11月22日のニュース<br>最新FIFAランキング発表:マレーシアは20年ぶりとなる116位に上昇<br>・国籍偽装問題:FIFAは文書改ざんに関わったマレーシアサッカー協会職員の発言を公表<br>・FIFAの文書で「コンサルタント」と自称したとされた代表チームCEOはこれを否定

ウィキペディアに「マレーシアサッカー帰化スキャンダル」(原文は英語です)という記事が登場しています。しかも丁寧に英語とマレーシア語の両方が作成されるなど手が込んでいます。現在マレーシアサッカーを揺るがしているヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑問題についての資料などもまとめられていて、この問題の概要を理解するには便利な記事となっています。

この国籍偽装疑惑問題についてマレーシアのアンワル・イブラヒム首相もコメントを出しています。現在アフリカ諸国を公式訪問中のアンワル首相は訪問先の南アフリカでの会見の際にこの国籍偽装疑惑問題について問われると、FIFAによるマレーシアサッカー協会(FAM)に対する強い非難は軽視できるものではないと述べ、政府も調査しており、この事件を隠蔽しようとするつもりはないと答えています。さらに多くの人々が直ぐに結果を求めるのは理解できるが、我々(政府)が何も行動していないという批判は当たらず、通常の手続きを経て捜査を進めなければならい」と答えたということです。

またマレーシア政府青年スポーツ省も、FAMに対しては、独立調査委員会の調査終了まで、政府による金銭的支援を一時的に停止することを発表、さらにFAMがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に控訴する場合の費用については、政府からの金銭的支援は行わず、すでに提供済みの1500万リンギ(およそ5億7000万円)の政府資金をこれに流用することも禁じると発言しています。

最新FIFAランキング発表:マレーシアは20年ぶりとなる116位に上昇

11月20日に最新のFIFAランキングが発表され、マレーシアは前回10月の発表から2ランクアップした116位となっています。マレーシアが最後に116位だったのは、2005年11月でしたので、今回は実に20年ぶりの達成となります。

今年4月の時点では131位だったマレーシアは、11月18日に行われたアジア杯2027年大会予選でのネパール戦に勝利したことで、2025年は9試合で8勝1分と無敗で終えています。

なお東南アジアの他国のFIFAランキングは、タイが域内1位で95位(1ランクアップ)、2位がベトナムで111位(1ランクアップ)、3位のマレーシアに続くのは4位インドネシアが122位(変動なし)、5位フィリピンが136位(5ランクアップ)、6位シンガポールが151位(4ランクアップ)、以下ミャンマー163位(変動なし)、カンボジア179位(変動なし)、ラオス187位(1ランクアップ)、ブルネイ189位(4ランクダウン)、東ティモール198位(1ランクダウン)となっています。

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20年ぶりの116位、さらに2位ベトナムとは5ランク差とその背中も見えてきていますが、素直に喜ぶことはできません。今年4月の131位からの大躍進は、国籍偽装疑惑によりFIFAから12ヶ月間の出場停止処分を科されている7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)の活躍による部分が大きいからです。ベトナム戦11年ぶりの勝利となった今年6月のアジア杯予選では先制点をジョアン・フィゲレイド(ジョホール・ダルル・タジム)、2点目をロドリゴ・オルガド(コロンビア1部アメリカ・デ・カリと契約解除)が挙げるなど、彼らがいなければ同じ結果とはなっていなかったはずです。AFCは、マレーシアサッカー協会(FAM)がFIFAの裁定についてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に控訴するとしていますが、後述する諸々の状況からFAMが望むような判決が出るとは考えにくく、その判決に基づき7選手が出場した試合結果をAFCが全て無効にする可能性も高いです。その試合で得たFIFAランキングポイントも消失し、マレーシアは一気にランクを下げることになりそうです。


国籍偽装問題:FIFAは文書改ざんに関わったマレーシアサッカー協会職員の発言を公表

ヘリテイジ帰化選手がマレーシアにルーツを持つことを示す証拠となる出生証明書について、マレーシアサッカー協会(FAM)の事務局職員が文書の改ざんを認める発言をしていることが明らかになりました。

国籍偽装疑惑を持たれている7名のヘリテイジ帰化選手は、いずれも祖父母がマレーシアで生まれたことを根拠にマレーシア国籍を取得し、マレーシア代表でのプレーが可能になりましたが、その根拠となったのが祖父母の出生証明書です。7名の祖父母に該当する人物の出生証明がマレーシア国内では見つからなかったことから、FAMはブラジルやアルゼンチン、スペインからその祖父母の出生証明書を取り寄せました。またマレーシア政府国民登録局は、その出生証明書の正当性に審査を行い、7選手にはマレーシア国籍が与えられました。

しかし11月18日にFIFAが裁定の根拠を説明を文書で公表しましたが、その中ではFAM事務局の職員が国民登録局の審査を待ちきれないどこかからの圧力を受けた結果、国外から取り寄せた出生証明書に「調整作業(=改ざん)」を行なったことを認める発言をしていることが公表されています。

FIFAの書類の中では、この出生証明の改ざんについては、現在FAM理事会から無期限の職務停止処分を受けているノー・アズマン事務局長が感知しないところで行われたと、FAMは主張しているということです。(ではなぜFAMはノー・アズマン事務局長を職務停止にしたのか、という疑問は湧きますが。)

またFAMは、7名のヘリテイジ帰化選手はこの出生証明の改ざんについては何も知らなかったとも主張しているということですが、FIFAはFAMと7選手への裁定には何の変更もないとしています。

またFIFAはノー・アズマン事務局長の「FAMの事務局職員が、FIFAに提出する資格審査用ファイルを作成する過程で、出生証明書や関連書類の一部コピーを扱い、形式を整え直したことは認識している」という発言や、「その中には、代理人から提供された証明書の内容が変更されたものも含まれていました。これらの作業は事務的な手続きであり、公的に認証されたコピーを置き換えたり、正式な確認手続きを代替したりする意図は決してなかった」といった発言も公開しています。

なおFAMは、FIFAの規律規定の第22条(文書の偽造および改ざんを扱う条項)は裁量的なものであり、必ずしも協会の責任を自動的に生じさせるものではないと、控訴委員会に対して弁明し、さらにこの不正行為は「協会が許可しておらず、また独立したものであり、組織的なものでもなければ、制度を不正に利用しようとする意図的な試みでもない。またマレーシアのルーツを捏造したり、資格規定を迂回するような計画もなかった」とも主張していました。

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FIFAの規定では、親または祖父母がその国で生まれていれば、選手はその国を代表できることから、FAMは国籍偽装が疑われる7選手について、その祖父母はマレーシア出身であるという文書をFIFAに提出し、FIFAは一旦はこれを認めたため、7選手はアジア杯予選などに出場しました。

その7選手とは、ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘヴェルです。

しかし、その後のFIFAによる調査では、「選手の祖父母はマレーシア出身」というFAMが提出した文書とは異なり、原本記録から7選手の祖父母全員がマレーシア国外のスペイン、アルゼンチン、ブラジル、オランダ生まれであることを突き止められたことが公表されています。この結果、FIFAがFAMに科した35万スイスフラン(およそ6800万円)の罰金、7選手に科した2,000スイスフランの罰金と、あらゆるサッカー活動から12カ月の出場停止処分が確定しています。

さらにFIFAは、FAMが控訴委員会に対して行なった裁定の控訴を全面的に棄却しさらマレーシア代表は2027年アジア杯予選で試合結果が無効となり、勝点剥奪の可能性があると警告しています。

一方のFAMはFIFAから文書による裁定の根拠の説明を受け取った後、この件をスポーツ仲裁裁判所(CAS)へ持ち込むとしています。


代表チームCEOは自身が「コンサルタント」ではないと主張

本当のことを言っているのは誰なのか。

マレーシア代表チームのCEOを務めるカナダ出身のロブ・フレンド氏は、FIFAの文書の中で自身が「コンサルタント」とされていることについて、これを否定しています。

国籍偽装が疑われている7名のヘリテイジ帰化選手とマレーシアサッカー協会(FAM)への処分について、FIFAはその根拠を詳細に述べた文書を公表していますが、その中でフレンド氏が自信を「自国カナダをベースとし、代表戦の時だけチームに合流する『コンサルタント』」と説明したという記述があり、フレンド氏はこれまで代表チームのCEOとFAMが公表していたことから、マレーシアサッカーファンの間で大きな波紋を広げています。

FIFAによる聴聞会では、自身の役職をマレーシア代表のCEOと述べた、と英字紙ニューストレイツタイムズに説明したフレンド氏は、誤解の原因は自身の代表チームとの関係性を説明した際に法律上の関係を述べたからだと説明にならない説明を述べています。

アジア杯2027予選:マレーシアはネパールに辛勝も予選5連勝で首位堅守-年間成績も7勝1分の無敗で終える

アジア杯2027年大会3次予選もいよいよ第5節。今節では予選E組のシリアと同C組のシンガポールがグループ首位を確定させて本大会出場を決めています。仲村京雅選手も先発した11月18日の香港戦に勝利したシンガポールは1984年大会以来2度目の出場となりますが、1984年大会は開催国としての出場で、予選突破による出場は初となります。


マレーシアが入る予選F組は、第4節を終えて4勝のマレーシアが首位、3勝1敗のベトナムが2位となっています。国籍偽装疑惑問題で主力のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名を欠くマレーシアは今節ではネパールと対戦しました。この試合は本来、ネパールで行われる予定でしたが、AFCの視察後に試合会場予定のスタジアムの使用が認められなかったことから、会場をクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場へ移し、ネパールのホームゲームとして行われました。

