改革を唱える先鋒でもあるイスマイル殿下とも会談したことで、カーヒル氏がFAMが新設を予定してる代表とU23代表の運営部署に関わる可能性が噂さていますが、FAMのノー・アズマン事務局長は、これについての問い合わせに回答せず、新たな部署については12月に入ってから発表するとしています。