この試合の両チームの先発XIは以下の通り。いつもなら公表される先発XIとベンチ入りメンバーについて、この試合ではなぜかマレーシアサッカー協会(FAM)、マレーシア代表いずれの公式SNSでも発表はありませんでした…。

前節10月のラオス戦からは、ケガから復帰のDFマシュー・デイヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジム)が復帰した他、FWサファウィ・ラシド(クアラルンプールシティ)とMFスチュアート・ウィルキン(サバ)が、それぞれFWロメル・モラレス、MFアフィク・ファザイル(いずれもジョホール・ダルル・タジム)に代わって先発しています。

7名のヘリテイジ帰化選手不在でも予選F組前節の3位ラオス戦では5-1と圧勝した首位マレーシアにとって、ここまで0勝4敗、得点2失点8の4位ネパールは難しい相手ではないはずでした。しかし、開始8分で若きエース、アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジム)がハムストリングの肉離れで途中退場するアクシデントがマレーシアを襲います。それでもマレーシアはラヴェル・コービン=オング(ジョホール・ダルル・タジム)、ディオン・クールズ(セレッソ大阪)の左右SHを中心に攻めますが、ネパールもGKゴール前にボールを送りますが、ネパールGKキラン・クマル(バングラデシュ1部バングラデシュ警察FC)の好守や、ほぼ全員が自陣ゴール前を固める戦術の前に、結局、ゴールを挙げることができず、前半は両チーム無得点で終了します。

後半に入っても膠着した展開の中、やはり頼りになるのはこの人でした。アリフ・アイマンに代わって入っていたファイサル・ハリム(スランゴール)が、サファウィ・ラシドのパスに合わせて抜け出すとDFを振り切り、一気にゴール前までドリブルで上がりシュート。これが決まって55分にマレーシアが先制します。

その後もマレーシアは徐々にペースを上げて行きますが、追加点が奪えなかった90分に、ネパールのMFラケン・リンブ(カンボジア1部キリヴォン・ソク・セン・チェイFC)が自陣ゴール前でハリス・ハイカルを倒してしまい、この日2枚目のイエローをもらい退場、マレーシアはPKを獲得します。しかしこのPKをパウロ・ジョズエ(クアラルンプール・シティ)がポストの上に大きく外してしまいます。

しかしアディショナルタイムの3分を守り切ったマレーシアが1点のリードで逃げ切って5連勝でF組の首位を守るとともに、2025年の通算成績も7勝1分と無敗で終えています。

AFCアジア杯3次予選F組第4節
2025年11月18日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
ネパール 0-1 マレーシア
⚽️マレーシア: ファイサル・ハリム(55分)

この試合のハイライト映像。スタジアム・アストロのYouTubeチャンネルより。

マレーシアを勝点差3で追うベトナムは、翌日の11月19日にラオスと対戦しています。今年1月のアセアン選手権で骨折していた元Jリーグ仙台のブラジル出身FWグエン・スアン・ソンことラファエルソンが復帰、出場した後半にはPKを挙げるなどし、ラオスを2-1で破ったベトナムは来年3月のマレーシアとの最終節での対戦に逆転でのF組首位突破の可能性を残しています。


アジア杯2027年大会3次予選F組順位(第5節終了)

順位チーム勝点
1マレーシア55001511415
2ベトナム5401115612
3ラオス5104316-133
4ネパール400429-70

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予選の5試合全勝のマレーシアは、最終第6節のベトナム戦で敗れても3点差以内であればF組の首位を守って、再来年2027年のアジア杯に出場が決定します。しかし、その前には国籍偽装に関するFIFAの裁定に基づく、AFCによるマレーシアサッカー協会(FAM)への処分が出される可能性があります。W杯2018年大会兼アジア杯2019年大会予選で、ブラジル出身の選手に国籍偽装をさせて試合に起用した東ティモールは、国籍偽装を行った選手が出場した試合は全てが無効試合となっただけでなく、アジア杯2023年大会予選への出場禁止処分を受けています。もしAFCが同様の処分を下せば、アジア杯2027年大会への夢が潰えるだけでなく、マレーシアサッカーにとっては100名を超える選手と監督、コーチが捜査を受け、79名が出場停止(うち21名は永久追放処分)を受けた1994年「八百長騒動」以来のスキャンダルとなります。マレーシアサッカーはこの八百長騒動から立ち直るのに多くの時間を費やし、その間にFIFAランキンは下落の一途を辿りましたが、あの悪夢が再来する可能性は否定できないだけに、ネパール戦に勝利した選手たちも心の底から喜ぶことはできていないかも知れません。

11月18日のニュース<br>・辞任の噂をクラモフスキー監督自ら否定<br>・国籍偽装問題:FIFA控訴委員会が処分決定の理由を公表<br>・国籍偽装問題:FIFAはマレーシアサッカー協会の内部運営も調査か<br>・国籍偽装疑惑:FIFAはアルゼンチンやスペイン当局に文書偽造の調査を勧告

辞任の噂をクラモフスキー監督自ら否定

昨日のこのブログでも伝えたマレーシア代表のピーター・クラモフスキー監督辞任の噂ですが、これをクラモフスキー監督自身が否定しています。

本日11月18日キックオフの2027アジア杯予選ネパール戦の試合前会見が行われ、その席上でこの噂を尋ねられたクラモフスキー監督は、キッパリと否定し、現在の契約が満了となる2026年末までマレーシア代表を指揮する意向を明らかにしています。

会見でクラモフスキー監督は、勝点3を獲得して予選F組首位の座を維持することでサポーターからの信用を得られるだろうと述べる一方で、アジア杯出場に向けては、一歩一歩積み上げていくことが重要であり、現在は明日(11月18日)の試合に向けて集中していると述べています。

11月10日からの代表合宿を経てネパール戦に向けてできる準備は全て行なったと述べたクラモフスキー監督は、11月13日に行なった親善試合でバングラデシュとの試合を2−2と引き分けたネパールは高いモチベーションで臨んでくるとして、楽な試合とはならないと考えていると話しています。

しかしマレーシア代表もケガから復帰のマシュー・デイヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジム)やファイサル・ハリム(スランゴール)など全員が先発できる状態にあるとして、誰を起用するかに頭を悩ませていると話す一方で、サポーターにはこのチームを誇りに思ってもらえるようなサッカーを見せたいと意気込んでいました。


国籍偽装問題:FIFA控訴委員会が処分決定の理由を公表

FIFAの控訴委員会は、7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)の国籍偽装のための文書偽造問題に関してマレーシアサッカー協会(FAM)と7選手に対する処分を維持する決定の理由を明らかにしています。

FIFAは11月18日に公式サイトを通じて、11月3日に発表されていた控訴委員会の決定に関する64ページにわたる詳細な報告書を公開しています。

FIFAの調査によると、FAMがFIFAに提出した書類には7選手の祖父母をマレーシア生まれと記載していたが、スペイン、アルゼンチン、ブラジル、オランダから入手した記録により、彼らが関係国で生まれたことが証明された。

さらにFAMは矛盾した文書を提出、ルーツについても不当な主張をしながら、FIFAから繰り返し説明を求められたにもかかわらず適切な調査を行わなかったと告発されています。

偽造された文書は、7名の選手たちがマレーシア代表として試合に出場する上で重要な役割を果たし、その結果、6月のアジア杯予選ベトナム戦に4-0で勝利した試合では、7選手の内2選手が得点を挙げて勝利に貢献しとしています。

また控訴委員会は調査結果の中で、偽造はマレーシアに「不当な利益」を与えたと述べ、偽造は軽微なもの、あるいは単に事務上の問題であるというFAMの主張を完全に否定しいます。

控訴中、FAMはFIFAに対し、事務局長が一時的に職務停止処分を受けた他、ラウス・シャリフ元最高裁判所長官が率いる独立委員会が国内でこの問題を調査するために任命されたと伝えていましたが、FIFAの上訴委員会は、処分を覆す、あるいは軽減する根拠はないとの結論を下し、FAMの対応は誠実さを損ねるものだと主張しています。

9月にFIFAの規律委員会はFAMに35万スイスフラン(およそ6800万円)の罰金を科し、7人の選手にもそれぞれ2,000スイスフラン(およそ39万円)の罰金と12か月間のあらゆるサッカー関連活動からの出場停止処分を科しています。

今回処分を受けた7選手はスペイン出身のガブリエル・パルメロとジョン・イラサバル、アルゼンチン出身のファクンド・ガルセス、ロドリゴ・ホルガド、イマノル・マチュカ、ブラジル出身のジョアン・フィゲイレド、そしてオランダ出身のエクトル・ヘヴェルで、いずれの選手も祖父母がマレーシア国内生まれだとして、マレーシア国籍を取得した上でマレーシア代表として試合に出場しています。


国籍偽装問題:FIFAはマレーシアサッカー協会の内部運営も調査か

マレーシア語紙ブリタ・ハリアンによると、ヘリテイジ帰化選手7名が関与した文書偽造問題を受けて、FIFAはマレーシアサッカー協会(FAM)の内部運営について調査を行うようです。

FIFAの控訴委員会が11月18日に発表した64ページにおよぶ報告書では、控訴委員会は、提出された証拠と事件の審理結果に基づき、FIFA規律規定第30条、第35条、第55条(1)(f)および第55条(2)に従ってさらなる調査を開始する強力な根拠があると判断したと書かれているということです。

「この規定は控訴委員会に対して、不正行為のあらゆる側面またはその影響が十分に調査されることを保証する権限を与えている。この点に関して、控訴委員会は控訴委員会の事務局に対し、FAMの内部活動に関する正式な調査を開始するために直ちに措置を取るよう指示した。」

「この調査は、文書偽造の責任者を特定し、FAMのコンプライアンス体制と内部統制の妥当性と有効性を評価し、FAM職員に追加の懲戒処分を課すべきかどうかを判断することを目的とする。」

控訴委員会が発表した報告書の中で、「最初の調査対象として、FAMノー・アズマン事務局長(現在は職務停止処分中)と、今回の手続きで名指しされた2人の代理人、ニコラス・プッポとフレデリコ・モラエスの役割を検証する必要がある。彼らの関与は深刻な懸念を提起しており、徹底的な調査が必要だ」と新たに2名の代理人の名前が挙げられています。これはFAMによる会見では全く上がらなかった名前です。また今回の文書偽造の責任を負うべき個人あるいは団体が特定できないことにFIFAはFAM構造上の問題を指摘しています。


国籍偽装疑惑:FIFAはアルゼンチンやスペイン当局に文書偽造の調査を勧告

またFIFA控訴委員会の報告書では、マレーシア代表の7名のヘリテイジ帰化選手が関与した文書偽造疑惑は、該当国で裁判にかけられるべきだと考えており、関係5カ国にこの「犯罪」の調査を勧告しています。

「公文書の偽造という『犯罪』の性質と重大性を考慮し、控訴委員会は事務局に対し、ブラジル、アルゼンチン、オランダ、スペイン、マレーシアの管轄の刑事当局に通知するための適切な措置を講じるよう指示する。」

「偽造は刑事犯罪であり、適切な捜査と刑事訴訟が行えるよう当局に通知することが重要だ」とFIFAの報告書には記されています。

11月17日のニュース<br>・クラモフスキー監督辞任の噂もサッカー協会は否定

クラモフスキー監督辞任の噂もサッカー協会は否定

明日11月17日は2027アジア杯予選ネパール戦。2025年最後の代表戦ですが、何とこのタイミングでそのマレーシア代表を指揮するピーター・クラモフスキー監督の去就がSNSを中心に話題となっています。

このブログでも取り上げてきた通り、7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)の国籍偽装疑惑で揺れるマレーシアサッカー協会(FAM)に対して、クラモフスキー監督が辞任を検討しているのではとの憶測がSNS上で飛び交っています。その中には明日のネパール戦がクラモフスキー監督にとってマレーシアでの最後の試合になるかもしれない、と言った投稿なども流れてきます。

しかしこれを報じた英字紙ニューストレイツタイムズは、代表チーム関係者の話として、「クラモフスキー監督辞任の噂について『全く根拠がなく』『単なる雑音に過ぎない』と主張している」と伝えています。

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ネパールは11月13日に行われたバングラデシュとの国際親善試合に2−2で引き分けるなど調子は良いようですが、ヘリテイジ帰化選手7名を欠くマレーシアであっても順当に行けば勝利は間違いないでしょう。

今年1月に就任したクラモフスキー監督はこれまでの7試合を6勝1分としており、ネパール戦に勝利すれば、2025年を無敗で終えることになります。しかしその一方で2027アジア杯最終戦となる来年3月のベトナム戦は7名のヘリテイジ帰化選手不在、しかも今年6月の対戦ではケガでベンチ外だったブラジル出身の帰化選手で元J仙台のラファエルソンがベトナムのラインアップに復帰すれば、大敗する可能性があるだけでなく、最終戦に敗れることでアジア杯出場を逃しかねません。

また7選手の国籍偽装疑惑への処分について控訴予定のスポーツ仲裁裁判所(CAS)がFIFAの裁定を支持すれば、AFCはそれを理由にヘリテイジ帰化選手たちが出場したアジア杯予選3月のネパール戦と6月のベトナム戦はいずれも無効試合となり勝点6を失い、ベトナムと対戦する前に予選敗退が決定する可能性もあります。

そう考えるとクラモフスキー監督が明日のネパール戦後に代表監督して無敗のまま辞任すれば、自身のキャリアに傷がつくことも無いどころか、むしろ辞任には絶好のタイミングのようにすら思えてきます。またクラモフスキー監督は7選手へのFIFAによる裁定についてマレーシアサッカー協会(FAM)を激しく批判した一方で、マレーシア代表を「善意のサポーター」として支援するジョホール州皇太子(現在は摂政)のトゥンク・イスマイル殿下は「何も悪くない」と支持するなど、FAMとは一線を画しているようです。

もし大量のヘリテイジ帰化選手加入と自身のマレーシア代表監督就任がセットだったと仮定すると、帰化選手の代表チーム復帰の可能性が消滅した場合、クラモフスキー代表監督にとっては、当初の契約条件(明文化されているかどうかは別として)が反故になるわけです。言い換えれば、沈みつつある泥舟から逃げ出す絶好のタイミングであるとも言えますが、果たしてどうなるでしょうか。

11月15日のニュース<br>・ファイナンシャルフェアプレー違反の2クラブに罰金と選手移籍禁止処分<br>・代表合宿で甲状腺疾患が判明のジョーダン・ミンターに代わりルクマン・ハキムが合流<br>・アセアン選手権「ヒュンダイカップ」の日程発表-30周年となる大会は来年7月からおよそ1ヶ月の長丁場に

ファイナンシャルフェアプレー違反の2クラブに罰金と選手移籍禁止処分

マレーシア1部スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)はケランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFCとPDRM FCに対し、ファイナンシャルフェアプレー(FFP)規則違反により罰金とトランスファーウィンドウでの選手移籍禁止を科したことを公式サイトで発表しています。

シェイク・モハメド・ナシル第一審機関(FIB)委員長名で発表された声明によると、両クラブは財務報告書の提出義務についてMFLの指示に従わなかったことが理由と説明されています。

今季からMFLが本格的に導入したファイナンシャルフェアプレー(FFP)に基づき、スーパーリーグの全クラブに対し、2025年9月までの期間の滞納金の有無と、2025年8月および9月の財務報告書を、10月16日を提出期限として提出するよう求められていました。

MFLのFFP部門が各クラブの財務報告書を精査した結果、ケランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFCとPDRM FCは昨シーズンから給料未払い問題を抱えていることが判明。MFLのFFP部門はマレーシアプロサッカー選手協会(PFAM)の協力も得て、この問題があることが確認されたということです。

MFLのFFP部門は両クラブに対して、未払い給料の支払い済みを証明する書類、もしくは未払い給料の支払い計画を求める警告書を2通発行したが、何の解決策も得られなかったと述べた。

FFP部門の報告を受けたFIBは、規則違反を理由に両クラブに1度目の警告と共に1万リンギ(およそ36万円)の罰金を科し、未払い給料を14日以内に支払うよう命じたということですが、その後、両クラブから支払い領収書や支払い計画を受け取っていないため、FIBはさらに2度目の警告と2万リンギットの罰金を科したということです。しかし、それでも両クラブからは何の回答も得られなかったため、FIBは両クラブに対して3度目となる4万リンギットの罰金と、今季2025/26年シーズンの2度目のトランスファーウィンドウにおける選手の移籍禁止の処分が科されたということです。

なおマレーシアリーグの今季2度目のトランスファーウィンドウは、2016年1月6日から2月1日までとなっています。

クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFCとPDRM FCには、給料未払い問題を解決するために2025年12月31日までの猶予が与えられたということですが、シェイク・モハメド・ナシルFIB委員長は、両クラブが指定された期日までに遵守しない場合にはより厳しい措置が取られることを明言しています。

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今季開幕直後から未払い給料の噂が出ていたPDRMについてはやっぱりそうだったか…という感じです。一方、昨季の最下位から現在は7位、そして昨季のシーズン2勝を上回る3勝目を8試合終了時点で既に記録するなど、大躍進しているクランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFCについては、昨季の汚名をそそぐためとはいえ、身の丈以上の無謀な補強だったのかもしれません。


代表合宿で甲状腺疾患が判明のジョーダン・ミンターに代わりルクマン・ハキムが合流

ガーナ出身のジョーダン・ミンターは、2020年シーズンにトレンガヌFCに加入すると、そこからクアラルンプール・シティFCなどを経て、昨季からはクチン・シティFCでプレーしています。

今年8月29日にマレーシア国籍を取得したミンター選手は、先月10月に初めてマレーシア代表合宿に召集されましたが、マレーシア代表選手として試合に出場するための資格を証明する書類が準備できてないとして、出場はありませんでした。今月11月の代表合宿にも再び召集されたミンター選手ですが、その後、体調不良を理由に代表候補から外れ、代わりにルクマン・ハキムが召集されました。

そのミンター選手について、スポーツ専門メディアのスタジアム・アストロは、合宿での健康診断で甲状腺疾患及び心臓疾患があることが判明した結果の合宿辞退だったことを報じています。

代表チームのハイパフォーマンス・ディレクターを務めるクレイグ・ダンカン博士は、ミンター選手が当初は単なる風邪と診断されていたその数日前にウイルスが検出されたと説明しています。

「検査結果が出て、パフォーマンスを確認し、そこで何かしらの疑いがあれば調査を行う必要があるのは当然だ」と話したダンカン博士は、ミンター選手にさらに検査を行った結果、甲状腺と心臓に関わる慢性的な健康問題を抱えていることが判明したということですしかし、健康上の問題は個人情報でありそれ以上の情報開示はできないと説明したダンカン博士は、病気の詳細などは明らかにしていないということです。


ミンター選手に代わって代表合宿に加わったのは、3年ぶりの代表復帰となるルクマン・ハキム(ヌグリ・スンビランFC)です。これまで代表戦9試合に出場している23歳のルクマン選手は、2022年3月26日の国際親善試合シンガポール戦以来の代表復帰となります。

2018年9月にマレーシアで行われたU16アジア選手権(現U17アジア杯)では、開催国枠で出場したマレーシアはグループステージで敗退したものの、ルクマン選手はこの大会で優勝した日本の唐山翔自(現東京ヴェルディ)、その日本に準決勝で敗れたオーストラリアのノア・ボティッチ(オーストリア1部アウストリア・ウィーン)らと共に通算5ゴールで得点王を分け合いました。

マレーシアのサッカー界を背負って立つ存在と期待されたルクマン選手はその後、スランゴールFCを経て、マレーシア人ビジネスマンのヴィンセント・タン氏がオーナーのベルギー1部コルトレイクと2020年8月から5年契約を結びました。しかしそこでは出場機会を得ることができず、出場機会を求めてUMFニャルドヴィク(アイスランド2部)、横浜Y.S.C.C(ルクマン選手在籍時はJ3)などを転々とし、コルトレイクとの契約が切れた今年からはヌグリ・スンビランFCに加入しています。

今季のシーズン当初はケガなどで出場がなかったものの、回復後は徐々に出場時間を増やし、11月10日に行われたヌグリ・スンビランFC対東ティモール代表との練習試合では、2ゴールを挙げるなど調子を上げてきています。


アセアン選手権「ヒュンダイカップ」の日程発表-30周年となる大会は来年7月からおよそ1ヶ月の長丁場に

1996年開催の第1回大会から30周年記念となる第16回アセアン選手権は、2026年7月24日からグループステージが始まることが発表されています。東南アジアサッカー連盟(AFF)に加盟する11カ国が出場して隔年開催されるこの大会は、今回からヒュンダイモーターズが冠スポンサーとなり、大会名が「ヒュンダイカップ」となります。

タイガービールが冠スポンサーとなり「タイガーカップ」として始まった東南アジア選手権(当時)の第1回大会はシンガポールでの集中開催で、決勝ではタイがマレーシアを1−0で破り優勝しています。

2004年までスポンサーを務めたタイガービールに代わり、2008年からはスズキ自動車がスポンサーとなったことで「スズキカップ」となったこの大会は、2018年からはそれまでの集中開催からホームアンドアウェイ方式となっています。また大会名はスポンサーの変更にあわせて2022年からは「三菱電機カップ」、2026年の大会からは「ヒュンダイカップ」と変わっています。また大会の正式名称も2024年からは東南アジア選手権からアセアン選手権へと変更されています。

前回2024年大会では、ベトナムがタイをホームで2−1、アウェイでは3−2といずれも破って3大会振りに優勝しています。また総合優勝回数ではタイが7回、シンガポール4回、ベトナム3回となっており、マレーシアは2010年大会優勝の1回のみです。

2026年開催の第16回大会はグループステージの組み合わせ抽選は来年、行われます。6月2日と9日にはプレイオフが行われ、この勝者を含めた全10チームが、それぞれ5チームに分かれて、7月24日から8月8日にかけて1回戦総当たり方式のグループステージで争います。

そして各組上位2チームが、8月15日からホームアンドアウェイ方式で行われる準決勝を経て、やはりホームアンドアウェイ方式による決勝に進出し、8月26日の決勝2ndレグで大会王者が決定します。

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東南アジアサッカー連盟(AFF)のチエフ・サメス会長は公式発表の生命の中で、30周年を迎えるこの大会の歴史の長さを強調していますが、その裏には今年10月にマレーシアで行われた東南アジア首脳会議アセアンサミットの際にこの地を訪れたFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長の口から飛び出した新大会「FIFAアセアンカップ」への対抗意識がありそうです。このFIFAアセアンカップの詳細は何も明らかになっていませんが、FIFA国際マッチカレンダー(FIFAデイズ)内で行われることが発表されています。

アセアン選手権は例年、FIFAデイズ外で開催されることから、マレーシア国内リーグ11連覇中のジョホール・ダルル・タジムが選手の招集を完全に拒否する状況が続いています。代表チームの主力の多くが所属するジョホールの選手招集拒否により近年の大会には「本当の」マレーシア代表が出場できていないのが現状です。そんな状況下でFIFAアセアンカップがFIFAデイズ内で開催されるのであれば、これが真の東南アジア王者決定戦となる可能性もあります。

FIFAは2021年からAFC傘下の中東の13カ国とアフリカサッカー連盟(CAF)所属の10カ国が参加する「FIFAアラブカップ」を主催しており、こちらは4年に1度の開催となっています。このため、FIFAアセアンカップもアセアン選手権と共存する形で4年に1度の開催となる可能性もあります。

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ちなみに今季2025/26シーズンのマレーシア1部スーパーリーグは8月8日に開幕しました。来季はヒュンダイカップが7月24日に開幕することで、マレーシアスーパーリーグを主催するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は、日程変更を余儀なくされそうです。またFIFAデイズ外の大会ということで、開幕前の大事なプレシーズンに選手が代表召集されることを拒否するクラブも出そうで、過去大会と同じならジョホール・ダルル・タジムの選手は召集拒否が濃厚です。2025年は無敗で終えることになりそうなピーター・クラモフスキー代表監督にとっても、このヒュンダイカップは選手選考が難しい頭の痛い大会となりそうです。

11月14日のニュース<br>・マレーシア代表選手の国籍偽装問題:ロドリゴ・オルガドは所属クラブが契約解除<br>・イマノル・マチュカの所属クラブはスポーツ仲裁裁判所の判断が出るまで給料支払いを表明<br>・アジア杯予選:対戦相手のネパールもピッチ外の問題で混乱中

マレーシア代表選手の国籍偽装問題:ロドリゴ・オルガドは所属クラブが契約解除

英字紙ニューストレイツタイムズは、国籍偽装が疑われるマレーシア代表のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名の内の1人、アルゼンチン出身のロドリゴ・オルガドが所属クラブとの契約が解除されたことを報じています。

コロンビア1部のアメリカ・デ・カリは、所属するオルガド選手がFIFAから12ヶ月間のあらゆるサッカー関連の活動禁止処分が科されたことを受け、契約を解除したということです。

マレーシアサッカー協会(FAM)は、国籍偽装疑惑に関してFIFAの規律委員会が9月26日に発表した裁定を覆そうと控訴していましたが、11月3日に同じFIFAの控訴委員会がFAMおよび7選手への処分内容を支持し、控訴は却下されていました。

FIFAはFAMに対し35万スイスフラン(およそ6830万円)の罰金、またオルガド選手の他、ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘヴェルの6選手に対しても、書類偽造に関するFIFA規律規程22条違反で、それぞれ12カ月の出場停止と2,000スイスフラン(およそ39万円)の罰金という裁定を下していました。

アメリカ・デ・カリはFIFA控訴委員会による控訴却下を受けて、29歳のオルガド選手との契約を11月11日に正式に解除したと、コロンビアのメディア「ElDeportivo.com.co」が伝えているということです。今年1月にアルゼンチン1部のヒムナシアから加入したオルガド選手は1年足らずでチームを去ることになりました。

なお、ElDeportivo.com.coによれば、アメリカ・デ・カリの法務チームと選手側代理人の双方が契約解除に合意に達しており、オルガド選手は契約条件に基づき、給与を全額受け取り続けるということです。

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このブログでも既報の通り、スペイン出身のガブリエル・パルメロは、期限付き移籍中であったスペイン3部のウニオニスタス・デ・サラマンカ、そしてパルメロ選手の所属元であるクルブ・デポルティーボ・テネリフェが、それぞれ期限付き移籍および契約終了を発表しており、所属クラブがなくなったのはオルガド選手で2人目となりました。

今回の国籍偽装疑惑問題でFIFAを批判している、ジョホール州摂政(皇太子)のトゥンク・イスマイル殿下がオーナーのジョホール・ダルル・タジムFCに所属するジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘヴェルの3選手は契約解除の心配はなさそうです。そうなると残るファクンド・ガルセス、イマノル・マチュカ両選手の動向が気になりますが、次の記事はそのマチュカ選手に関連するニュースです。


マレーシア代表選手の国籍偽装問題:イマノル・マチュカの所属クラブはスポーツ仲裁裁判所の判断が出るまで給料支払いを表明

ガブリエル・パルメロ、ロドリゴ・オルガド両選手が所属クラブとの契約解除となった一方で、アルゼンチン出身のヘリテイジ帰化選手、イマノル・マチュカは所属するアルゼンチンのクラブから給与を受け取り続けることになるようです。

マチュカ選手が所属するアルゼンチン1部のベレス・サルスフィエルドは、FIFAによる処分に対してマレーシアサッカー協会(FAM)が予定しているスポーツ仲裁裁判所(CAS)への控訴の最終判断を待つ間、25歳のマチュカ選手の給与を全額支払い続けると発表しています。

アルゼンチンのメディア「Sabado Velez」によれば、ベレスはすべての控訴手続きが終わるまで、マチュカの将来に関して最終的な決定を下さないと発表したということです。ブラジル1部のフォルタレザから期限付き移籍中のマチュカ選手は、ベレス・サルスフィエルドとの契約が12月31日までとなっています。


アジア杯予選:対戦相手のネパールもピッチ外の問題で混乱中

国籍偽装疑惑問題に揺れるマレーシアは11月18日に2027アジア杯予選F組の第5節でネパールと対戦しますが、そのネパールも深刻なピッチ外の問題を抱えていると英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

来週火曜日の試合は、本来はネパールのホームゲームとしてカトマンズにあるスタジアムでの開催が予定されていましたが、そのスタジアムが試合開催要件を満たしていないと判断したアジアサッカー連盟(AFC)は、試合会場をクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場に変更しています。ネパールは今年3月に予定していたホームゲームを、マレーシアのホームゲームとして開催するよう依頼をした過去もあります。なおスルタン・イブラヒム・スタジアムで行われた3月の試合ではネパールに0−2でマレーシアに敗れています。

さらにネパール国内では、同国サッカー協会に当たる全ネパールサッカー協会(ANFA)が主催する1部リーグのAディビジョンリーグの開催が3シーズン連続で中止となるなど、ネパールのサッカー界はマレーシアに負けず劣らず混乱に揺れているようです。

今週月曜日、カトマンズの全ネパールサッカー協会(ANFA)本部で代表チーム壮行会が行われた際には、「ANFAは常に選手やサッカー関係者のために最善を尽くしている」と、ANFAのパンカジ・ビクラム・ネンバン会長は地元メディアに語ったようですが、最近リーグ再開を求めて街頭抗議を行ったネパール選手会との確執についての言及はなかったということです。

11月10日のニュース<br>・ACL2敗退のスランゴールはCEOが逃げキャプテンがサポーターに応対<br>・今月のアジア杯予選に向けた代表27名が発表-キャプテンのマシュー・ディヴィーズが復帰<br>・国籍偽装疑惑のガブリエル・パルメロは所属クラブが契約を解除

ACL2敗退のスランゴールはCEOが逃げ、試合後はベンチ外だったキャプテンが怒れるサポーターに応対

11月6日にスランゴール州のMBPJスタジアムで行われたACL2グループステージG組第4節では、ホームのスランゴールFCが前半で挙げた2点のリードを守りきれず、後半に3得点を挙げたプルシブ・バンドンが逆転で勝利しています。

これによりスランゴールは2シーズン連続となるACL2グループステージ敗退が決まりました。この試合後には怒れるスランゴールサポーター数百人がスタジアム外に集まり、クラブ経営陣との対話を求めましたが、ジョハン・ハミドンCEOらは早々とスタジアムを去っており、サポーターを落ち着かせたはこの試合では膝のケガによりベンチ外だったキャプテンのファイサル・ハリムだったと報じられています。(ちなみにこの日は現地観戦しましたが、不穏な空気を感じたので、試合後には私はすぐにスタジアムを後にしました。)

サポーターらはファイサル選手に対して、経営陣に対して今シーズン当初から続く不安定なチーム状況の改善を直ちに行うことを求める、というメッセージを託したということですが、SNS上には、暴走した一部サポーターがハミドンCEOを探してスタジアムのVIPエリアに侵入しようとして保安係に止められる映像なども上がっています。

スランゴールは今季開幕からのリーグ戦5試合を2勝3敗でスタートすると、昨年11月に就任した喜熨斗勝史監督を解任しています。なお喜熨斗氏は2020年以降にスランゴールが解任した7人目の監督です。その一方で2016年に就任したジョハン・ハミドンCEOの元では国内タイトルは1つも獲得できておらず、度々サポーターからの批判を受けてきました。過去2シーズン2位のチームは現在、4勝1分3敗で6位、しかも首位のジョホール・ダルル・タジムからは勝点差14と大きく離され、さらにACL2では4戦全敗で敗退となっています。


今月のアジア杯予選に向けた代表27名が発表-キャプテンのマシュー・ディヴィーズが復帰

11月18日にクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で行われる2027アジア杯予選のネパール戦に臨むマレーシア代表27名が発表されています。10月に行われた同じアジア杯予選ラオス戦で招集された29名からDFシャールル・サアド(ジョホール)、リチャード・チン(スコットランド2部レイス・ローヴァーズ)、MFアフィク・ファザイル(ジョホール)、FWロメル・モラレス(ジョホール)が外れる一方で、ケガから復帰したキャプテンでDFマシュー・デイヴィーズ(ジョホール)が復帰、さらにMFライアン・ランバート(クアラルンプール)が代表に初めて招集されています。なおマレーシア代表にはライアン選手の双子の兄弟、デクラン・ランバートも招集されていますが、代表チームで双子の兄弟が同時にプレーするのは2019年のアイディル・ザフアンとザクアン・アドハ兄弟以来2組目ということです。

直近のFIFAランキングでは2005年11月以来となる118位のマレーシアは、同180位のネパールとクアラルンプールで対戦しますが、この試合はネパールのホームゲームとして行われます。これは、試合会場となるはずだったネパール国内のスタジアムがアジアサッカー連盟(AFC)から承認を受けなかったため、自国での試合開催できなくなったことに伴う措置です。

なおネパールは2027アジア杯予選の初戦となった3月25日の試合もネパールで行う予定でしたが、このときはカトマンズのダシャラート・スタジアムが改修工事中だったため、ネパールサッカー協会(ANFA)がこの試合をマレーシアのホームゲームとするよう要請し、スルタン・イブラヒム・スタジアムに変更されていました。

ネパールへの移動が不要になったマレーシア代表は、マレーシア国内で本日11月10日から試合前日の17日まで代表合宿を行います。

2027アジア杯予選に向けた11月合宿に参加するマレーシア代表(全27名)

P氏名年齢所属
GKシーハン・ハズミ29ジョホール
シーク・イズハン23スランゴール
ハジク・ナズリ27クチン
DFラヴェル・コービン=オング34ジョホール
マシュー・デイヴィーズ30ジョホール
ジュニオール・エルドストル34ジョホール
ハリス・ハイカル23スランゴール
クエンティン・チェン26スランゴール
デクラン・ランバート27クアラルンプール
ダニエル・ティン33サバ
ドミニク・タン28サバ
アザム・アズミ24トレンガヌ
ウバイドラー・シャムスル22トレンガヌ
ディオン・クールズ29セレッソ大阪
MFナズミ・ファイズ31ジョホール
ノーア・ライネ23スランゴール
ライアン・ランバート27クアラルンプール
スチュアート・ウィルキン27サバ
エンドリック・ドス・サントス30ホーチミン市公安
エゼキエル・アグエロ31カーンチャナブリパワー
FWアリフ・アイマン23ジョホール
ファイサル・ハリム27スランゴール
アリフ・イズワン21スランゴール
サファウィ・ラシド28クアラルンプール
パウロ・ジョズエ36クアラルンプール
ラマダン・サイフラー25クチン
ジョーダン・ミンター30クチン

国籍偽装疑惑のガブリエル・パルメロは所属クラブが契約を解除

国籍偽装が疑われるマレーシア代表のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名に対してFIFAが罰金と12ヶ月の出場停止の裁定に対す控訴を却下した余波が現れ始めているようです。

英字紙ニューストレイツタイムズは、出場停止処分を受けたヘリテイジ帰化選手の1人でスペイン出身のDFガブリエル・パルメロが所属クラブから契約解除を発表されたと報じています。

11月3日にFIFAがパルメロ選手を含む7選手の控訴を却下したことを受け、期限付き移籍中であったスペイン3部のウニオニスタス・デ・サラマンカと、パルメロ選手の所属元であるクルブ・デポルティーボ・テネリフェが、パルメロ選手の期限付き移籍および契約を終了したと発表したということです。

ウニオニスタスによる11月7日の公式声明は以下の通りです。。
「ウニオニスタス・デ・サラマンカは、FIFAから9月25日に通知を受け、11月3日に選手の控訴が棄却されたことを受け、クルブ・デポルティーボ・テネリフェとガブリエル・パルメロのレンタル契約を解除することで合意した。この合意には、クラブ側に金銭的な負担は一切発生していません。ウニオニスタス・デ・サラマンカは、サラマンカ在籍中に示した選手の献身に感謝の意を表します。」

一方、テネリフェも声明を発表し、パルメロ選手とのとの契約が11月7日付で終了したこと発表しています。「ガブリエル・パルメロのウニオニスタス・デ・サラマンカへの期限付き移籍契約およびクルブ・デポルティーボ・テネリフェとの契約は、11月7日をもって終了した」

パルメロ選手は、マレーシア代表としてプレーするために書類を偽造したとしてFIFAから出場停止処分を受けたヘリテイジ帰化選手7名の1人です。この他に処分を受けているのは、ロドリゴ・オルガド、ファクンド・ガルセス、ジョン・イラサバル、ジョアン・フィゲイレド、ヘクトル・ヘーベル、イマノル・マチュカの6選手で、FIFAの控訴委員会は11月3日にパルメロ選手を含む7選手全員の控訴を棄却し、12か月間の出場停止と各選手に2,000スイスフラン(およそ38万円)の罰金という処分を確定させています。

なおパルメロ選手の他には、コロンビア1部のアメリカ・デ・カリが、同じく処分を受けたアルゼンチン出身のロドリゴ・オルガドとの契約を解除する手続きに入っていることをニューストレイツタイムズが報じています。

2025/26ACL試合結果とハイライト映像<br>・ACLエリートリーグステージ第4節:ジョホールは中国クラブに連勝で2位浮上<br>・ACL2グループステージ第4節:スランゴールは4連敗で早くも敗退決定

ACLエリートリーグステージ第4節:ジョホールは中国クラブに連勝で2位浮上

ヘリテイジ帰化選手不在もなんのその。

FWジョアン・フィゲイレド、MFエクトル・ヘヴェル、DFジョン・イラザバルの主力3選手が国籍偽装疑惑で出場停止処分を受けているジョホールは、第1節で域内ライバルのBGパトゥム・ユナイテッド(タイ)に敗れ、続く第2節ではACLエリート初出場のJリーグ町田と引き分けるなどノックアウトステージ進出を狙うチームにとってはやや不安なスタートでした。しかし続く第3節では成都蓉城(中国)をアウェイで撃破し、チームに勢いが出てきたこの第4節では同じ中国の上海申花と対戦しています。

前節の成都蓉城戦勝利後には、国内リーグで優勝争いをしている成都蓉城が控え中心で臨んだ試合だからジョホールが勝てた、などといった声も聞こえてきましたが、それはあちらの問題であって、何を言われようと勝ったことが事実。そしてこの第4節もやはり中国スーパーリーグ2位、首位の上海海港を勝点差2で追う上海申花との対戦でした。

この試合の両チームの先発XIは以下の通り。ジョホールの先発XIを見ると、マレーシアで生まれ育ったマレーシア人はアリフ・アイマンただ1人とこれまた振り切った布陣です。一方の上海申花は11月2日の国内リーグ深圳新鵬城戦と全く同じ11名が先発しています。

試合はホナタン・シウバが2ゴール、スペイン出身のフィリピン国籍を持つ(しかしなぜか代表に召集されない)オスカル・アリバスも2試合連続のゴールを決めて快勝しています。

前半を両チームとも無得点で折り返すと、後半の48分にジョホールが均衡を破ります。アリフ・アイマンがペナルティエリア内で2人のDFをかわしてゴール前に送ったボールが上海申花DFに当たって、ホナタン・シウバの足元へ。これをシウバが押し込んでジョホールが先制します。

その5分後には上海申花がアンドレ・ルイスのシュートで同点かと思われましたが、その直前のルイス・アスエとジョホールGKアンドニ・ズビアウレの接触がファウルとなり、得点には至りません。逆にジョホールはプレッシャーをかけ続け、63分には途中出場のアフィク・ファザイルからのパスを受けたオスカル・アリバスがゴールの左隅に滑り込むシュートを決めてリードを広げます。

上海申花はペナルティエリアでシュー・ハオヤンがジョホールのナチョ・インサに倒されて得たPKをサウロ・ミネイロが決めて1点を返しますが、88分にジョホールも再びアリフ・アイマンからのパスをホナタン・シウバがゴールして再び点差を広げると、そのまま逃げ切ってACLエリート2連勝を飾っています。

2025/26ACLエリート リーグステージ第4節
2025年11月5日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ
ジョホール・ダルル・タジム 3-1 上海申花
⚽️ジョホール:ホナタン・シウバ2(48分、88分)オスカル・アリバス(63分)
⚽️上海申花:サウロ・ミネイロ(71分PK)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。

ACL2 グループステージG組第4節:スランゴールは4連敗で早くも敗退決定

第1節のバンコク・ユナイテッド(タイ)、第2節のライオン・シティ・セイラーズ(シンガポール)にいずれも4失点、第3節のプルシブ・バンドン(インドネシア)にも敗れてここまでACL2では3連敗のスランゴール。ホーム開催となったこの第4節のプルシブ戦で敗れれば、2シーズン連続でグループステージ敗退が決まってしまいます。しかもプルシブは3試合で2勝1分の成績でグループステージG組のトップです。

試合前会見でペルシブ・バンドンのボヤン・ホダック監督は、MBPJスタジアムのピッチの状態は単に悪いだけではなく、AFCの基準を満たしていないと感じると述べて軽くジャブ。前クアラルンプール・シティの指揮官は、「MBPJスタジアムは外から見るととても美しいがピッチはとてもひどい」「スタジアムにとって一番大切なのはピッチだということをマレーシア人は理解していない」とコメントしています。ジョホールやクランタンなどでも優勝監督を経験し、マレーシアのサッカー界を熟知しているホダック監督は、自身がマレーシアを去ってから2年経っても改善されていない問題点を厳しく指摘していました。

この指摘をスランゴールの運営陣にどのように響いたのかは興味があるところです。ACL2に向けて、スタンドはペンキが塗り直され、マレーシアではお約束の不潔なトイレも完全に改修され、MBPJスタジアムの設備や外見は確かに見違えるほど改善されていますが、結局、「見栄えだけを整える」ことに忙しい今のスランゴールの運営陣の対応を見抜いているようにも思えるコメントです。

以下はこの試合の両チームの先発XIです。スランゴールの86番ママドゥ・ディアラはセネガル出身のCB。コソボ代表MFトニ・ドムジョニとともにこの試合の直前に加入が発表されています。国内リーグのトランスファーウィンドウ期間でないので、この2選手はACL2要員としての獲得ですが、付け焼き刃感が否めず、やはりここでも「見栄えだけを整える」発想に思えます。ちなみにドムジョニ選手は「食中毒」を理由にこの試合ではベンチ外でした…。またスランゴールのマレーシア代表FWファイサル・ハリムは膝痛のためベンチ外となることも発表されていました。またマレーシア代表ハリス・ハイカルと、リーグ戦では主力のリッチモンド・アンクラの両CBはなぜかベンチスタートです。

それでも試合は開始3分、クリゴール・モラレスがアルヴィン・フォルテスのクロスを押し込んで先制するスランゴールにとっては最高の展開で始まります。さらに17分にはクリゴールのクロスをザック・クラフと競ったプルシブDFのパトリシオ・マトリカルディのオウンゴールで追加点を挙げたスランゴールが前半2−0で折り返します。

この試合は後半から現地観戦となりましたが、後半開始からペースを挙げたプルシブに対し、スランゴールは2点のリードが逆にプレッシャーになったのか、不要なバックパスが多く、まるで残る45分を守り切るつもりなのかと思うようなプレーを頻発します。

そして後半開始直後の48分にゴール前の混戦からアンドリュー・ユングにゴールを決められると、スランゴールはますます自陣に押し込まれる場面が多くなりますが、それでもGKシーク・イズハンが好セーブを連発してそれに耐える展開が続きます。

個人的に悪手だと思ったのはクリゴールの交代でした。スランゴールのクリストファー・ギャメル監督代行は、いわゆるFresh pair of legsとして70分に元Jリーグ甲府のウィリアン・リラと交代させますが、守備でも献身的に動き回るクリゴールが抜け、前方で待つタイプのリラが入ったことで守備のバランスが崩れたように感じました。またギャメル監督となり、解任された喜熨斗勝史監督時代に採用していた5バックから4バックとなった結果、それまで積極的なオーバーラップでサイド攻撃を担っていたクエンティン・チェンが守備に気を取られて持ち味が消えてしまっているように感じます。しかも守備も上手いわけではないので、この試合でも見られたようにチェン選手のサイドから攻め込まれることも多くなっています。

その後の81分には不用意なバックパスからボールを奪われたスランゴールは、バンドンで行われた前節でも得点を挙げていたインドネシア代表FWアダム・アリスがスランゴールDFを振り切って同点ゴールを決めて2-2となってしまいます。

こうなると試合は完全にプルシブが主導権を握ります。防戦一方ながらもなんとか勝点1は取れるのかと思ったアディショナルタイムに決勝点が入ります。バックパスを受けたGKシーク・イズハンが前方へ蹴ろうとしたところにアダム・アリスが詰め、イズハンの蹴ったボールがアダムに当たり、なんとそのままゴールイン。膝から崩れ落ちたイズハンでしたが、それまでのスーパーセーブがなければスランゴールはもっと早い時間で勝負を決められていただけに責めることはできません。

前半2点をリードしながら、後半にまさかの3失点を喫したスランゴール。不安定で自信のないプレーが随所に見られたのはまさに今季のチームを象徴しているようでした。喜熨斗勝史監督を解任しても何も変わっていないスランゴールは、4試合を終えて勝点0となりACL2の敗退が決まりました。

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試合はプルシブサポーターに近い席で観戦しましたが、同点になったあたりから大盛り上がりのプルシブサポーターに対して、試合展開にも、そしておそらく今季のプレーぶりにも、そしてそれを引き起こしたクラブの運営陣にも不満が溜まったスランゴールサポーターが試合そっちのけで怒鳴り合いを始めるなど、久しぶりにスタンドが盛り上がる試合を見ることができました。

ピッチ乱入後にスタンドに戻ったサポーターを捕まえようとする警備陣と揉めるプルシブサポーター。

2025/26ACL2 グループステージ第4節
2025年11月6日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴール 2-3 プルシブ・バンドン
⚽️スランゴール:クリゴール・モラエス(3分)、パトリシオ・マトリカルディ(17分OG)
⚽️プルシブ:アンドリュー・ユング(48分)、アダム・アリス2(81分、90+7分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。

G組のもう1試合は、バンコク・ユナイテッドが、オマーン代表FWムセン・アル=ガッサニのゴールなどでライオン・シティ・セイラーズを2−1で破り2位を堅守しています。

2025/26 ACL2 グループステージG組順位表(第4節終了)

クラブ勝点
ペルシブ・バンドン431082610
バンコク・ユナイテッド43017529
ライオン・シティ・セーラーズ41126604
スランゴール4003613-70

11月6日のニュース<br>・国籍偽装疑惑-元FAM事務局長「謙虚にミスを認めるべき-CASへの控訴は危機を長引かせるリスクが高い」<br>・イスマイル殿下はCASへの控訴費用全額負担を申し出<br>・前FAM会長「公平を期すために訴訟手続きを最後まで進めさせるべき」<br> 国籍偽装疑惑選手の1人はクラブが解雇を検討か

マレーシア代表でプレーする7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・ホルガド、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、ヘクター・ヘベルとマレーシアサッカー協会(FAM)に対し、FIFAは国籍偽装があったとして7選手には罰金と12ヶ月間の出場停止処分を、またFAMには罰金処分の裁定を下しました。

しかしこれを不服とした7選手とFAMはこの裁定に対して控訴を行いましたが、FIFAの控訴委員会は11月3日にこれを却下し、当初の裁定を指示することを発表しています。しかしこれに納得しないFAMのユソフ・マハディ会長代行は、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴するための準備を整えていると報じられています。

しかし、CASへの提訴についてはマレーシア国内のサッカー関係者全員が支持しているわけではなく、様々な見方が報じられています。

元FAM事務局長「謙虚にミスを認めるべき-提訴は危機を長引かせるリスクが高い」

CASへの提訴に否定的な意見を持つ元FAM事務局長のアズディン・アフマド氏は、今回の件をスポーツ仲裁裁判所(CAS)に持ち込むことは、既存の危機を長引かせるだけでなく、最悪の場合にはFAMがFIFAから資格停止処分を受ける可能性につながると述べています。

マレーシア語紙ブリタハリアンのインタビューに答えたアズディン氏は「提訴を行えば、7選手だけでなくFAM自体に活動停止処分が科される可能性がある。そうなれば、現在行われているマレーシアリーグが直ちに停止されるだけでなく、国内のサッカー活動全てが麻痺してしまう。」

「最善の方法は、謙虚に間違いを認めることだ。『不正行為』という言葉を使う必要はないが、重要な点を見逃したという事実は受け入れる必要がある」

さらにアズディン氏は、今回の処分が下された際にFIFAが示した証拠や文書はどれも非常に明白で反論が難しいと説明しています。」

「もし控訴が続けば、さらなる疑問が生じ、(7選手の祖父母の出生届を再発行した)マレーシア政府の国民登録局、そして入国管理局などの政府機関が関与が疑られる可能性すらあると懸念している。」

FIFAが示した証拠は確固たるもので、もう疑問の余地がないと話したアズディン氏はFAMがCASに提訴すれば、より大きな影響が出る懸念すらあると述べています。


前代表チームマネージャー「CASへの控訴は時間と金の無駄で意味がない」

マレーシア代表のチームマネージャー(監督ではなくいわゆる事務方のマネージャー)カマルル・アリフィン・モハド・シャハル氏は、マレーシアサッカー協会(FAM)が、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に控訴を行うことは無駄だと断じています。

英字紙ニューストレイツタイムズとのインタビューでカマルル氏は、FIFAの決定は最終的なものであり、CASへの上訴を行っても判決が変わることはないだろうと述べています

「現実的に見て、この問題をCASに持ち込んでも何も変わらないだろう。FIFAは既に7名のヘリテージ帰化選手が書類の偽造に関与したと判断している。このためCASへの控訴は時間とお金の無駄であり、FAMはこの問題にこだわるのではなく、組織の立て直しに力を注ぐべきだ。」

さらにカマルル氏は、FAMが今最優先で取り組むべきは、協会としての信頼と誠実さを回復し、サポーターや国際的なパートナーからの信用を取り戻すことだと強調しています。

「FAMの信用は傷ついたが、今こそ運営陣は、どのように立て直すかを戦略的に考えるときである。過去を振り返るのではなく、内部の問題を修正することに集中しなければならない。今のFAMはまるで空気の抜けたボールのようなもので、これ以上蹴り続けるのではなく、回復するための支援と時間、そして余地を与えるべきだ。」

またカマルル氏は、FAMの運営陣に対し、今後同様の事件を防ぐために、全ての手続きや書類管理システムを見直すようことにも着手するべきだとも提言しています


元FAM理事「CASへの提訴でFAMが勝つには奇跡を祈るしかない」

また元FAM理事会のメンバーだったクリストファー・ラジ氏は、マレーシアサッカーのサポーターとして、CASへ控訴することは否定せず、またそこでFAMが勝つことを心から願っているものの、現実的には奇跡が起きるしかないと、ブリタハリアンとのインタビューで述べています。

ラジ氏によると、2023年と2024年にCASに持ち込まれたFIFAを相手取った控訴54件中、FIFAはその54件全てに勝訴しているということです。このため、FIFAの規律委員会で処分が決定され、その処分がFIFAの控訴委員会でも支持されている今回の件について、FAMがCASで勝訴することができれば奇跡的なことだと述べています。


スポーツ専門弁護士「CASでの勝訴はFAMが新たな証拠を提示できるかどうかにかかっている」

またスポーツ弁護士のニック・エルマン氏は、CASでのFAMの訴訟は具体的な新たな証拠を提示できるかどうかにかかっていると述べています。

「FAMは一貫して、書類が偽造されていることを知らなかったと主張しているが、選手が代表チームでプレーする資格があることを保証するのは協会の責任である。「FAMが『原本』の存在を否定するのであれば、FIFAが入手した書類が不正確であるか、あるいはそれが7選手の祖父母のものではないことを示す証拠を提出する必要がある。」

「CASにおけるFAMの勝訴の可能性は、FIFA控訴委員会が下した決定から事実上の誤りと法律上の誤りを見つけることが必要にある。」

さらにFAMはCASで新たな証拠を提示することはできた場合には、その証拠を提示する合理的な理由と、なぜ以前の段階で提示されなかったのかという理由も必要になるとニック・エルマン氏は述べています。

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ここでおさらいしておくと、FIFAの規律委員会における事実関係の主な争点は、7名のヘリテイジ帰化選手の祖父母の出生届の『原本』の存在の有無に関するものでした。これについてFAMは『原本』が存在していないとし、マレーシア政府の国民登録局も『原本』が入手できなかったとして、(7選手の出身地である)アルゼンチンやブラジル、スペインから得た書類に基づき、7選手の祖父母の出生届を『再発行』したと説明しています。

しかしFIFAはFAMが存在しないと主張した『原本』を入手した上で、7選手がマレーシア国籍を取得するための書類が1次資料(原本)によるものではないとして、FAMによる精査が不完全であると判断し、今回の裁定を下しています。

これに対してFAMは適切な手続きをすべて踏んでいたと主張しています。具体的にはた。1)選手の申請書は、必要な書類をすべて揃えてマレーシア政府に提出された。2)国民登録局は必要なすべての検証を実施した。3)選手の祖父母とマレーシアのつながりは、マレーシア憲法に基づき認証された。4)FAMは、申請は誠意を持って行い、提出した書類が偽造される可能性があることを知らなかった。

そしてFAMも7名の選手も、提出された書類が偽造されている可能性があることを全く認識していなかったと主張しています。またFIFAが偽造であると主張している文書は、FAMが作成したものではないとして、FAMと選手の行動は正当であり、いかなる意図や過失もないとも主張しています。

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ニック・エルマン氏は、CASへの控訴の目的は、裁定そのものに異議を唱えること、あるいは裁定内容の軽減を求めることのいずれかだが、CASの手続きは100万リンギを超えることもあるため、裁定内容軽減のみを訴えても時間と費用に見合わない可能性があるとと説明しています。


イスマイル殿下はCASへの控訴費用全額負担を申し出

FAMとは無関係を主張する一方で、代表チーム強化の中心的人物でもあるジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下は、マレーシアサッカー協会(FAM)が7名のヘリテイジ帰化選手に関するFIFAの裁定をスポーツ仲裁裁判所(CAS)に控訴する際の訴訟費用や弁護団の移動費用など全額を負担することを表明してい4ます。

国内リーグ11連覇中でマレーシア代表チームのおよそ3分の2が所属するジョホール・ダルル・タジム(JDT)のオーナーでもあるイスマイル殿下は、これがFIFAから出場停止処分を受けた選手たちのために正義を求める取り組みを全面的に支持するためであると述べています。またこれを伝えた英字紙ニューストレイツタイムズは、この支援がFAMの財政負担を軽減するとともに、訴訟に関わる弁護団への信頼も示しているとしています。

またかつてはFAM会長を務めたこともあるイスマイル殿下はFIFAに対する最近の自身による批判(詳しくは下)について、FIFAから何らかの報復を受ける可能性についても動じていないと述べています。

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このブログでも既に取り上げましたが、イスマイル殿下は、国籍偽装が疑われる7名のヘリテイジ帰化選手への処分に対するFIFAの控訴棄却決定を強く批判しています。

イスマイル殿下はFIFAが規定の適用を誤っていると主張しています。FIFAが今回の処分の根拠としている規程第22条では、「偽造文書を作成または使用した者に対して制裁を科す」となっており、当事者である選手には適用されないと主張し、規定の誤った適用によって選手が不当に処罰を受けていると主張しています。そしてこの誤用については、「『政治的な動機』に基づいているように思われる。」と主張しています。

その上で殿下は「非難する者もいれば、騒ぎ立てる者もいる。しかし私は、選手たちのために最後までどんな犠牲を払ってでも闘い続けることを決意し、その闘いは独立機関であるCASで行われることになる」とも述べています。た。

前FAM会長「公平を期すために訴訟手続きを最後まで進めさせるべき」

前FAM会長で前マレーシア国王でもあるパハン州のアル=スルタン・アブドラ殿下は、現在進行中の調査は適切な手続きをもって進められるべきであり、関係者たちが真実を明らかにするだろうと述べています。

「既に多くの人々が意見を述べているので、この件について私が何かコメントする必要はないだろう。と述べたアル=スルタン・アブドル陛下は、「公平を期すために、手続きを最後まで進めさせまべきだ。そうすれば関係する当事者たちから真実が示されるだろう。」

さらにアル=スルタン・アブドゥラ陛下は、今回のナショナルチームの出来事は、今後同じ過ちを繰り返さないための貴重な教訓とすべきだとも述べています。

「もちろん、この件は今後の全ての人々への警鐘とすべきである。我々はマレーシアのサッカーの発展のために状況を改善する努力を怠らず、また、国内のサッカー界が直面している不安や困難から立ち上がる必要がある」


国籍偽装疑惑選手の1人はクラブが解雇を検討か

マレーシアサッカー協会(FAM)のFIFAへの控訴が失敗に終わったことを受け、アルゼンチン出身のマレーシア代表FWロドリゴ・オルガドが所属クラブとの契約が解除される可能性があると英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

オルガド選手が所属するコロンビア1部のアメリカ・デ・カリは、オルガド選手との契約を解除する手続きを進めているとコロンビアのスポーツ記者パイプ・シエラ氏が自身のX(旧Twitter)に投稿しています。

「クラブ・アメリカは、FIFA控訴委員会からの最新の回答を受け、弁護士を通じてロドリゴ・オルガドの契約解除手続きを進めている。」

FIFAの控訴委員会は11月3日にFAMの控訴を棄却し、FIFA規律委員会による以前の裁定を支持することを発表しています。規律委員会は遡ること9月26日に、FAMには35万スイスフラン(約およそ6660万円)の罰金処分、また、7名のヘリテイジ帰化選手に対しては、マレーシア代表資格を得るための書類偽造に関与したとして、それぞれ12か月の出場停止処分と2,000スイスフラン(およそ38万円)の罰金処分を科していました。

30歳のオルガド選手は2024年からアメリカ・デ・カリに所属しており、これまで77試合に出場して18ゴール5アシストを記録しています。また今年6月4日にマレーシア国籍を取得すると、6月10日のアジアカップ3次予選ベトナム戦で代表デビューを果たし、さらにその試合でマレーシア代表としての初ゴールを決めて、11年ぶりとなるベトナム戦勝利に貢献していました。

11月4日のニュース<br>・国籍偽装疑惑問題-FIFAはマレーシアサッカー協会による控訴を棄却<br>・サッカー協会はFIFAの決定を受け入れた上でスポーツ仲裁裁判所へ控訴準備<br>・トゥンク・イスマイル殿下-FIFAの制裁は「政治的動機によるもの」

国籍偽装疑惑問題-FIFAはマレーシアサッカー協会による控訴を棄却

そうなるとは思っていたけれど、いざ正式に棄却されるとやはり辛い。しかもこの後にはAFCによる処分がまだ残っている…。

FIFAの控訴委員会は11月3日に声明を発表し、国籍偽装疑惑について、マレーシアサッカー協会(FAM)とマレーシア代表として試合に出場したヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名に科した制裁を支持することを発表しています。以下はFIFAによる声明全文です。

「FIFA控訴委員会は、マレーシアサッカー協会(FAM)と7名の選手–ガブリエル・フェリペ・アローチャ、ファクンド・トマス・ガルセス、ロドリゴ・フリアン・ホルガド、イマノル・ハビエル・マチュカ、ジョアン・ビトール・ブランダオ・フィゲイレド、ジョン・イラサバル・イラウルギ、エクトル・アレハンドロ・ヘベル・セラーノ–から提出された控訴に対して決定を下した。これは偽造と改ざんに関するFIFA規律規定(FIFA Disciplinary Code、FDC)第22条の違反に対してFIFA規律委員会が出した決定に対しての控訴であった。

提出された意見を分析し、審問を行った後、控訴委員会は控訴を棄却し、FAMと7名の選手に科せられた以下の制裁を全面的に承認することを決定した。

・FAM:35万スイスフラン(およそ6660万円)の罰金支払い。
・ガブリエル・フェリペ・アローチャ、ファクンド・トマス・ガルセス、ロドリゴ・フリアン・ホルガド、イマノル・ハビエル・マチュカ、ジョアン・ヴィトール・ブランダオン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル・イラウルギ、エクトル・アレハンドロ・ヘベル・セラーノはそれぞれ2,000スイスフラン(およそ38万円)の罰金支払い
・前述の選手は、追加制裁としてサッカー関連の全ての活動から12か月間の出場停止

FAMと選手は本日、決定の条件について告知された。これに対して10日以内に理由を付した決定内容についてを開示を求めることができ、この通知後、21日以内にスポーツ仲裁裁判所(CAS)に控訴することができる。」

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FAMと7名のヘリテージ帰化選手は今年9月、文書偽造に関するFIFA規律規定(FDC)第22条に違反したとして、FIFAの規律委員会から制裁を受けていました。

この制裁についてFIFAは、FAMが7選手の資格を確認するために偽造文書を提出し、6月10日に行われた2027年アジアカップ3次予選ベトナム戦への出場を許可したことを制裁理由に挙げていました。

FAMはその後、7選手の資格確認書類の提出手続きにおいて、事務職員による「軽微なミス」があったことを認める一方で、その後はこの制裁処分に関してFIFAに控訴を行なっていました。

しかしFIFAが控訴を却下したことで、FAMの「軽微なミス」という主張は全く的外れであったということのようです。


サッカー協会はFIFAの決定を受け入れた上でスポーツ仲裁裁判所へ控訴準備

またこれを受けたマレーシアサッカー協会(FAM)は同日、公式サイトでユソフ・マハディ会長代行名で以下のような声明を発表しています。

「FAMは、国際サッカー連盟(FIFA)からの上訴棄却の決定を受け取った。FAMは、スポーツ仲裁裁判所(CAS)への控訴という次のステップに進む前に、FIFAから決定の詳細と理由を書面で入手する予定である。FAMにとってこのような状況に直面するのは初めてであり、弁護士と経営陣は今回の決定に大変驚いている。しかしながら、FAMは今後も選手の権利と国際レベルにおけるマレーシアサッカーの利益のために、断固として闘っていく。」

この声明発表を報じた英字紙ニューストレイツタイムズは、「マレーシアサッカー協会(FAM)はFIFAとの闘争を自国のサッカーを守るための『大戦争』と呼ぶ」の見出しで、FAMがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に申立てを行うため、必要な全ての文書、証拠、主張を準備すると報じています。

FAMのユソフ・マハディ会長代行は、FAMは今回の処分について沈黙を守るつもりはなく、あらゆる手段を尽くし、正義を求めると述べて、マレーシアサッカーの将来に重大な影響を及ぼすと考えられるこの決定に対して、FAMは譲歩するつもりはないと強調しています。

ユソフ会長代行は、さらに法廷闘争は長期化し、費用もかかる可能性があると認めた上で、FAMは国際社会でマレーシアの評判を守るためにその重荷を負う覚悟があると主張、。また同時に、国内サッカーファンには、引き続きFAMへの祈りと支援を求めたいとしています。


トゥンク・イスマイル殿下-FIFAの制裁は「政治的動機によるもの」

現在のマレーシア代表は、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)の選手が全体の3分の2近くを占めますが、そのJDTのオーナーでもあり、マレーシア代表強化の中心的存在でもあるジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下は、今回のFIFAの決定を激しく非難する内容を自身のSNSに投稿しています。

マレーシアサッカー協会(FAM)とは距離を置きながらも、代表チームの「アドバイザー」でもあるイスマイル殿下は、FIFAの行動は自らの規定を誤って適用していると主張しています。

「FIFAは規定を誤用して選手を処罰し続けている。FIFA規約第22条では、制裁は偽造文書を作成または使用した者に対してのみ課せられると規定されているが、その規定は選手には適用されない」

「言い換えれば、この制裁は法律に基づかずに課されており、他の何物よりも政治的な動機によるものであるように思われる。」

と投稿したイスマイル殿下は、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴訟を持ち込む準備をする選手たちを今後も支援していくとも綴っています。

「非難する者もいれば、騒ぎ立てる者もいる。しかし私は、最後までいかなる犠牲を払ってでも選手たちのために立ち上がって闘うことを選んだ。闘いは今後、独立機関であるCASで行われることになる」と投稿を締め括っています。

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殿下の投稿の「制裁は偽造文書を作成または使用した者に対してのみ課せられると規定されているが、その規定は選手には適用されない」という部分は、偽造文書を作成、使用したFAMが処分を受けるのは当然だが、選手は処分を受けるべきでないと主張しているように読み取れます。ヘリテイジ帰化選手7名の知らないところでFAMが偽造文書を作成した、という事実が証明できない限りこの主張は筋が通らないと思いますが、果たしてこの主張に賛同する者はいるのでしょうか。